男装の騎士は異世界転移主人公を翻弄する

こる

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第一章

■五月山修羅は腹を決める

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 □修羅サイド□

 エイジュード・ヒリングスとケンセル・ヒリングス、この二人はバルザクトルートに進むときにだけ現れるキャラクターだった。

 バルザクトルートが確定したのか、それとも誤差なのか。本来この段階で出会うことはなかった二人に修羅は戸惑いつつも、出会って感じたいけ好かなさに内心顔を顰める。

 第五騎士団の貴族派筆頭である副団長は平民の騎士を嫌っていて、それに追従する無口な従騎士もいつも平民騎士に対してきつい視線を投げている。

 副団長の態度に右倣えである貴族派と、団長を筆頭とする平民が半数を占めるこの第五騎士団の不調和は無くならない。

 副団長の居る限り第五騎士団は本領を発揮できず、故に、第五騎士団をメインとする『バルザクトルート』はこのゲーム内で最も難易度の高いルートとなる原因のひとつだった。

 だが、最も大きな難易度の原因は、バルザクト・アーバイツの能力の低さだ。

 基本スペックが低く、唯一の長所はその器用な魔力操作だが、それも一定条件をクリアせねば本領を発揮することなくバッドエンドへ一直線だった。

 そんな苦難の道を修羅が選んだのには理由がある。
 バルザクトルート以外だと、漏れなくバルザクトは戦死するのだ。修羅の最もお気に入りだった、彼がだ。

 だから、一縷の望みをかけて、修羅はそのルートに入ることを決めた。


 はじめて生きたバルザクトに出会ったあの瞬間に感じた、衝撃のような感動の赴くまま。修羅の心が、彼を殺すまいと命じるままに。
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