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第124話 魔界の現実

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「追わなくていいのか?」
「ええ」

奴らは魔王軍だ。ヴァニティに報告へ行ったに違いない。
ていうか、きっと俺達が魔界に来た事はとっくにバレてるはずだ。
涼とアリシアは剣から勇者石を外すと変身を解除した。

「アンタ達、異世界の勇者って…」
「俺達は戦隊だ。悪い奴じゃない」
「涼、ますます信じないわよそれじゃ…」
「戦隊?」
「正義の味方のヒーローだ!」

だから、それじゃ話が通じないわよ!お馬鹿!!

「異世界の勇者なら俺達を助けてくれ!」
「この際、同類殺しの犯人でも構わない!」
「頼む!俺達を救ってくれ!!」
「勇者様!」
「勇者様!」

あ、アレ?俺達責められるんじゃないのか!?
ベルが言う様に俺達が魔人族を殺してる話になっているなら俺達は厄介者だろ??

「えーと、とりあえず話を聞いていいか?」

その後、村の人々が涼とアリシアに事情を話してくれた。
何でも、最近は貴族組と言う魔王ヴァニティの傘下の魔人族が税金を掛け始め、払えない物は無理やり角をへし折り立ち退きさせそこにヴァニティが派遣した貴族組の領主が1人、また1人と増えていき飢えに苦しんでいるらしい。
ここは最近その対象にされてしまったらしい。
  
「つまり便乗した奴が貴族面して街を好き放題して回ってると…」
「はい、ざっくり言うとそうです…」
「確かに貴族は王族に認められた人に与えられる称号よ。」
「でもヴァニティは100年前に突然現れたんだろ?そんな奴が何で」
「ヴァニティ様は恐ろしい力を持っていまして…誰も太刀打ちが出来ないのです…しかも、配下の魔王達もいつのまにか現れ金を払えない物や財産がないものは好き放題に辺境へおいやる始末で」

魔界はヴァニティの独裁国家って事か。
恐ろしい力って言うのは奴の力と未知の科学力と核兵器だろうな。
あのポーカーシティに居た連中もその貴族組だったのか?

「魔石もこの魔界にはもはや無く、見知らぬ伝染病に怯える日々の中みんなで暮らしているのです」
「酷い…」
「金を巻き上げて払えなきゃ人攫いかよ…」
「でも、何で角がない人を誘拐してるのかしら?」
「さあ、私達もそこまでは何でも異世界の探索に駆り出されてると噂では聞きましたが」

異世界へ探索…まさか!?
涼達が今まで倒してきた怪人達は皆、皇時也が人体実験で作り上げたものだった。
もし、差別を確立させて攫ってきた人を怪人の材料に使っていて、そしてやられた人を元に戻して故郷へ埋葬する…なるほどな。きっとこう言うカラクリだったんだな。

「涼、やっぱり」
「ああ、人攫いは間違いなく怪人の実験につかうんだ」
「怪物の実験に!?」
「戻って来た奴は無残な亡骸だったんだよな?」
「あ、はい。話によれば」
「それを異世界の勇者、アンタ達が殺したって俺達は聞いてるんだ」
「なら、何で助けを求めるんだよ?」

それが一番判らない。
そこまで知ってるなら尚更仇に助けを求めるか普通。

「俺達、もうこんな生活は嫌なんだよ!!」
「ガキの頃から何処へ行っても同じ事の繰り返しで」
「私なんか彼氏を奪われたのよ!」
「貴族組を返り討ちにしたアンタ達ならこのふざけたシステムの世界も変えられると確信したんだ!!」
「お願いします!何とぞこの世界を変えて下さい!」
「私達はもう…家族を奪われるのは嫌なんです!」

魔人族にもこんな貧富の差があったのかよ。
それが、100年も続いていれば息苦しくて死にそうにもなるよな。この世界の人々も救世主って奴をずっと待っていたってところか…

「頭を上げて下さいみなさん!」

「私達はこのままではただ死を待つだけです!」
「もう、敵の世界だろうが何でもいい!」
「我々はただ静かに暮らしたいだけです。先祖達とは違う!」
「お願いします!勇者様!」

頭を下げる村人達。

「涼…」
「わかってるさ。」

涼は土下座している村の村長らしき人に寄り添う。

「爺さん。アンタ達の気持ちはよーく分かった。」
「で、でわ!」
「ああ。言われるまでも無い!俺達はヴァニティをぶん殴りに来たんだからな!」
「あああ~ありがとうございます!」
「俺達は戦隊だ。必ずこの世界も救ってみせる!」

また…安請け合いしちゃったわ…どうしよう…


船に戻るとさっきの出来事を話す。

「また安請け合いしたのかっ!!」
「状況をわかっているのか君は!!」
「姫様もいながら何やってたんすか!?」
「ごめんなさい。今回は私も便乗したのよ…」

姫様…何やってんだよ。
自分の国にまず戻らないといけないんだぞ。
斑鳩のクソ王子が向こうで何してるか判らないんだし。

「ですが、我輩達も今一杯一杯ですからな~」
「だけど、裏が判った以上ほっとけないだろ。それが戦隊だ!」
「だからお芝居みたいにはいかないんだよ!!」
「まあまあ。約束した以上は仕方ないですよ」
「リアは甘いよ本当に!涼はほっとくと本当にどんな安請け合いするか判ったもんじゃないんだから!」

今までこいつの安請け合いでどんだけ振り回された事か。
しかも、ヴァニティ倒さなきゃ俺達の人生はないんだぞ。

「まあ、どっちにしてもヴァニティを倒さなきゃどっちの世界も平和にはならないだろう?」
「確かにのぶさんの言う通りですね!」
「しかし、まさか魔界がこんな好き放題されてるなんてな…」
「魔人族の人々も私達と変わらない人でしたよ」
「うん。僕達はずっと…」
「魔人族を本当に誤解してだんな…」
「我輩…恥ずかしいですぞ…」

涼達は改めて自分達がしてきた事や魔人族に対する認識を改める。差別とは言わないが自分達が彼らの同胞を殺した事に変わりはない。
そんな自分達を頼らなければならないほど、この世界の魔人族は困窮し苦しんでいたなんて。

「本当にベルちゃんには感謝ね。ベルちゃんがいなかったら私達はずっと魔人族を誤解してたわ」
「魔人族にも気持ちや命があって」
「僕達亜人や人気族みたいに家族が居て」
「ただ静かに暮らしたいだけ」
「先祖が魔族だからって同じ事しても仕方がないって事か」

「みんな!船の修理が完了したぞ!」

手伝いに行って居た和樹が戻って来た。

「直ったのか?」
「はい、バッチリ直りました!」
「後はエネルギーをしっかり補給させれば明日には出発出来るでありますよ!」
「それに色々改造もしましたよ師匠!」

ベルと和樹達は貰った部品で壊された箇所の修理をようやく完了させた。

「後、こんな物も作ったでありますよ!」

ベルは丸いコンパクトみたいな物を10個トレーに乗せて持って来た。

「ベル、これは何だ?」
「余った部品で通信機能付きの新しいバックルを作ったでありますよ!」

おー!戦隊じゃお馴染みの機能付きのベルトか!!

「涼さん達6人は銀で姫様と和樹達は金色でありますよ!」

涼達は受け取る。

「これで、通信も楽々で出来るでありますよ!通信宝石は予め組み込んでるんであります。それと変身すると自動的にベルトになるでありますよ!」
「ベル、やっぱ天才だなお前!!」
「ベルちゃん、お利口ね!」
「本当に大したもんだなベルは!」
「こりゃプリン今夜は2個だな!」
「えへへであります!」

ベルは嬉しそうだ。
名前はキラキラバックであります!
ダサいから、宝救バックルにしましょうね!
姫様まで言うでありますか!
回想シーンで名前つけるなよ…

「とりあえず空は自由に飛べる様になったんだな?」
「はい、であります!」
「各部の修理も完了した。」
「船首の大砲もこれで使えますよ!」

あー!あの恐竜のピークヘッドか!
アレ口開いて大砲撃つんだったなそういや。

「さて、そうと決まれば飯食ってもう休むぞ!」

信道が前掛けを着けると食堂へ向かう。

「だな、腹減った~」
「私もお腹すいたわ~」
「だか、のぶ。食料はどうするんだ?」
「大丈夫だ。ご好意で沢山貰ったんだ」

食堂では大量の野菜と魚のアラの山におからやら卵やら一体どうやって集めたんだよのぶさん。
村の人々のご好意で売れない物を沢山貰ったのさ!
不揃い品か。確かに捨てるもんな。
信道は海斗と2人で、あら汁に魚のアラで作った団子のホワイトソース和え、サラダと色々作ってくれた。
  
「さあ、みんな食べな!」
「「「「「「「「「頂きます!」」」」」」」」」

涼達はテーブルとカウンターで食事をする。

「うん、美味い!」
「信道さすがね!」
「あんあん!のぶ殿やはり美味いですぞ!」
「やはりって当たり前だろ。のぶの飯なんだから」
「本当に美味しいですよ」
「のぶさんは本当に料理がすごくですね!」
「師匠はプロだからな!」
「お前もだよ海斗!」
「俺はサラダしか作ってないよ」
「あはは。みんなおかわりもあるからな!」

信道は笑いながらうんうんと頷く。
料理を作るものとしてはこの笑顔が何より嬉しい。
信道は料理する事も食べるのも好きだが、やはりこう言う風に賑やかに仲間と食べるのは作り甲斐もあり、何より嬉しい。
信道の料理を腹一杯食べ、新たに作ったシャワー室で順番にシャワーを浴びると涼達は皆部屋に行き疲れを癒す為に今夜は早く眠りについた。
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