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第153話 愚かな歴史とゲーム感覚

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「じゃあ因果石を見つけるにはその稀少宝石獣達の破片が必要って事かようは?」
「因果石が稀少宝石獣が産まれた際に発したエネルギーが根源なら間違いなく共鳴するはずよ!」
「でも6個の破片って言ってもなあと一匹は行方不明なんだろ?なら探しようないんじゃ…」
「だが、他に手がかりもない。だったらかけるしかないだろ」
「一ついいですか?」

トレイニーは口を開く。

「貴方がたは因果石を使って何をしたいんですか?」
「この世界の運命を根本から変える。」
「根本から?」
「そもそも、この世界をおかしくした元凶は…もう一人の俺だ…」

涼は暗い感じに語り始めた。

「もう一人の貴方?」
「魔王ヴァニティは別の世界の涼本人なんです」
「なんと!?」
「もう一人の俺は人生を諦めて殺人して逃げて魔界でその因果石を拾ったらしい。」
「それは貴方じゃないわよ涼!やったのは…」

「結局は俺だ…」 

そうだ、ヴァニティは俺自身だった。

あの日勇者石を拾わなかった並行世界の俺だ。
拾わなかった俺はバイト先の社員を階段から落として怪我させただけじゃなく殺人までしやがったんだ。
で、逃げた先で偶々因果石を拾って悪が栄えた世界を現実にしやがったんだ。
奴はまた因果石を使って必ずやる。

「アイツらの人生や…アリシアのお袋さんもヴァニティがもう一人の俺が悪党を優遇する因果にきっとしたから…人生を狂わせてしまったんだ。全ては俺が元凶だ…」

「涼…」

「だから、後始末は俺がやる。その為には奴と同等の力がいるんだ、俺を助けてくれたみんなの人生を戻す為に…その為には因果石がどうしても必要だ!」

「自分の為には使わないと?」
「ああ。何だったら命をかけてもいいぜ!」

涼はトレイニーのレイに自分の覚悟をぶつける。

「本当にあの魔王と同一人物なんですか?」

トレイニーはそう言うと笑う。

「わかりました。私からもバックべアードに話をしてみます。貴方がたの力になってほしいと頼んでみます!」
「トレイニー様!」
「頼むぜトレイニーさん!」
「でわ、バックべアードの元へ行きます。付いてきて下さい」

涼達はトレイニーに連れられ鏡みたいな石の前にくるとトレイニーは迷わず中に入る。

「またこれか…」

涼達も続いていく。

鏡の先は先程バックべアードが出てきた巨大樹の真下だった。
バックべアードは再び樹木と同化していた。

「バックべアード!出てきて下さい!貴方に話があります!お願いします!」

トレイニーが叫んだ瞬間。
巨大樹の形が変わり木彫りの熊が出来上がると動き出した。
しかし、身体は木のままな上普通のヒグマくらいの2メートル位の大きさである。

「木彫りの熊?」
「アレがバックべアードです。仮の姿ですが」

「グガァァァ!」

人間かぁ~?

アレ?声が聞こえる。
そうか、俺達勇者だから宝石獣の声が聞こえるんだったな。

「お前がバックべアードか?」
「グガァァァ!」

そうだ。

「バックべアード。この方達は貴方がかつて共に戦った勇者達の後継者の方々です。」
「お初にお目にかかります。ジャンヌ・フォン・ガネットが子孫。アリシア・フォン・ガネットです。」

「グガァァァ!」

ジャンヌの子孫?という事は定の…

「はい、初代勇者様の末裔でもあります。そのパートナーブラキオサンドライトも私と共に居ます」

「グガァァァ!」

ブラキオの奴、生きていたのか?

「ワシはお前が生きていた事が驚きじゃわい!」
「グル?」

何だこの気持ち悪い蛙は?

「馬鹿熊が!ワシじゃ海蛇のパートナーのヴァンフォワードじゃ!」

「グガァァァ!」

ヴァンだと!?何だその情けない姿は…滑稽だな…フン。

「貴様今鼻で笑ったな!!」
「蝦蟇爺止めろって!」
「えーい離さんか~!」

馬鹿にされて頭にくる蝦蟇爺。

「バックべアード。貴方の癒しの力でこの者の両手を治して頂けませんか?」

「グガァァァ?」

は?この人間の両手を?

涼は包帯を取りバックべアードに見せた。

「治せないか?」
「グル…」

随分と派手に細胞が死に絶えてるな…まあ治せなくはないか…
 
「本当か!」
「グガァァァ!」

だが、やらん。

「はあ?なんで??」

「グガァァァ!」

人間なんか信じられない。それだけだ。

「バックべアード…」
「バックべアード。この方々は貴方がかつて敵対した人間とは違います。たがら貴方の力を!」

「グガァァァ!」

人間は俺達を砕きジャラジャラした物に変え絶滅させたふざけた人種だ。何故俺が助けねばならん…

「ちょっと待てよ。それって100年前だよな?」
「グガァァァ?」

貴様知らないのか?ヴァン。何故話さない!!

「蝦蟇爺?」

「まあ、いずれは判るか…」
「何の話だよ?」
「何故、稀少宝石獣達は姿を消したか判るか?」
「戦いが終わったからだよな?」
「違う…魔族の次は….人間が宝石獣を求めて争ったからだ…」

は?昔の人達が宝石獣を求めて争った??

「魔族を異界へ追いやり確かに世界は平和になったさ。だがな、次は宝石獣達が狙われたんじゃ各国の権力者にな」
「は?そんなの聞いたことないぞ」
「かつて人間が宝石獣を巡って争ったって言うのか?」
「宝石獣は莫大なマナを宿した魔宝石だからな…やり方によっては兵器になると当時の国は考えてな」

「グガァァァ!」

実際昔、生まれて間もない宝石獣の息の根を奪い兵器として利用された事があったからな。

マジかよ。裏の歴史って奴か…ヴァニティ達がやる前に人間達が一度宝石獣達を乱闘して兵器に転用していた!?

「それで、一度宝石獣は殆ど見なくなったのじゃ…」
「マジかよ。じゃあ宝石獣の殆どが人と大して交わらなかったのはそう言うカラクリかよ」
「それに勇者は…悪しき魔物を駆除する為の習わしではないんじゃ昔は…」
「勇者って自然界のバランスを保つ為に悪しき魔物を駆除するのが本来の使命なんじゃ?」

「グガァァァ!」

それは後にブラキオが定めた制度だ。我々の時代の勇者は違う。

「お前らの時代の勇者って一体?」

「グガァァァ!」

国同士の戦争の道具だ。

!?

「グガァァァ!」

かつては宝石獣はその力と希少性から周りから常に狙われた存在だった。魔族の後の勇者達は…それぞれの国で戦争の切り札として使われた。宝石獣をパートナーに持てるからだ。勇者の剣は当時善悪は無く資格があれば殺人鬼でも使えたからな…

「は?何だよそれ!?」
「ジルドレイが仕込んだ術式は強力だったんじゃ、ワシらが束になっても善悪の認識だけはどうにも出来なかった」

「グガァァァ!」

しかも、勇者は決まって異世界人ばかりだからな。それに訳の分からん言葉を並べて平気で命を散らす輩ばかりだった。

当時の和樹達と同じでゲームの世界だと思い込んでいた奴ばっかりだった訳か…

「それを変える為に一度は全ての宝石獣達を世に放ち人間との接触を拒否さ」
「それで終わったのか?」
「終わる訳なかった…」

「グガァァァ!」
.人の次は魔物達が生態系を崩し始めた。

「やむえず、かつて中止した勇者召喚を再び実行したんだ。ある程度の生態系維持を目的としたお前さんが語った勇者の話でな」

一度は人間から離したが今度は生態系が魔族が消えたことで変わり危険な魔物達がはびこるようになり、やむを得ない方法として条件付きで召喚を行った。それが100年前までの勇者達である。

「召喚してある程度の生態系維持を約束させ報酬を渡し帰還させる。つまりは増えすぎた動物の駆除か?」

「そうだ。だが、それでも決まって未来から召喚された者達は今も昔も変わらず訳が解らない言葉を並べて遊び半分の勇者行為だ。」

「未来から来たやつに限って?」

「祖父さんはそんな事確かになかったな。責任を強く感じて真面目に取り組んでいたと聞くぞ?」

「確かに和樹さん達も最初会った頃はよくわからない事を言ってましたから…」

「涼。和樹達も未来から来たのよね?貴方の世界の?」

「ああ。前に聞いたら歴史は同じみたいだから。間違いなく未来の人間だと思うぞ。」

前に聞いた時、俺の世界の歴史だったから少なくともパラレルワールドではないはずだ。

「しかし、何故未来から召喚した輩は皆おかしな言動や行動が目立つのでしょうか?」

「もしかして、未来から召喚した連中はVRMMOが、つまり偽物の世界で遊ぶゲームが当たり前の時代の奴ばかりだから、誰も現実性を感じてないのか?」

「つまり、未来から呼ばれた奴は俺達の世界を作りものと判断し続けてると…」
「帰り際に貰える報酬として宝や財産をしてして帰還する物ばかりだったなそう言えば…」
「その金って帰還しても使えるのか?」
「さあな。ワシらにも判らん」

「グガァァァ!」

これで分かったろ。人間は学習しない生き物だ。我らはそんな人間をずっと見て絶望したからな…だから眠りにつき自然と一体化していたのだ。

なるほどな。おとぎ話の時代からずっとこの問題は続いていたんだな。
で、ある時、ヴァニティ事もう一人の俺があいつらを唆してジルド教達と示し合わせて遂に宝石獣は大半が滅んでしまいブラキオは遂に勇者の召喚を辞めて怒り狂って眠りについたか。
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