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第二章
□窃盗団2
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騎士服を着ていた男達は予想通り窃盗団の人間達で、尋問により奴らの規模と拠点等を知ることができた。
まず、ひとりずつ行われた尋問だったのだが、なかなか口を割らぬ奴らのお陰で、記録係の助っ人として私が呼び出された。私が顔を出すとあからさまに顔を引きつらせる大の男を見た瞬間、むくりと胸の内によこしまな気持ちが生まれる。
私のような小柄で非力に見える人間に対して、このように警戒をするのだ、いたずら心も沸こうというものだろう。併せて、尋問を担当していた騎士が、よく知った、気さくで柔軟な人物だったものだから、私は用意された席にはつかずに、その騎士の横に立った。
壮年の騎士はちらりと横目で私を見上げたが、口の端を上げて腕を組み無言で視線を男に戻した。
「私もお手伝いいたしましょう。手加減が苦手なもので、少々やり過ぎてしまうかも知れませんが、四人も居るならば数名減ったところで問題はありますまい。口の滑らかな者が生き延びるのは、世の常です」
男から視線を外さずにゆっくりと腰の剣を半ばまで引き抜けば、私の隣に居る騎士も同意するようにゆったりと首を上下させた。
「そうだな、残念ながら既にひとりは問うことができないが。あと二人くらい問題ないだろう、ひとり残っていれば十分だ」
真面目な顔で合わせてくれる騎士に、感謝を込めて黙礼する。
「そっ、それでも清廉潔白な騎士かよっ! そんな非道なこと……ひっ」
男の言葉に口の端を上げ、剣を鞘から半ばまで抜いて男の眼前に剣の腹を見せた。
「清廉なわけがないだろう? 私の剣は幾人もの人間の血を吸っているのだぞ? 見ろ、この曇りを……いくら拭っても取れぬのだよ」
確かにいまは曇っているが、それは先程の戦闘時に男の腕を切り落としたあと、手入れをする時間が取れていないからであり、いつも魔法に頼らずに自分でピカピカに手入れしているので鏡のようとはいわないが、きっちり綺麗にしている。
「わ、わ、わかった言う! 俺たちは隣の――――」
私の言葉を真に受けたのか、男の口が軽くなったのでよしとしよう。
もともと記録係として呼び出されていたので、尋問は担当の騎士に任せペンを紙に滑らせてゆく。
尋問ではなく、聴取といった様相ですんなりと仕事が終わり、尋問担当の騎士と共に部屋を出た。男は部屋の外に居た他の騎士二人によって、牢へと連行されていく。
「騎士バルザクト、貴殿のお陰で滞りなく尋問できた。感謝する」
「いえ、こちらこそ話を合わせていただき、ありがとうございました」
尋問を担当した騎士に礼を言われ、こちらも気持ちよく礼を返して調書を渡し、手の空いた私は一度部屋へと戻った。
奥にあるシュラの部屋をノックすれば、まだ青い顔をしている彼が出てきた。足取りはしっかりしているし、呼吸に乱れもないから大丈夫だろう。
「バルザクト様、申し訳ありませんでした……俺、俺……っ」
「問題無い。はじめての実戦なのだから、こんなものだ」
項垂れた頭を撫でようとした手を止め、彼の肩を軽く叩いて励ましてから部屋を辞した。正直、あの程度で吐くのは驚いたが、場数をこなせば慣れもするだろう。
私とて自領で最低限の剣技は身につけていたものの実践は騎士になってからで、ああそういえば私も最初は嘔吐いたな、それでも回数を重ねれば慣れてゆくものだ。慣れねばここに居られぬのであれば、慣れるしかないのだ。
ポケットから取り出した木の実を口に含み、口の中ですこし転がしたあと奥歯で一息にかみ砕いた。
まず、ひとりずつ行われた尋問だったのだが、なかなか口を割らぬ奴らのお陰で、記録係の助っ人として私が呼び出された。私が顔を出すとあからさまに顔を引きつらせる大の男を見た瞬間、むくりと胸の内によこしまな気持ちが生まれる。
私のような小柄で非力に見える人間に対して、このように警戒をするのだ、いたずら心も沸こうというものだろう。併せて、尋問を担当していた騎士が、よく知った、気さくで柔軟な人物だったものだから、私は用意された席にはつかずに、その騎士の横に立った。
壮年の騎士はちらりと横目で私を見上げたが、口の端を上げて腕を組み無言で視線を男に戻した。
「私もお手伝いいたしましょう。手加減が苦手なもので、少々やり過ぎてしまうかも知れませんが、四人も居るならば数名減ったところで問題はありますまい。口の滑らかな者が生き延びるのは、世の常です」
男から視線を外さずにゆっくりと腰の剣を半ばまで引き抜けば、私の隣に居る騎士も同意するようにゆったりと首を上下させた。
「そうだな、残念ながら既にひとりは問うことができないが。あと二人くらい問題ないだろう、ひとり残っていれば十分だ」
真面目な顔で合わせてくれる騎士に、感謝を込めて黙礼する。
「そっ、それでも清廉潔白な騎士かよっ! そんな非道なこと……ひっ」
男の言葉に口の端を上げ、剣を鞘から半ばまで抜いて男の眼前に剣の腹を見せた。
「清廉なわけがないだろう? 私の剣は幾人もの人間の血を吸っているのだぞ? 見ろ、この曇りを……いくら拭っても取れぬのだよ」
確かにいまは曇っているが、それは先程の戦闘時に男の腕を切り落としたあと、手入れをする時間が取れていないからであり、いつも魔法に頼らずに自分でピカピカに手入れしているので鏡のようとはいわないが、きっちり綺麗にしている。
「わ、わ、わかった言う! 俺たちは隣の――――」
私の言葉を真に受けたのか、男の口が軽くなったのでよしとしよう。
もともと記録係として呼び出されていたので、尋問は担当の騎士に任せペンを紙に滑らせてゆく。
尋問ではなく、聴取といった様相ですんなりと仕事が終わり、尋問担当の騎士と共に部屋を出た。男は部屋の外に居た他の騎士二人によって、牢へと連行されていく。
「騎士バルザクト、貴殿のお陰で滞りなく尋問できた。感謝する」
「いえ、こちらこそ話を合わせていただき、ありがとうございました」
尋問を担当した騎士に礼を言われ、こちらも気持ちよく礼を返して調書を渡し、手の空いた私は一度部屋へと戻った。
奥にあるシュラの部屋をノックすれば、まだ青い顔をしている彼が出てきた。足取りはしっかりしているし、呼吸に乱れもないから大丈夫だろう。
「バルザクト様、申し訳ありませんでした……俺、俺……っ」
「問題無い。はじめての実戦なのだから、こんなものだ」
項垂れた頭を撫でようとした手を止め、彼の肩を軽く叩いて励ましてから部屋を辞した。正直、あの程度で吐くのは驚いたが、場数をこなせば慣れもするだろう。
私とて自領で最低限の剣技は身につけていたものの実践は騎士になってからで、ああそういえば私も最初は嘔吐いたな、それでも回数を重ねれば慣れてゆくものだ。慣れねばここに居られぬのであれば、慣れるしかないのだ。
ポケットから取り出した木の実を口に含み、口の中ですこし転がしたあと奥歯で一息にかみ砕いた。
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