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第六章
■五月山修羅は帰路につく
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□修羅サイド□
「バルザクト様がいない……」
呆然と呟いた修羅に、ジェンドが肩を叩く。
「既に帰路についたようですよ」
「ええっ、どうしてっ。一緒に帰りたかったのに」
驚く修羅にジェンドは呆れた視線を向ける。
「彼女は本来、王都で王妃殿下達の護衛でした。それが、こんなところまできたんですよ」
修羅の肩に極太の腕が掛かる。
「職務放棄っちゃぁ、重大な規律違反だわなぁ」
「ええええっ! バルザクト様がチート級の能力で魔力を吸収してくれたから、迷宮暴走をここで止められたんですよ! 立役者なのにっ!」
そんなことはわかってると、両方から小突かれる。
「処罰がないように掛け合いますとも」
「そもそも、あれは、女だろう? 騎士やっていいのか?」
カロルの疑問に、ジェンドが遠い目をする。
「それも、規則違反です」
「えええええっ、男じゃないと駄目とか、決まりあるんですかっ。書いてないなら、女の人でもっ」
「書いてありました第九条の三項に、とてもさりげなく。それがなければ、我々ももっと楽に無理を通せたのですが」
含みを持たせたジェンドに、カロルが太い眉を上げるが、バルザクトのことに気を取られている修羅はそれどころではなかった。
「そんなぁ……じゃぁ、バルザクト様は、罰を受けるんですか?」
がっくりと肩を落とした修羅は、カロルとジェンドが視線を交わしたことに気付かない。
「そうですね、罰は受けることになるでしょうね」
もっともらしく言うジェンドに、カロルは後ろから脇をつつくが訂正はしなかった。
「ともかく、我々も戻りましょう。体力も回復してますから、一昼夜寝ずに行軍することになっても大丈夫ですね」
周囲の騎士は落ちそうになる肩を堪えて、「勿論です!」と行儀よくジェンドに応えた。
「バルザクト様がいない……」
呆然と呟いた修羅に、ジェンドが肩を叩く。
「既に帰路についたようですよ」
「ええっ、どうしてっ。一緒に帰りたかったのに」
驚く修羅にジェンドは呆れた視線を向ける。
「彼女は本来、王都で王妃殿下達の護衛でした。それが、こんなところまできたんですよ」
修羅の肩に極太の腕が掛かる。
「職務放棄っちゃぁ、重大な規律違反だわなぁ」
「ええええっ! バルザクト様がチート級の能力で魔力を吸収してくれたから、迷宮暴走をここで止められたんですよ! 立役者なのにっ!」
そんなことはわかってると、両方から小突かれる。
「処罰がないように掛け合いますとも」
「そもそも、あれは、女だろう? 騎士やっていいのか?」
カロルの疑問に、ジェンドが遠い目をする。
「それも、規則違反です」
「えええええっ、男じゃないと駄目とか、決まりあるんですかっ。書いてないなら、女の人でもっ」
「書いてありました第九条の三項に、とてもさりげなく。それがなければ、我々ももっと楽に無理を通せたのですが」
含みを持たせたジェンドに、カロルが太い眉を上げるが、バルザクトのことに気を取られている修羅はそれどころではなかった。
「そんなぁ……じゃぁ、バルザクト様は、罰を受けるんですか?」
がっくりと肩を落とした修羅は、カロルとジェンドが視線を交わしたことに気付かない。
「そうですね、罰は受けることになるでしょうね」
もっともらしく言うジェンドに、カロルは後ろから脇をつつくが訂正はしなかった。
「ともかく、我々も戻りましょう。体力も回復してますから、一昼夜寝ずに行軍することになっても大丈夫ですね」
周囲の騎士は落ちそうになる肩を堪えて、「勿論です!」と行儀よくジェンドに応えた。
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