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第一章
■五月山修羅は餌付けに目覚める
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□修羅サイド□
修羅が目覚めると、指一本動かせない筋肉痛だった。
想像を絶する筋肉痛に、バルザクトが起こしに来るまで、ベッドでのたうち回ることさえできずに悶絶していた。
「やはり、着替える余裕もなかったか」
苦笑したバルザクトは、浄化の魔法で一切合切を綺麗にし、それから着たままだった上着を脱がせた。
「どれ、マッサージしてやろう。少し動かせば、なんとか起きられるようになるものだ」
動けぬ修羅を笑ったバルザクトはそう言うと、うつ伏せにした修羅の体をすっかり揉み解し、関節を解すように動かした。言葉通り起き上がれるようになった体に、修羅は感動したが、以降は寝る前に自分でマッサージせよとの言葉にがっくりと肩を落とした。
「無茶苦茶気持ちよかったのに」
「仕えてる騎士に体を揉ませようとするな、馬鹿者が」
食堂に行く道すがら、笑いながら頭を小突かれる。その様子に、周囲の従騎士達が珍しいものを見るような視線を向けてくる。
それに気付いたのか、バルザクトは朗らかな笑みを消し、穏やかな微笑のみを残して会話を途絶えさせた。
第五騎士団で彼が浮いた存在であるのは、来て二日の修羅にもわかった。一線を引いているのは周囲の騎士なのか、バルザクトなのか。
本人はあまり頓着していないようだが、その儚げな容姿が騎士団で浮く理由にあげられたとしてもおかしくはなかった。
武を主体とする騎士にはあまりに不似合いなその容姿。だが、細い体であるのに、騎士としての任務をこなせるだけの力を持っている。
その不自然さ。
異質さが、彼に近寄りがたさを作り出しているのかもしれない。
修羅は知っている、バルザクトのその不自然さは彼の魔力から来ているのだと。彼の魔力が彼の生命に干渉し、その身を補っているのだと。
「もっとご飯食べれるようになったらいいんですけどね」
修羅の呟きに、バルザクトが首を傾げる。
「バルザクト様、せめてもう少しご飯食べませんか?」
見つめた青い瞳が揺れる。
「食べても吐いてしまうからな……勿体ないだろう。それよりも、シュラこそしっかり食べて肉を付けなさい」
「食べてますって。残したら自分が食べるので、食べれるだけ食べてください、それなら勿体なくないでしょ」
無理矢理押しつけた肉を、押しに弱いバルザクトは少しだけ食べてくれた。
いつもより少し多く食べる。それを繰り返せば、まともな量を食べれるようになるかも知れない。
修羅の目論見を知ってか知らずか、バルザクトはいつもより少しだけ満足感のある食事に後ろめたさを感じながら、一切れだけ食べた肉の残りをそっと修羅へと押しやった。
修羅が目覚めると、指一本動かせない筋肉痛だった。
想像を絶する筋肉痛に、バルザクトが起こしに来るまで、ベッドでのたうち回ることさえできずに悶絶していた。
「やはり、着替える余裕もなかったか」
苦笑したバルザクトは、浄化の魔法で一切合切を綺麗にし、それから着たままだった上着を脱がせた。
「どれ、マッサージしてやろう。少し動かせば、なんとか起きられるようになるものだ」
動けぬ修羅を笑ったバルザクトはそう言うと、うつ伏せにした修羅の体をすっかり揉み解し、関節を解すように動かした。言葉通り起き上がれるようになった体に、修羅は感動したが、以降は寝る前に自分でマッサージせよとの言葉にがっくりと肩を落とした。
「無茶苦茶気持ちよかったのに」
「仕えてる騎士に体を揉ませようとするな、馬鹿者が」
食堂に行く道すがら、笑いながら頭を小突かれる。その様子に、周囲の従騎士達が珍しいものを見るような視線を向けてくる。
それに気付いたのか、バルザクトは朗らかな笑みを消し、穏やかな微笑のみを残して会話を途絶えさせた。
第五騎士団で彼が浮いた存在であるのは、来て二日の修羅にもわかった。一線を引いているのは周囲の騎士なのか、バルザクトなのか。
本人はあまり頓着していないようだが、その儚げな容姿が騎士団で浮く理由にあげられたとしてもおかしくはなかった。
武を主体とする騎士にはあまりに不似合いなその容姿。だが、細い体であるのに、騎士としての任務をこなせるだけの力を持っている。
その不自然さ。
異質さが、彼に近寄りがたさを作り出しているのかもしれない。
修羅は知っている、バルザクトのその不自然さは彼の魔力から来ているのだと。彼の魔力が彼の生命に干渉し、その身を補っているのだと。
「もっとご飯食べれるようになったらいいんですけどね」
修羅の呟きに、バルザクトが首を傾げる。
「バルザクト様、せめてもう少しご飯食べませんか?」
見つめた青い瞳が揺れる。
「食べても吐いてしまうからな……勿体ないだろう。それよりも、シュラこそしっかり食べて肉を付けなさい」
「食べてますって。残したら自分が食べるので、食べれるだけ食べてください、それなら勿体なくないでしょ」
無理矢理押しつけた肉を、押しに弱いバルザクトは少しだけ食べてくれた。
いつもより少し多く食べる。それを繰り返せば、まともな量を食べれるようになるかも知れない。
修羅の目論見を知ってか知らずか、バルザクトはいつもより少しだけ満足感のある食事に後ろめたさを感じながら、一切れだけ食べた肉の残りをそっと修羅へと押しやった。
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