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第七章
■五月山修羅の情報収集
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□修羅サイド□
「騎士シュベルツッ! 教えてくださいっ!」
王宮のバルザクトの元から戻った修羅は、一直線にシュベルツの元へ走った。
西部基地の訓練場で若い騎士達に訓練をつけていたシュベルツは、真新しい騎士服を着た修羅が、汚れるのも構わずに地べたに土下座するのを見てため息を吐いた。
「まずは立て、騎士の制服を汚すな」
「はいっ! すみませんっ!」
素早く立ち上がり、同時に浄化の魔法を使って直立する。その素直さと滑らかな魔法の行使には感心するものの、本当に騎士に昇格して大丈夫だったのかと思わずにはいられない。
「騎士ラーゼル、悪いがちょっと外す。どうせろくでもない相談だろう、余所に行くぞ」
修羅の後ろ襟を掴んで、同僚に断ってから訓練場を離れる。
時間的にひとけのないミーティングルームに入ると、置かれている長机に腰を預け腕を組んで修羅に話を促す。
「はい、あの……」
もじもじと指を胸の前で絡ませて頬を赤くさせる修羅に、シュベルツははぁーっと深くため息を吐いた。
「訓練を抜けてきているんだ、用がないなら戻るぞ」
「待ってくださいっ、避妊具を買える店を教えてくださいっ」
勢いよく頭を下げる修羅に、シュベルツはそんなことだろうと目を据わらせ、ひとつの店名を口にした。
「お前、相手は男じゃなかったのか」
「いやぁ、それが、実は女性だったみたいで」
照れるように頭を掻く修羅に、とうとう重いため息を吐いてしまう。
「やっぱりバルザクトか。まぁ、そうだろうとは思っていたがな」
よくぞあの堅物を落としたと感心しつつ、胸中に湧き上がるいらつきに気がついた。第五騎士団でバルザクトを嫌っていない多くの騎士は、同じような苛立ちを感じるだろう。
よくも悪くも堅物で、それは清廉さと言い換えてもいいものだろう。
不可侵の孤高さを保っていたのが、修羅が来たことによって、地に落とされた。いやそれほど大層なものではないかも知れない、ただ他の騎士の間にあった壁は確実に薄れ、シュベルツに至っては冒険者ギルドに所属する仲間として更に親しくなっていた。
だが、同じ部屋で寝起きし、多くの時間を共有していた修羅に敵うべくもなかったのだろう。
いや別にバルザクトが好きだったとかそういうことではないので、敵うもなにもないのだが……正直少々面白くないのも確かなことだった。
「さてと、それはそうとして、騎士に昇格おめでとう、騎士シュラ」
「ありがとうございます。え、ちょっ、あの?」
「折角だから、昇格祝いに、手合わせ願おうじゃないか。もう手加減しないぞー」
笑顔のシュベルツに引きずられて、訓練場に連れられていく修羅の脳裏にドナドナがかかっていたとかいなかったとか。
その日訓練に出ていた平民出の騎士と手合わせし、付与魔法込みでどうにか全勝を果たした修羅は、その後酒場に連れて行かれ、こちらの世界の夜の事情を入手することに成功した。
「騎士シュベルツッ! 教えてくださいっ!」
王宮のバルザクトの元から戻った修羅は、一直線にシュベルツの元へ走った。
西部基地の訓練場で若い騎士達に訓練をつけていたシュベルツは、真新しい騎士服を着た修羅が、汚れるのも構わずに地べたに土下座するのを見てため息を吐いた。
「まずは立て、騎士の制服を汚すな」
「はいっ! すみませんっ!」
素早く立ち上がり、同時に浄化の魔法を使って直立する。その素直さと滑らかな魔法の行使には感心するものの、本当に騎士に昇格して大丈夫だったのかと思わずにはいられない。
「騎士ラーゼル、悪いがちょっと外す。どうせろくでもない相談だろう、余所に行くぞ」
修羅の後ろ襟を掴んで、同僚に断ってから訓練場を離れる。
時間的にひとけのないミーティングルームに入ると、置かれている長机に腰を預け腕を組んで修羅に話を促す。
「はい、あの……」
もじもじと指を胸の前で絡ませて頬を赤くさせる修羅に、シュベルツははぁーっと深くため息を吐いた。
「訓練を抜けてきているんだ、用がないなら戻るぞ」
「待ってくださいっ、避妊具を買える店を教えてくださいっ」
勢いよく頭を下げる修羅に、シュベルツはそんなことだろうと目を据わらせ、ひとつの店名を口にした。
「お前、相手は男じゃなかったのか」
「いやぁ、それが、実は女性だったみたいで」
照れるように頭を掻く修羅に、とうとう重いため息を吐いてしまう。
「やっぱりバルザクトか。まぁ、そうだろうとは思っていたがな」
よくぞあの堅物を落としたと感心しつつ、胸中に湧き上がるいらつきに気がついた。第五騎士団でバルザクトを嫌っていない多くの騎士は、同じような苛立ちを感じるだろう。
よくも悪くも堅物で、それは清廉さと言い換えてもいいものだろう。
不可侵の孤高さを保っていたのが、修羅が来たことによって、地に落とされた。いやそれほど大層なものではないかも知れない、ただ他の騎士の間にあった壁は確実に薄れ、シュベルツに至っては冒険者ギルドに所属する仲間として更に親しくなっていた。
だが、同じ部屋で寝起きし、多くの時間を共有していた修羅に敵うべくもなかったのだろう。
いや別にバルザクトが好きだったとかそういうことではないので、敵うもなにもないのだが……正直少々面白くないのも確かなことだった。
「さてと、それはそうとして、騎士に昇格おめでとう、騎士シュラ」
「ありがとうございます。え、ちょっ、あの?」
「折角だから、昇格祝いに、手合わせ願おうじゃないか。もう手加減しないぞー」
笑顔のシュベルツに引きずられて、訓練場に連れられていく修羅の脳裏にドナドナがかかっていたとかいなかったとか。
その日訓練に出ていた平民出の騎士と手合わせし、付与魔法込みでどうにか全勝を果たした修羅は、その後酒場に連れて行かれ、こちらの世界の夜の事情を入手することに成功した。
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