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第69話 弟子入り志願?

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ビクセントでの事件が片付いた涼達は海斗を連れてガネットへ戻って来た。

数日かがりでガネットへ帰国した涼達は真っ先にガネット国王へ謁見した。
海斗は和樹と同様反逆罪の罪で逮捕されたが、和樹と同様に涼達が彼を引き取り世界に安住を条件に涼達と共にする許しを得た。


「お願いします!俺に料理を教えて下さい!信道さん!」

「は?」

馬車へ戻るなり信道に土下座をする海斗。

「か、海斗?どうした急に?」

和樹も心配になるあの女好きの海斗が男に頭を下げるなんて。

「俺は…いえ自分は貴方の作ってくれた料理に命を救われました。」

「いや、あれは余り物で作っただけで…」

「手料理の暖かさに感動しました。自分の犯した罪はよーく理解しております。恥を忍んで頭を下げに来ました、料理を教えて下さい。料理で償いたいんです!」

「海斗…」

「お前さ、料理で償いたいって言ってもな、口で言うのは簡単だが現実は簡単じゃないんだぞ」

「わかっております…」

「いや、わかってない。ハッキリ言うが罪を犯した奴の手料理を食べたいと思う奴がいると思っているのか?」

確かに…現実に考えれば有り得ない話だ。

「料理を舐めているのか?償いたいって別に料理じゃなくてもいいだろ!」

「料理がいいんです!」

「何故料理にこだわる?」

「自分は誰かの手料理を知らずに育って来ました。腹が満たせればいいとずっと思ってぃました。でも、信道さんが作ってくれた料理は美味しいくて涙が止まらなくなり…お袋のご飯は絶対この感じだって…そう思ったんです…」

そう、海斗は母親の暖かい手料理を知らない。母親は産んで直ぐ出て行き、親父はいつもコンビニ弁当ばっかりで手料理を食べさせてもらった事がない。

ていうか親の愛情を知らず母親の愛情が一番恋しくて仕方がなかったのに会えない。
寂しさを紛らわす様に夜遊びと女遊びを繰り返す様になったのだ。

元の世界へ帰りたかったのはやっとコンタクトを取れた母親とまだ見ぬ父違いの妹に会いに行く為だったのだ。

「俺は料理に救われた、だから料理を通して変わりたい…お願いします…料理を教えて下さい。俺を弟子にして下さい信道さん!」

「…」

「のぶさん、どうする?」

「はぁ、今のお前は厨房に立つ資格すらない」

「信道!そんな言い方!」

「やりたければ雑用でもしろ。全ては態度で示す。それがプロだ」

信道はそう言うと馬車から出て行った。

「海斗…」

「分かりました!師匠!」

アレ?凹んでない??

「まずは雑用からのスタートと言う事ですね!分かりました、自分頑張ります!!」

海斗は今まで見せた事無いような張り切りを魅せている。

「お、おいお前大丈夫か?」

「ご心配には及びません。今日から自分がこの基地を住み込みでハウスキーパーをやらせて頂きます!」

「「「「「はっ!?」」」」」

「オイ君正気か?」

「勿論ですよコハクさん!」

「涼、この人壊れたんじゃないの?」

「あははは!お前一途な男だったんだな!」

「はい、涼さん!これからテキパキ雑用として働きます。何でも言って下さい!」

何この変わり様…壊れてはいないみたいだが…

「そこまで言われちゃな。海斗だったか?のぶさんに認めてもらえる様頑張れよ!」

「はい!自分必ず弟子になってみせます!」

「涼殿こう言う奴ほどしっかりと言った方が」

「蜥蜴さん。その尻尾分けてくれませんか?料理の練習に使いたいので!」

「貴様、我輩を馬鹿にしてるか!!」

それからと言うもの、海斗は割烹着姿で炊事、洗濯、掃除と毎日毎日進んでやってくれている。

「ふふ~ん」

楽しく鼻歌を歌いながら基地の掃除をする海斗。

「楽しいそうだな」

「なんか裏ありそうじゃないか?」

「疑うなよカイエン。海斗だって一生懸命変わろうと努力してんだから」

「涼は甘いんだよ!コイツが何をしたかわかってんだろ?」

「本人の前で言うなよ」

「ハッキリ言うだけマシだろう!」

そう、みんな海斗をまだ受け入れていないのだ。元々敵だった事もあるが何よりあの変わりようがどうも信じられないらしい。

「大丈夫ですよ。涼さん」

「海斗」

「俺がした事は許される事じゃない。判っていますから、指摘してもらえる事を有り難く思って頑張ります!」

海斗はそう言ってその場を去る。

「凄い変わりようだな…」

「ですな」

「お、2人とも」

入り口からコハクとルーガルが基地に入って来た。

「迷惑かけてすまない」

奥から涼達の元へ来る和樹。

「和樹、何で謝るんだよ?助かってるぜ」

「海斗は元々根は真面目なんだ。今は絶対にやりたい事を見つけて頑張ってる。だから!」

「別に追い出しはしない」

「まあ邪魔はしてませんからな」

「僕達はまだ君達を認めてはいない。それは理解してるんだな?和樹?」

「ああ、わかってるつもりだコハク」

和樹もまだメンバーのみんなに認められてはいない。だが確実に関係ほ進歩していると信じたい。

「前にも言ったろ。焦るなよ!」

「涼…いつもありがとう」

「今は仲間だろ俺たち!」

涼はそう言うと和樹の肩を組む。

「たく、涼はお人好しなんだから」

「疑う事を知りませんからな」

「お前は空気を読む事をしらないだろ」

「はい?空気は吸うものですよカイエン殿」

駄目だこりゃ…ウチのツートップ馬鹿は…


涼達は久々に信道の店で夕食を食べる事にした。暖簾をくぐるところが本当に居酒屋だわ。まあのぶさんの祖父さんが始めたからな。

「いらっしゃい!」

「来たわよ信道!」

「のぶさん来たぜ!」

「おう!今案内する」

仕事着を着たアンズさんが出迎えた。

「涼さん皆さんいらっしゃいませ」

「アンズさんこんばんは!」

「アンズちゃん久しぶりね!」

「姫さまもご無沙汰です」

アンズは涼達を畳みの座席に案内した。

「本当に居酒屋なんだな」

「和樹のいた時代はどんな風だったんだ?」

「いや大して変化はないさ。でもここまで古い感じは見ないかな」

「そりゃお祖父ちゃんの店だからね」

「あ、すいません」

「いいんですよ。古いのは本当ですから」

アンズはお品書きを渡し全員分のお冷やとおしぼりを置いた。

「決まったら呼んで下さいね」

アンズはそう言うと他のテーブルへ行った。

「涼さん」

「ん?なんだリア?」

「アレって」

「ん?海斗か!?」

「なんだって!?」

和樹は席を立って見回わすと確かに海斗がいたしかも注文とってる。

「何故あやつがここにいる?」

「どうりで馬車にいないと思ったら」

「ここでアルバイトですかね?」

「どうだろうか?」

「皆んな反応薄いわね」

「お祖母様仕方ないわよ」

「であります」

「いいから注文しようぜ!」

涼はアンズを呼びとりあえずビール4つとジュースを頼んだ。
飲み物と枝豆が届くと仲間達はグラスを手にとって乾杯した。

「ごくごく…かぁ~!美味いぜのぶさん!」

「そうかそりゃ良かった!」

「信道支払いは私がするから心配ないわよ!」

「あいよ。アンズちゃん串カツを涼達に」

「わかりました大将」

アンズは受け取り涼達の元へ運んでいった。

「生5つと唐揚げと冷奴お願いします!」

「あいよ、3番テーブルに生を運べ。落とすんじゃねーぞ!」

「はい!」

海斗は運んでいった。

海斗は信道に頼み込み一日ここで働かせてもらいそこで様子を見る事になってるのだ。
涼達は楽しく酒をかわしながらひたすら失敗しながらも接客をしている海斗を見ていた。
悪党の側にいた頃とは信じられない程明るく楽しそうに人と触れ合っている。

店が閉店する時間になり仕事を終えた信道達。

「お疲れ様」

「お疲れ様です」

「お、お疲れ様です」

「この程度で疲れていちゃ料理人にはなれないぞ」

「信道くん厳しすぎ」

「いいんですアンズさん。全ては師匠に認めて貰う為に」

海斗の奴女の子がいるのに声もかけずひたすら仕事に打ち込んでいたぞ。前のアイツからは考えられない。

「で、どうだった?お仕事は?」

「アルバイトすらした事なかったんで、色々大変でしたけど。でも…ありがとうって言われるのは嬉しいっす」

「海斗だったよな」

「は、はい」

信道は鉢巻を外し声をかけた。

「ハッキリ言うがお前は調理場には立たせられない」

「信道くん!」

「のぶさん!厳しすぎるぜ!」

「そうよ信道。彼一生懸命頑張ってたわ!」

「癪だけど頑張ってたと思うでありますよ」

「信道くん考え直してあげて。信春くんだったら」

「祖父さんでも同じことを言ってるさ」

信道は厳しい眼差しで海斗を見つめる。

「厨房には立たせられない。が、素人のままではな…」

「え…」

「お前がお客様とちゃんと話しコミュニケーションを取れていたのは認めてやる」

「のぶさん!!」

「だが料理の修行は話が別だ。人様に出せる物を作れない奴は調理場には絶対に立たせられない。まずは従業員見習いからのスタートだ!」

「うおぉっしゃー!」

海斗は声を上げた。

信道は従業員見習いからだが彼を教える事にしたのだ。

「ありがとうございます!師匠!」

「師匠じゃない店長だ」

「はい師匠!」

「だから…まあいいだろ」

「やったね海斗くん!これから宜しくね」

「はい先輩!」

「やったな海斗!」

「おめでとう海斗!」

「和樹!涼さんありがとう!ありがとう!」

三人は肩を抱き合い健闘をたたえた。

「男って馬鹿でありますな…」

「従業員見習いのスタートなんですね」

「まあ、信道が認めた以上はね」

(信春くん貴方のお孫さんは本当に立派な料理人になったよ)

「よーし!お祝いだ!のぶさんまだ酒あるか!」

「あいよ!余りもんでなんか作ってやるよサービスだ!」

「「「「「「「「「やった!」」」」」」」」」

その夜涼達は海斗の祝賀会と称してまたお酒を飲み直し再び宴会が始まった。


「みんな…遅いティラ…」

馬車で寂しく留守番するルビティラ。
一緒に行けなかったのだ。また今度ね。


 



同じ頃…

「ぐわぁ…」

踠き苦しみ男は倒れ廃になり消えた。

光る宝石を残して。

「これを後どれくらい集めるんですか?」

「そうですわね、ざっと1万個程ですわ」

「だったら何処かの城下町を潰せば事が足りますね」

「ええ、でわお願い致しますわ」

暗闇の街の路地に月の光が降り注ぎ男を殺した人物は剣についた血を払う。

「アイン様」
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