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*《サカる》

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 空港で衣服を購入し、簡単な夕飯を買ってシギュンは初めてヨルの家に向かう。ヨルの家に向かう際はタクシーを使って帰宅をしたのだが、日本語という言葉に不慣れなシギュンは困惑をしながら乗車をすることになった。日本人のヨルが会話をして目的地に向かうも、シギュンはふと思う。
(この人の妻になるのならば、ちゃんと日本語も学ばないと!)
 あとで動画サイトの日本語講座を視聴しようと心に誓い、ヨルが「お金を持って払ってくれないか?」と手のひらに二千円渡して、シギュンに預けたのであった。
 着いたヨルの家はクリーム色のアパートであった。
「ただいま~」
「……タダイマ? なんですか、それ?」
「あぁ、日本で言う帰ってきた時の挨拶だ。覚えておいて損はないぞ」
 ヨルが靴を揃えてドアを開け、久しぶりの我が家を見て伸びをする。シギュンも彼に倣ってそろりと入ってみると、……簡素な感じが伺えた。
 室内を入って探索すれば真っ白すぎる壁に1LDKの部屋で、リビングにソファベッドとテーブルが鎮座されている。だがキッチンには多くの物が揃えられており、調味料類や食器が置かれていた。……まさかのティーカップまでもあった。
 シギュンは室内とキッチンとの歴然の差に率直な意見を述べる。
「ヨルはお料理が好きなのですね~。でも、部屋は寂しいですね」
「寂しいって……、まぁ趣味が料理ぐらいだから、かな。コーヒーでも淹れてやるから、ゆっくりしてくれ」
「は~い」
 声に反応するようにソファベッドに寝転んで、うだうだする素直なシギュンにヨルはふと笑ってドリップコーヒーを淹れていく。
 だが、コーヒーを淹れ終えてテーブルに置いた際、シギュンが突拍子もないことを言いだした。
「コーヒーを飲んだら、シャワーを浴びたいです!」
「おぉ、別にいいけれど……。なんで急に――」
「ヨルと一緒に入りたいです!」
「いやなんでだよ!?」
 突っ込みを入れるヨルにシギュンはコーヒーを一口飲んでから楽しげな様子で雄弁に述べる。無駄にキラキラした屈託のない笑顔に、ヨルはさらに困惑をした。
「恋人という結婚をするのかしないのかさえわからない状況で付き合う前に、私たちは結婚の約束をしたのですよ? 私たちは結婚をする、いえ、結婚をしなければならないという状況下にあるのです。だから本物の夫婦になる前に、愛し合う気持ちや行動を見せないと、マンネリ化という恐ろしい事態になるのですよ? それは避けなければならないのです!」
「いや……結婚って。まだ俺とするってわけでは――」
「私はあなたと結婚をします。日本はできませんが、サンクチュアリならばできるはずですし……」
 ……いや、そのサンクチュアリを追い出されたんだが。とか思いつつもシギュンの熱意に圧倒されて、ヨルは息を吐いてはコーヒーを一口飲む。
 苦みのなかに深みが広がって美味しいが、今はシスターであるにも関わらず性欲に関しては並々ならぬものを持ち合わせている彼に、ヨルはどうして自分はこういう人を受け入れてしまったのだろうかと後悔しようとして……やめる。
 シギュンに出会わなかったら自分の世界は灰色に染まっていた。それだけ思うと怖くなるし、恐れを感じる。
 ――孤独で居るのが辛いと感じてしまうのは、シギュンのせいでもあっておかげでもあった。
「はぁ……、わかったよ。一緒に風呂に入るか」
「本当ですか!!?」
 目を輝かせて問いかけるシギュンに、ヨルは風呂の電源を押してから「待ってろ」なんて言って風呂を沸かしたのだ。

 狭い脱衣室に小柄な青年と大男が互いに脱がしあっていた。青年は羞恥を帯びたように顔を熟れた顔をさせて褐色肌の男の衣服をぎこちなく脱がしていき、洗濯機に洗濯物を入れていく。
 そして澄んだ青い瞳をした褐色肌の男は、手練れのように色白の青年の衣服をすんなりとした形で脱衣させていくのだ。
 青年の透き通るような色白の肌を滑らせれば、青年は「ひぃぅ……!」甲高い声を上げて真っ赤な顔をさらに赤くさせた。
 するとこの変態シスター、妄想を膨らませてついには告げてしまう。
「あぁ、可愛らしい。こんな可愛らしい人に私を貫かされてしまうのを想像するだけで、私は満たされるような思いをしてしまいます……」
「この、変態! 本当にお前、シスターかよ?」
「シスターですよ? 私の国では愛こそが正義。だから、ヨル。お願いです」
 シギュンは急にヨルを抱き寄せたかと思えば、浴室に連れて行き蛇口を捻った。
 冷たい水がヨルとシギュンに当たり、ヨルの能力のおかげで程よい熱を持つ。しかしそれでも、シギュンは憂いと熱を帯びた瞳で見つめたかと思えば……軽いキスをしたのだ。
 甘いリップ音を奏でたキスにたじろぐヨルにシギュンは再び抱き寄せて囁く。
「私を甘く堕としてください、ヨルの精一杯の力で良いですから……ね?」
「……余計なお世話だ」
 ヨルは応えるように拙くもキスをして応えるのであった。
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