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第122話 もう1人の自分

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レッドベリルにのまれた涼は我を失いポーカーシティをこんな無残な瓦礫の山にしてしまった。

「目は覚めたかしら?」
涼の前に両手を組み立っているアリシア。
 
「いつの間にあんな強くなったんだよ?」
「古武術って言うんでしょ?ヴァンフォワード様に習ったのよ!」

古武術って何で異世界にあるんだよ。

「周りを見なさいよ」
「あ…」

涼は周りを見渡す無残な姿と化したポーカーシティ。これは全て涼と間藤ジンがやったのだ。

「俺…また…やっちまったんだな…」
「そうよ…全くあんな安い挑発に乗るなんて…らしくないわよ本当に!!」
「アリシアはアイツがやった事の恐ろしさを知らないからそう言えんだよ!!」
「知らないわよ。だから何よ?」

堂々としているアリシア。

「アイツはほっといたら、また同じ事をするんだぜ!アイツのせいでこの世界はもう死の世界だ!俺は好き放題命を奪う奴を許せないんだよ!ガキが知った様な口を言うなよ!」
「そのガキに足蹴りを食らって説教されてるアンタはもっとガキじゃないっ!!」
「何だと!!」

柄でもなくアリシアに食ってかかる涼。

「お前に何が分かるんだよ!!」
「判るわよ!アンタがどんだけお馬鹿で鈍感でスケベでスケコマシでいつまでも私を子供扱いするわ!!」
「それは今関係ないだろ!!アイツを逃したらまた人が死ぬ!それを止めようとしたのに何で邪魔したんだよ!!」
「ほっとけばいいのよ!あんな奴は…」
「何でだよ!!」

「アイツよりも優先する事は何よっ!!」

アリシアは怒鳴り上げると涼に指を指す。

「いい涼。アイツが何と言っても貴方はアイツと戦うべきではなかったわ!それは何故か判るかしら?」
「戦うべきじゃなかった…!?」
「判らないなら教えてあげるわよ。それは…被害が出るからよ…見なさいよ…アンタが暴走した結果はコレよっ!!」

アリシアは泣きながら訴える。
そして両手を広げて涼に周りを見渡せる。
壊れた瓦礫の山に怪我した人達。そして何より自分が街一つ消し飛ばそうとしたと言う事実を涼は思い出した。
  
「涼。貴方の言う戦隊はこんな事をする人達なの!?」
「違う…こんなの戦隊じゃない」
「今の貴方は魔王と同じよ…あのヴァニティと同じよっ!!」

俺が…アイツと同じ…違う…違う…俺はただ、奴を止めようとしただけで…
それで、他人も巻き込んでいいのか?
それは…
涼に語るもう1人の涼。
お前はただ自分のストレスをぶつけただけだろ?
違う!
ムカつくもんな。殺せれば楽だったもんな!!
違う!!
一向に望みが叶わず、ただ働くだけ。少し使えるようになれば皆んなお前を利用し始めた。
違う違う!
違わないね!!お前は当てされてない利用されてるだけだよ!あの木偶の坊を殺したいんだろ?
黙れ!!現実は関係ないだろ!!
出来ないからアイツに思考を変えて正当化しようとしたんだよお前は!!
五月蝿い…五月蝿い…五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い!!
お前のイライラを他人にぶつけてさぞ楽しかったろうな…お前の現実でやれば立派な犯罪者でお前は社会仮捨てられるだけだ!! 

もう1人の涼は包丁を片手に誰かを刺し殺す。
地で塗られた両手を涼の顔に当てる。

やがて来る、お前の運命だぜ?なあ?

「黙れ…黙れよ!!俺の頭に話しかけてくるかっ!!!」

涼は頭を抱えて喚き始めた。

「涼!?」

明らかに普通じゃない!?
一体何が起きているのか判らないアリシア。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

涼は頭を抱えながら泣き叫びもがく。

そうだ泣き叫びな!
お前は勇者でもなければヒーローでもない!ただの負け組の売れない俳優だ!
お前はさっさと帰りけなした能無し供を殺して回ればいい!そうすれば安定するからな!!

暗闇の中1人蹲り座り込む涼。

自分はただの売れない俳優…だから認められない…誰も俺なんか…使ってくれない…俺は…ただの馬鹿だ…もう…死にたい…

馬鹿言ってんじゃないわよっ!!

え?

誰も貴方が消える何て言ってないわ!
言ってるさ!!
いいえ。そんな事を思ってないわよ。
嘘だ!嘘だ!嘘だ!
そうだ嘘だ!何も信じるな!全ては敵だ。我慢せずに邪魔な連中は殺せばいい!そうすれば楽になりお前は消える!!
アンタ一体何なのよ!!
俺はコイツだ!近い将来のな!
馬鹿言ってんじゃないわよ!

闇の中に現れたアリシアが宝救聖剣(ホウキュウカリバー)を掲げると眩い光が辺りを照らす。

くっ!邪魔な光の剣だな。まあいい。
もう1人の涼は闇の中へ消えて行く。

待ちなさい!

いずれ判るさ…こいつの末路がな…

闇に消えたもう1人の涼。
アリシアは涼に歩み寄る

涼…
ほっといてくれよ…
ううん。ほっとかないわ!
俺は人殺しがお似合いな馬鹿な奴なんだよ!! 

自暴自棄になる闇の中の涼。

ばか… 

アリシアは涼を抱きしめる。

貴方はお馬鹿だけど本当に優しい私の騎士様よ
俺は…人をまた…傷つけて…
間違いは幾度となく繰り返すのが人生よ。
俺は…

しっかりしなさいよ!私が惚れた男がそんなんじゃ困るから…

え?

何でもない!さあ、帰るわよ!!

アリシアの言葉で周りがパァっと明るくなっていく。

「はっ!?」

目を覚ますと涼の顔はアリシアの胸の中だった。

「アリシア…苦しい…」
「はっ!?馬鹿っ!スケベ!!」

アリシアは涼を離し突き飛ばす。
アリシアは涙を溜めながら胸を隠す。

「このスケベ!女の子の胸で泣くなんて!」
「何でそうなんだよ!!ていうか何があったんだよ??」
「え?覚えてないの??」
「うーむ。自暴自棄になったのは覚えてるんだけど…そっから先が…思い出せない…」

あの精神の中での事は何も覚えてないの!?
涼が泣き叫びながら倒れおかしいと思ったアリシアがアレキサンドライトで涼の精神世界へダイブしたらもう1人の涼がいて何か囁いているんだから。で、怖がる涼を宥めようとハグしてたら起きた。

「ありがとうな。アリシア。目が覚めよ…」
「ばーか。感謝しなさいよ本当に!」
「ああ、しかし我ながら馬鹿やっちまったな…街の人達を…」
「奇跡的に誰も死んでないそうだ!」

和樹がやって来た。

「和樹!本当か!?」
「ああ、奇跡的に誰もしんでない。間藤ジンは消えたがな」
「あの野郎!」
「ほっと来なさいよ。」
「でもよ!」
「いつか…必ず報いは受けてもらうわよ。法的にね」

アリシアも許せないのだ。

「でも、まずはケジメよ」

アリシアは涼の耳を引っ張る。

「痛てててて!」
「これだけ迷惑かけたんだから責任取ってちゃんと謝りなさい!そして直しなさい!」
「わ、わかった!わかったよアリシア!」
「何ですって?」

アリシアは更に強く引っ張る。

「は、はい!わかりました!アリシア姫様!!」
「宜しい!」

アリシアは耳を離す。

「痛ててて…」
「姫様たくましいな…」
「あら?カイエンは?」
「あ!そういや?」
「アイツなら船に急いで戻ったよ。」

和樹がそう言ってる時に通信宝石が着信音が鳴り響く。

「お!噂をすればね!もしもし?」


船のコックピットのコンソール。

「あ、姫様!やっと繋がったであります!!」
「ごめんねベルちゃん。本当に!」
「大丈夫でありますよ!首無しやのぶさん達が応援に来てくれたでありますから!」

よかった…どうやら信道達が戻って対処してくれたみたいだ。
外では縛り上げた襲って来た奴らを蹴飛ばしているカイエンとそれを止めるルーガル。
ゲーターオーとエンカイオーは瓦礫を片付けている。原爆もだ。

「ベル!俺だ!海斗達は?」
「間も無く着くでありますよ!」

着くって何が?
ポーカーシティの上空から降りて来たカルタノハオー。
「おーい!海斗!」
「来ましたよ!」
「遅いぞ!」
「ベルちゃん?何でカルタノハオーが?」

リアはベルに確認する。

「何か和樹がお空で原子炉を破壊するって話で」
「え?何する気だよ?」

和樹はカルタノハオーに乗り込んだ。
コックピットには既に乗り込んだ、海斗と愛がいた。

「ワームホールに原子炉を投げ込んでその中で核爆発させる!」

なるほどな。ワームホールなら磁気嵐の中だから被害は無いし何より安全に破壊出来る。

「大丈夫なの!?」
「ポイントは絞ってます!」
「自分達にお任せを!」

カルタノハオーは剣を地面にに当てる。
コックピットの中で和樹は人口宝石をはめ込んだ。

「落とし穴宝石!」

カルタノハオーの真下に穴が空きカルタノハオーはゆっくりと降下していく。
空を飛べるカルタノハオーだからこそできる。

「いっちまった…」
「じゃあ、ベルちゃん後でね!」

アリシアは通信を切った。

地下では穴の先の巨大な原子炉にたどり着いたカルタノハオー。スティラコの頭部を肩にずらすと拳が現れカルタノハオーは両手で原子炉を引っ張りだすとコードが引きちぎれ原子炉を取り出すと再び飛び上がり地上へ出た。
カルタノハオーは上空で停止した。

「愛(まこと)何処だ?」
「あそこです!あの輪っかになってる雲の間です」

周りが少しずつ明るくなっている。
間も無く夜明けだ。

「カルタノ!このポイントにエネルギーを叩き込め!!」

「ガウ!」
けっ!命令しやがって…

カルタノは口を開くと膨大なエネルギーの嵐を放つ。巨大なハリケーンが口から放たれるとさっき言っていた雲の間に当たるとそこからガラスが割れた様なヒビが入り穴が開いた。
ワームホールを開いた。

「ワームホールを無理やり開いた!?」
「カルタノハオーすげーな!」

空間を捻じ曲げる何てどんなパワーしてんだよ。

「よし!あの穴にコイツを投げ入れろ!」
「よし来た!」

カルタノハオーはワームホールに引きちぎった原子炉を叩き込む。とすかさず必殺技を放つ。

「「「カルタノハオー!ジュラシックハリケーン!!」」」

カルタノハオーの胸部のカルタノの口が開くとエネルギー砲が放たれワームホールに入り中に入れた原子炉は核爆発を起こし。そのエネルギーで再びワームホールの穴が塞がった。

「よっしゃー!」
「これで大丈夫ね!!」

カルタノハオーは街に着地すると三人はコックピットから出てきた。
三人は勇者石を外して変身を解除しカルタノハ達も小さくなる。

「さあ、先生!街を直しましょう!」
「師匠に自分も頼まれたんで」
「お前ら」
「間違いは誰でもある。次はやらなきゃいいんだろ。違うか涼?」
「ああ。その通りだな。謝って回ってくるわ」

涼はそう言うと走り出した。

「私達も街を直しましょう」
「僕達の剣なら修理はお手の物ですよ!」
「姫様は涼と街を回ってくれ。あいつ口下手だからな」
「そうね…そうするわ」

アリシアも涼の跡を追っていく。

「片付けと説明は骨が折れそうだな」
「説明は僕が2人は修理の方を!」
「わかった」
「行くぜ和樹」

「テラー!」
ミー達もお手伝い!
「スティ!」
瓦礫を片付けるくらいなら!
2体の宝石獣は身体を大きくし瓦礫を片付け始めた。

「スティ!」
カルタノ、手伝って下さい!
「ガウ」
やなこった。かったるいわい。
「テラー!」
親分はめんどくさガーリー!
「ガウ!」
五月蝿い!!ワシはティラ坊を連れて先に帰る。
カルタノはルビティラを背に乗せ巨大化し船に戻っていった。

朝日が眩しい中、涼とアリシアは街を回りながら謝罪した。当然凄い責められ怒られたが、街の地下にあった危険なエネルギーを愛が説明してくれたおかげやいつのまにかアリシアが録音していた間藤ジンの発言が一番効いた。
アリシアが万が一と録音宝石で奴の声を閉じ込めたのだ。
録音宝石はアリシアが政治家や貴族達と会話する際に一部始終の会話をサンプルするために作った人口宝石である。
そのあと、駆けつけた仲間達の協力の元、ポーカーシティは何ごともなかったかの様に復活した。


その頃
魔王ヴァニティの居る魔界城では~

「ほぉ~奴らが魔界に来たか~」
「ああ、全くあいつらのせいでせっかくの施設が台無しになっちまったよ!」
「そんな事はどうでもいい。間藤。アレは最終調整出来たんだろうな?」

ヴァニティが玉座で膝を組みながら聞いた。

「たく、あんなヤバイもんなんて聞いてないぞ。俺が死んでもいいってのか?」
「いいから早く渡せ」
「ちっ!ホラよ!」

間藤ジンは舌打ちするとヴァニティに何かを投げ渡した。
それは何かの銀色のパーツが付いたコンパクトだった。

「そいつをあの野郎に打ち込めば奴はもう戦えなくなるはずだ。」
「調整は完璧か?」
「当たり前だ。奴は泣きべそかくぜ。その、ウラニウムで作った禁断のアイテム、ヌークリアコアを打ち込んだらな!」
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