男装の騎士は異世界転移主人公を翻弄する

こる

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第一章

■五月山修羅はスチルに感動する

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 □修羅サイド□

 そういえば、バルザクトルートに入ると、擁壁の上げ下げミニゲームがあったな、などと思い出したのは部屋に戻ってからだった。

 本気で心配し、本気で叱責するバルザクトの凜々しさと、そしてスチル以上の破壊力を持つあの微笑み。

「――馬鹿な子だ、泣くことはなかろう」

 いつもの生真面目な顔が緩んだその微笑みは慈愛に満ちていて、見捨てられるかも知れないと恐慌に陥っていた修羅は、頬を拭う固い指先の感触で一気にその場面を思い出した。

 無茶をするヒロインを叱るバルザクトと、彼の叱責に泣き出すヒロインを慰める不器用なバルザクトの画像を。

 男にしてはすこし高いその声は慈しみに満ちて、そして端整な顔に浮かぶ儚げな微笑み。

 それを目の前で経験し、その破壊力に腰が抜けるほど歓喜した。

 スチルとは違う、生々しい……いや、本当に生きた人間の声であることに、得も言われぬ幸福感を感じ、そして決意を固くする、絶対にバルザクトを死なせるまいと、強く心に誓った。


 その思いが、何に基づくものなのか、今はまだわからぬまま。
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感想 13

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