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第103話 異世界の犯罪者

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グルミ族の森で一夜を過ごした三人はグルミ族の小人のポップとその姉のカナリアを道案内に森の出口へ着いた。

「ありがとうな。ポップ!」

「お世話になりました」

「皆さんお気をつけて」

「ああ、いい知らせを待っててくれ!」

「それではまた!」

三人はそう言うとグルミ族の森を後にした。

「あ…」

「ポップ?」

「姉ちゃん…ごめん!」

ポップはそう言うと自分の乗って来た雀蜂に跨り飛び上がると信道達を追いかけて行った。

「ぽ、ポップ!!」

カナリアは声を上げるがポップは行ってしまった。

「全く…無理すんじゃないわよ」


グルミ族の森から少し遠回りにはなったが信道達は国の裏側までついた。

クーベル王国
各国の王族や貴族が通う学びやがある大きな都。

しかし、今は 完全に廃墟になっており、それどころかあちこちに巨大な害虫達がうようよしている、ゴキブリにハエに蚊に蠍に雀蜂までいた。検問から覗く信道達。

「うわ、街の中までこんななのかよ」

「迂闊には行けませんね」

「地下から行くしかないか…」

「地下ってどこですか?」

「あそこだ」

街の城壁から流れてる汚い水。つまりあそこは…

「げ、下水ですか!?私は栗鼠です鼠じゃありませんよ!」

「師匠。余計にゴキブリとか絶対にいるんじゃ…」

「正面きっていけないだろう。まだ地下から行った方が街に入り込める。それに地下なら上にも響かないだろ!」

「ですが…」

「他に道もない。さあ行くぞ!」

信道はそう言うと下水の出入り口へ向かう。
二人も渋々付いていく。


「あん?誰だ?僕の仕事場に足を踏み入れた奴は?」

暗い部屋にいくつものモニターが付いていている部屋に物を食べながら見ている男。

「どうやら鼠が紛れてきたみたいね。しかし汚ったない部屋ね」

アイカはそう言うと足元にある食べ散らかした物を蹴飛ばす。壁に当たった残飯を漁るゴキブリ達。

「ひい!趣味が悪いわね」

「あれぐらいが丁度いいのさ」

「引きこもりが偉そうね」

「なんとでも言えばいいさ。君には僕の芸術は判らない」

コンソールをいじっている男はそう言った。

「貴方を引き入れ役職を与えたのは私のパパよ。そこは感謝してほしいわね!」

「ああ、感謝はしてるさ。でもまだ信じられないよ。ここが異世界なんて」

「どうしてヴァニティ様はこんな陰険を召喚したのかしら?」

「僕は好き放題デザインが出来ればそれでいいから」

男はそう言うとアイカと顔を合わせずひたすらコンソールをいじっている。

「キモい男ですわ。こんな奴に怪人を作らせて何を考えているのかしら、ヴァニティ様は」


侵入に気づかれているとは何処しらず下水の中を進む三人。

「うわ…酷い臭いですね…」

「そりゃ下水だからな…」

「だから嫌って言ったんですよ!!」

「仕方ないだろ。他に侵入経路はなかったんだ。我慢して進め」

でもやっぱり好き好んで下水なんか行きませんよ。そりゃ当たり前だ。

「し、師匠!!」

先に進んでいた海斗か慌ててこっちへ来た。

「なんだどうした?」

「やっぱ居ました!」

「ゴキブリぐらいで騒ぐな!」

「いやワニですっ!!」

海斗の後ろにいる巨大なワニ。

「何っ!?」

「何でワニが下水にいるんですかっ!!」

「ていうか、こっちへ来るな馬鹿!!」

信道とリアは逃げ出す。

「そんな師匠!置いていかないで下さいよ!」

ワニは口をパカパカ開けながら追いかけてくる。

「もう海斗さんはどうしていつも変な物を見つけて来るんですかっ!?」

「さあ、自分でも判りませんっ!!」

「いや否定するとこだろ!」

突っ込んでる場合じゃありませんよっ!!

回想シーンで言うな!!

「「「うわーー!!」」」

ワニはまだ追いかけてくる。

「くそ!変身して倒すか!!」

「いや待てそんな暇はないだろ!」

「じゃあどうするんですか!?」

「下水は狭いだから出るぞ!」

そうだ倒す事はきっと出来るが、下水の中じゃ狭くて戦いにくい。だから一旦外に出る。

「海斗達を虐めるなー!」

逃げる三人にすれ違う雀蜂に跨るポップ。

「え?ポップ!?」

三人は止まると振り向く。

雀蜂に跨るポップはワニの鼻先に雀蜂のお尻の針をお見舞いした。

ブスッ!

「い、痛ったーーー!!」

ワニが声を上げた。ん?声を上げた!?

「痛いな~もう~」

痛がり泣き出すワニ。

「「「わ、ワニが喋ったーー!?」」」

三人は声を上げた。


「はあ?お前人間なのかっ!?」

「うん…」

とりあえず下水から出た。

事情を聞く為にワニを外へ連れ出した。

「あなたは本当に人間なの?」

「うん…ママに会いたいよ…」

「ママってお前いくつだよ?」

「9歳」

何子供!?何で子供がワニにされたんだよ!?

「一体何があったの?」

「判らないよ…変な人にプールに落とされて気がついたらこんな姿にされて失敗作だって下水に捨てられたの…」

「なんだそりゃ…それいつ?」

「ぐすん…3日前…」

なんだそりゃ!?誰だそんな馬鹿な事しやがった野郎わよ!!

「安心しろ坊やこのにいちゃん達が君を元に戻してくれるぞ!」

ワニにされた子供を元気付けるポップ。

「ぐす…本当?」

「ああ!だよね海斗!」

「え、えーと…」

「堂々と勿論だと言えばいいだろ!」

信道はそう言うと海斗の背中を叩く。

「師匠…ああ、任せておけ!」

「私達がきっと何とかしてみせるわ!」

「本当?」

「ああ、兄ちゃん達は戦隊だから!」

「戦隊?」

「正義のヒーローだ!」

ワニにされた子供の顔がパァと明るくなる。よかった、元気が出たんだな!

「しかしポップ。お前ついてきたのか?」

「ああ、じっとしてられなかった!」

「でも危ないですよ!そんな小さな身体で」

「俺は初代勇者の末裔だ。怖くないよ!」

確かにグルミ族の初代長が初代勇者の一人なのは聞いたが。

「なあ、坊やだけなのか?ワニにされたのは?」

「ううん、まだまだ沢山いるよ。」

やっぱりか。一人な訳ないよな。しかし失敗作って言ってたが何の事なんだ??まあ何にしても子供で人体実験に使うような奴はロクな奴じゃないのは確かだ。

「ポップ。お前はこの子を見ててくれ」

「海斗達は?」

「俺達は…」

「俺達は正面から突っ切って行く!」

「師匠!?」

「頭に来てるのはお前だけじゃない。そうだろ?」

「ええ、ここまで来たら当たって砕けましょう!」

二人もまどろっこしいのは辞め、正面突破と行く事にした。

「ちと強引だが、正面から行った方が親玉もすぐ見つかる。そうだろ?」

「やっぱりそれしかないですね。」

「行きましょう。リアさん、師匠!」

海斗はそう言うと立ち上がる。

「ええ!」

「いっちょ暴れるか!」

「ポップ、頼んだぞ!」

「ああ、任せておけ!頼んだぞ!」

三人はワニにされた子供をポップに任せるとクーベルの入り口検問へ向かう。
案の定、屯っていたゴキブリやハエや蠍が襲い掛かってきた。

「やっぱこうなるか」

「改めて見ると気持ち悪いですね」

「でも突破するしかないな!」

だけどこうウジャウジャいちゃな…

「あ!そうだアレだ!」

信道は人口宝石を取り出した。

「なんの人口宝石ですか?」

「涼のアイデアだ!」

「まだ何かあるんですか!?あのおふざけシリーズに?」

おふざけとは失礼な!!いやふざけてるもんばっかだろお前のは!

「これなら打って付けだ!」

信道はそう言うとチェンジエッグに人口宝石を入れると蓋をし宝救丁の持ち手でスイッチを押すとエッグを裏にし切り込みに宝救丁の刃を当てスライドさせる。

「オラよ!」

信道は剣を振り翳すと白い餅みたいな塊が飛び出し広がり巨大ゴキブリ達に纏わりつく。

ゴキブリ達は這い蹲り動けなくなった。

「アレは?」

「とりもち宝石だ!」

「ゴキブリホイホイじゃん…」

「ホイホイ?」

とりもち宝石は柔らかくて粘りが強い餅を放ち動きを止まる涼が作った人口宝石だ。しかしやはりダサいとダメ出しを食らってしまいお蔵入りになったが、偶然にもゴキブリホイホイみたいな役割を果たしていた。 

「まあ、とりあえず先に行くぞ」

信道達はそう言うと先へ進む。

行く途中もとりもち宝石を放ち動きを止める。やはり所詮は虫だった。 

三人はワニにされた子供の話を頼りに進みどうやらこの城にその親玉がいるらしい。
城へ入ると途中、何か見たことあるような痛た痛しいポスターが貼られた部屋を見つけた。

「な、何だ?この張り紙?」

「何か書いてありますが?」

「これ、アニメのポスターじゃん…」

「アニメ?」

「何でもありません」

海斗はそう言うと扉を蹴り出し強引に入る。

中は暗い。うっすら灯が見える。

「何だここは?」

妙なガラスの容器に液体がたっぷりと入っている。中には巨大な虫が入っていたり、気味の悪い動物が入っている。

「あのカルト宗教を思い出すような部屋だな」

「これみんな魔獣?」

「にしちゃ気味の悪いのばっかだな」

「僕のデザインが気味悪いって?失礼だな」 

「「「!?」」」

三人が振り向くとコンソールの画面が消える。椅子が周り眼鏡をかけ隈だらけの髪を纏めた如何にも顔色の悪いシャツを着た音がこちらを振り向く。

「な、何だお前は?」

「人に尋ねるなら自分から名乗る。常識だろ?」

うわ、ムカつく!

「悪党に名乗るかよ!」

「まあ、知ってるけどね」

「だったら聞くなよ!!」

「貴方は一体?」

「まあ、いいだろ。名乗ってあげるよ。僕は時也、皇時也(すめらぎときや)。この城で怪人クリエイターをやっている」

「怪人クリエイター??」

何だそりゃ?クリエイターってデザインの事だよな?それじゃまるで…

「無知な連中だ。判らないのかい?」

「判るわけないだろ!」

「はっ!これだから異世界人は」

「異世界人ってお前この世界の人間じゃないのか!?」

「名前で気づくだろ?普通。君は馬鹿だな」

コイツさっきから馬鹿にしやがって。海斗は頭に血がのぼる。

「お前が海斗と同じ異世界人?どうやってこの世界に来たんだ?」

「さあ?僕はただ呼ばれたら来ただけだ。まあ隠れ蓑としては丁度良かった」

「丁度良かった?」

「ああ、実は5件程放火をしてね。警察から追われていからね」

は?放火だと!?コイツ放火魔か!

「放火魔が異世界に!?」

「放火魔とは失礼だな。僕は当然の裁きを製作会社へ与えただけだよ」

「当然の裁き?製作会社??」

「海斗。コイツ一体何を言ってるんだ?」

「アンタ、アニメーターだろ」

「まあね。でも製作会社は僕の才能を理解しなかった。それどころか僕を否定した。」

時也の口調が重くなって来る。

「それどころか奴らは僕の絵コンテを盗作し利用したんだよっ!!散々人の事をあーだこーだ言ってなっ!僕の作品を盗んだんだっ!」

「何か変なスイッチが入りましたよ」

「急に凶変したぞ!?」

「アレ?何かこの話聞いた事あるような…」

そう海斗は聞いた事があった。この男が語る事に。確か朝飯食いながら見てたテレビのニュースでそんな話が…あったな。でも犯人は身投げして死亡って扱いに…まさか!?

「ああ!?お前まさか映像製作会社連続放火事件の犯人か!?」

「連続放火事件?ああ、僕が裁きを与えた製作会社のアレか!てことは君僕と同じ時間軸の人間かい?」

「マジかよ…」

コイツ俺と同じ時代の人間でしかもあの悪質な放火魔が何でこの異世界に??俺達みたいに勇者として呼ばれた訳じゃ無いならどうやって??

「でもそれって只の被害妄想じゃないですか!!たまたま同じになっただけです!」

「そんなこと料理だってやってりゃ、いくらでもあるわ!絵だって同じだろ!」

「腹に入れば消える物と僕の作品を同じ扱いするなっ!奴らは僕のモチーフを盗んだんだっ!罪を犯したのはアイツらだ!!だから裁きを与えたんだっ!僕は被害者だ!!」

何だよコイツ…自分は悪くない?人を殺した自覚があるのにか!?放火は罪が重いんだぞ。お前のした放火で一体何人死んだと思ってるんだよ…ふざけんな!

海斗はかつての自分と重ねる。立場は違えど人を殺め続け自分には非がないと本気で思い込んでいた頃の自分だ。きっと涼達はこんな気持ちで海斗達を見ていたのであろう。

「お前ふざけんなよっ!!盗作されたから裁きをした?馬鹿も休み休みいいやがれっ!!」

「虐殺犯からそんな言葉が出るとは驚きですわ!」

時也の横にいつのまにか現れたアイカ。

「アイカ!」

「貴女は!!」

「またお前かよ泥棒女!!」

「虐殺犯?ああ、アレが先代の馬鹿勇者の1人か!ゲームと思い込んで人を殺していた馬鹿丸出しの滑稽って言うのわ!あははは!腹痛い!」

椅子に座りながら腹を抱えて笑う時也。

「くっ…」

返す言葉も無く黙り込む海斗。

「あはははは!」

ドカンッ!

信道は濁酒銃を構えて弾を放ち時也の顔をかする。時也の左頬から流れる赤い血。

「ヒイッ!な、何をするんだ!!」

「黙って聞いてりゃ、言いたい放題じゃないかよ俺の1番弟子によっ!!」

信道は怒鳴り上げた。

「師匠!」

「信道さん!」

「弟子だと?人殺しが作った飯なんか食べる馬鹿何かいないだろ!」

「お前みたいな立派な人間のゴミ屑よりずっと立派に毎日頑張ってんだよコイツは!」

「ぼ、僕がゴミ屑だと!!」

「俺達の仕事はお客に料理を振る舞い喜んでもらう事だ。コイツの仕事は料理であって、目の前のゴミ屋敷でダラダラしてる事なんかじゃない!!」

信道は時也に指を指す。確かにこの有様はゴミ屋敷以外の何者でもない。

「僕がゴミ!!ふざけんなよっ!たかだか食べれば終わりのもんと僕の怪人作成を馬鹿にするなっ!!僕は仕事で作った作品をいつもお前らが潰してるんだからな!貴様らのヒーローごっこの為にいくつ駄目にされたと思っているんだよっ!!」

「ちょっと待って下さい!貴方が怪人を作った!?」

「ああ、そうだよ。君達のヒーローごっこの相手を作ったのは、この僕だ!」
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