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第七章
■五月山修羅は更に栄転す
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□修羅サイド□
第一騎士団長ジェンドが第十騎士団に来たのは、四日間の遠征を終えた日だった。
王都から西に行った先にある町の付近に出没する魔獣の駆除と、町の防衛態勢の見直しを終えて戻った第十騎士団長カロルは、嫌な予感をさせながら応接室へと向かかった先で、笑顔のジェンドの言葉を聞いて唸る。
「そんな事だろうとは思ったが、あいつは平民だぞ。第一に入る資格はないんじゃないのか」
「それは大丈夫だ。王太子殿下のご意向により、彼の叙爵が国王陛下に認められた。一代男爵だが、あれは受けるだろう、無論、第一への移動もな」
自信ありげに言うジェンドに、カロルは面白くなさそうに鼻を鳴らす。
「それはどうだろうな。アイツはウチで生き生きとしてるぞ。お前の所は息が詰まるんじゃねぇか?」
「まぁ、本人に聞いてみればいいさ」
妙に自信ありげなジェンドに急かされて、応接室を出て近くにいた従騎士に修羅を呼んでくるように伝えた。
程なく、やってきた修羅にジェンドが用件を伝えると、間髪入れずに了承した。
「ふふん、言った通りだろう」
「おい、シュラ、少しは考えろよ。第一騎士団なんてのは、こっちとは違った意味でくせ者揃いだぞ? 考え直したらどうだ」
「いえっ! 自分は第一騎士団にいきますっ!」
往生際悪く言い募るカロルに修羅はきっぱりと言い切り、いつから移動なのかジェンドを急かす。
「できれば、騎士ファーネの近くの部屋がいいです。なんなら、同じ部屋でも構いません」
「駄目に決まっているだろう。入団早々風紀を乱す気か、第一騎士団長権限でクビにするぞ?」
「申し訳ありませんでしたっ」
笑顔で青筋を立てるジェンドに、素早く頭を下げる。
そして、修羅の下心を知ったカロルは、呆れたように肩を落とした。
「なんだ、女が原因か。ファーネといえば、あのバルザクトだろう? 迷宮暴走で、多くの騎士や冒険者に心の傷を作っていった」
「なんすか、その心の傷って?」
首を傾げる修羅に、ファーネが治癒と魔力渡しを強引に行った結果、多くの男達が頽れる事態になったことを告げる。
「――ありましたね、そんなこと」
遠い目をして、ジェンドが苦笑いする。
辻斬りならぬ、辻魔力渡しの餌食になった騎士や冒険者で、浄化の魔法が不得手な者は悲惨だった。特に第十騎士団は、そういった繊細な魔法が不得意な者が多く、魔法の得意な人間が浄化の魔法を掛けまくったという経緯がある。
一際ガタイのいい男達だけに、そのショックは大きく。バルザクトの名を聞くだけで顔色を悪くする者がいたとかいないとか。
「あれは、緊急事態だったので仕方がないことです。――できることなら、関わったすべての人間の、記憶を刈り取りたいですが……」
昏い目をして呟く修羅に、ジェンドはそれはそうだろうなと聞かなかったことにする。
自分の大切な人が、自分以外と魔力渡しをしたなどと、嫌に決まっている。
「まぁそういうことだ。では、叙爵は受ける、第一騎士団に移籍するということで決まりだな」
「はいっ、よろしくお願いしますっ」
上機嫌の二人とは対照的に、カロルは苦々しい顔で片手で髪をかき混ぜる。
「まぁ、しゃぁねぇな」
「短い間でしたが、お世話になりました」
「おい、まだ所属はこっちだからな、挨拶は早いだろうが。あーあ、やってらんねぇぜ、ジェイド飲みに行くぞ! お前の奢りでな!」
ジェイドがカロルに引きずられ、朝まで飲むぞとの言葉にそこまでは付き合いきれないとの返事を返していたのを、修羅は聞き逃すことはなかった。
速やかに隠密効果のある服に着替えると、遠征の疲れなどないかのような早さで基地を飛び出し、ファーネの元へ向かった。
第一騎士団長ジェンドが第十騎士団に来たのは、四日間の遠征を終えた日だった。
王都から西に行った先にある町の付近に出没する魔獣の駆除と、町の防衛態勢の見直しを終えて戻った第十騎士団長カロルは、嫌な予感をさせながら応接室へと向かかった先で、笑顔のジェンドの言葉を聞いて唸る。
「そんな事だろうとは思ったが、あいつは平民だぞ。第一に入る資格はないんじゃないのか」
「それは大丈夫だ。王太子殿下のご意向により、彼の叙爵が国王陛下に認められた。一代男爵だが、あれは受けるだろう、無論、第一への移動もな」
自信ありげに言うジェンドに、カロルは面白くなさそうに鼻を鳴らす。
「それはどうだろうな。アイツはウチで生き生きとしてるぞ。お前の所は息が詰まるんじゃねぇか?」
「まぁ、本人に聞いてみればいいさ」
妙に自信ありげなジェンドに急かされて、応接室を出て近くにいた従騎士に修羅を呼んでくるように伝えた。
程なく、やってきた修羅にジェンドが用件を伝えると、間髪入れずに了承した。
「ふふん、言った通りだろう」
「おい、シュラ、少しは考えろよ。第一騎士団なんてのは、こっちとは違った意味でくせ者揃いだぞ? 考え直したらどうだ」
「いえっ! 自分は第一騎士団にいきますっ!」
往生際悪く言い募るカロルに修羅はきっぱりと言い切り、いつから移動なのかジェンドを急かす。
「できれば、騎士ファーネの近くの部屋がいいです。なんなら、同じ部屋でも構いません」
「駄目に決まっているだろう。入団早々風紀を乱す気か、第一騎士団長権限でクビにするぞ?」
「申し訳ありませんでしたっ」
笑顔で青筋を立てるジェンドに、素早く頭を下げる。
そして、修羅の下心を知ったカロルは、呆れたように肩を落とした。
「なんだ、女が原因か。ファーネといえば、あのバルザクトだろう? 迷宮暴走で、多くの騎士や冒険者に心の傷を作っていった」
「なんすか、その心の傷って?」
首を傾げる修羅に、ファーネが治癒と魔力渡しを強引に行った結果、多くの男達が頽れる事態になったことを告げる。
「――ありましたね、そんなこと」
遠い目をして、ジェンドが苦笑いする。
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一際ガタイのいい男達だけに、そのショックは大きく。バルザクトの名を聞くだけで顔色を悪くする者がいたとかいないとか。
「あれは、緊急事態だったので仕方がないことです。――できることなら、関わったすべての人間の、記憶を刈り取りたいですが……」
昏い目をして呟く修羅に、ジェンドはそれはそうだろうなと聞かなかったことにする。
自分の大切な人が、自分以外と魔力渡しをしたなどと、嫌に決まっている。
「まぁそういうことだ。では、叙爵は受ける、第一騎士団に移籍するということで決まりだな」
「はいっ、よろしくお願いしますっ」
上機嫌の二人とは対照的に、カロルは苦々しい顔で片手で髪をかき混ぜる。
「まぁ、しゃぁねぇな」
「短い間でしたが、お世話になりました」
「おい、まだ所属はこっちだからな、挨拶は早いだろうが。あーあ、やってらんねぇぜ、ジェイド飲みに行くぞ! お前の奢りでな!」
ジェイドがカロルに引きずられ、朝まで飲むぞとの言葉にそこまでは付き合いきれないとの返事を返していたのを、修羅は聞き逃すことはなかった。
速やかに隠密効果のある服に着替えると、遠征の疲れなどないかのような早さで基地を飛び出し、ファーネの元へ向かった。
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