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第32話 砂漠の塔の魔王

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俺達は港町カイアナスへ向かっている。

新しい仲間に魔人族のベルが加わった。
そのベルは秘密基地に新しく追加した専用のラボに閉じこもって何かを作っている。

「ベルちゃん!お茶持ってきましたよ!」

「ベルちゃん!信道がお菓子作ってくれたわよ!
一緒に食べましょう!」


「リアに姫様でありますか!丁度休憩であります!」

ベルはゴーグルを外して床に座りお茶とお菓子を頂いた。

「何を作ってるの?」

「んぐんぐ、ホウキュウジャーのパワーアップアイテムであります!」

「パワーアップアイテム?」

「はい!兄様の剣に対抗は勿論強敵に備えて発明中であります!」

ベルが見せてくれた。

見た目は丸くて宝救剣の鍔にはめ込み固定してレバーを動かす作りだ。

「これがパワーアップアイテム?」

「宝救剣の拡張強化デバイスであります!涼さんから簡単にあっちの世界の技術を聞いたので」

「これチェンジストーンを入れる窪みまでおおちゃうわよ!」

「石なしでも強化が可能であります!」

「それは凄いじゃない!」

「まだ人口宝石にルーンを刻んではないでありますがね…」

そうまだ肝心の作業が終わってないのであります。ルーンとは一種の術を組み込む術式でようは魔法という名のプログラムを組み込んでる最中なのだ。

「組み込んだらレバーに取り付けてて完成でありますよ!」

「どれくらいで完成するの?」

「今日中には完成するでありますよ!」

「頼もしいわベルちゃん!」

「えっへんであります!姫さま!」

ベルは小さな胸を張ると再びゴーグルをかけると机へ向かいパワーアップアイテムの作業を再開した。

リアとアリシアは邪魔にならないようにベルの研究室を後にした。

「ベルちゃん頑張ってくれてますね!」

「無理しないか心配よ…」

まだ小さな子供だから無理は本当に禁物よ。

私より若いんだから。

「もうすぐカイアナスに着くって!」

涼が言いに来た。

カイアナスは多種族国家の港町でありガネット国王の境界線でもある。
前に指名手配犯にされた時に向かおうとした国だ、港町と言う以外は一切の情報がない。
魔人族が占領してるらしいから急がないと。

「ティラ!」

見えてきたぞ!とルビティラが知らせる。

「本当か!」

俺は秘密基地の扉を開け外に出る。

「ん?あれがカイアナスか?」

「あれ?港町じゃないのか?カイエン?」

「港町の筈だろそりゃってあれ?」

カイアナスは港町のはずだ!なのに砂漠!?
確かに周りは海だが町一つない。

「砂漠ですと!?」

「砂漠?カイアナスは港町の筈ですよ!」

アリシアも確認の為に外へ出るが、港町が砂漠に成り果ててる。一体何があったんだ!?

「見ろ!中央に何かあるぞ!?」

砂漠の真ん中にデカイ塔だ!塔があるぞ!

「あそこに何かあるんだな!ルビティラ行け!」

「ティラ!」

ルビティラは馬車を引きカイアナスへ向かう。

カイアナスに着くと辺り一面砂だらけの砂漠だった、店も家もない。建物はあの中央のデカイ塔だけ。しかも粒子がかなり細かく馬車ではこれ以上は進めない。

「ルビティラここで待っててくれ!」

「ティラ!」

また留守番かよ…いじけるなよお前重いから砂に沈んじゃうぞ。

「ルビティラちゃんは姫様とベルちゃんと待っててね!」

「私も留守番ですか!?」

「当たり前だ!どんだけ危険がわからないんだぞ姫様!」

「コハク心配は無用よ!私も行くの!」

「宝石獣を任せられるのは姫様だけなんだがな~」

「そうですな~姫様なら相棒達を任せる事が出来ますな~」

のぶさん?ルーガル?

「しょ、しょうがないですね!ルビティラちゃん達は私が責任持って守るわ!」

姫様は子供だからな~ちょろいな!

ちょろいですな~!

お前ら…いつから扱い上手くなったつか仲良くなったんだ。

「じゃあ、留守番任せたぞ!」

「ええ、何かあったら通話ジュエルで呼びなさいよ!」

通話ジュエルとは通信用の人口宝石でアリシア姫が組み込んだものだ。

「わかった!じゃあ行ってくる!」

俺達は中央のタワーへ向かう。タワーは間近で見るとかなりデカイ。中はどうなってんだか想像も出来ない。

「間近で見ると石の螺旋階段みたいな形だな…」

「砂嵐までおきてきましたぞ!」

何で砂漠化したかしらないが。

それにここまでの道の乗りで人はおろか他の種族も見当たらなかった。

「町の人達はこの中かな?」

「判らないが入るしかないだろ!」

「行くぞ!」

俺達は中央のタワーに入り込む。

松明の灯りが道を照らしている、石畳の地面にトンネルの中を歩いているとやがて光が見えて来た、出口だ!

「なんだここは?」

出口の先は闘技場の真っ只中だった。

「闘技場??」

「しかも青空だここ建物の中だよな?」

「そこじゃなくて、周りをみなさいよ!」

涼が珍しく突っ込み。 

周りの観客席にいるのは魔人族の兵士達。
そしては戦ってるのは人間同士!?

「危ないとめるぞ!」 

涼は剣を振りかざしている片方の男を止めた。

「止めるんだ!ってあれ?」

男の人は息をしてない!?体だけ動いてる??

「なんだよこれ?抜け殻になってるぞ!」

カイエンが声を上げた。

「抜け殻だって!」

「俺はデュラハンだからな魂とか判るんだよ」

カイエンの話では体は生きているが魂が入ってないらしい。じゃあ何で動いてるんだよ。

「何故動いてるんだ?」

「判らん…魂だけが無いなんて…」

俺達が議論していると。

「俺のエンターテイメントを邪魔してるのはどいつだ?」

あん?誰だよ!

闘技場の1番上の客席になんかメソポタミア文明みたいな格好したやつがいた、黒い一本角を生やしている。

「何だお前は!」

「控えろ王の御前だ!」

は?王だあ?何処にいるんだよ??

一本角を生やした男が蝙蝠みたいな翼を生やして俺達の元へ降りて来た。

「お前は一体?」

「無礼な奴だ!俺は魔界屈指の名門貴族にして魔王軍の第5部隊を任されてる南の魔王!ヴァンデスト様だ!」

「南の魔王!?」

「魔王は一人じゃないのかよ!」

「魔王軍は魔界を滑る頂点の大魔王陛下の為の部隊、俺はその配下で南を任されている魔王の一人だ!」

親玉に使えてる魔王って…見るからに普通じゃない…邪気も半端ないし。

「お前が町の人達を消して砂漠にしたのか!」

「つまらない町だったからな!俺好みのユートピアに直しただけさ!」 

「町の人達は!?」

「死んではいないが女以外は全て魂はあそこだ!」

ヴァンデストの指の先の城。あそこに囚われた人達の魂があるのか?

「何でも魂を使って新たな宝石の材料にするらしいからな、心優しい俺は提供してやるのさ!」

「この野郎!魔王だか何だかしらんが!お前を倒せばここは戻るんだな?」

「やれるものならな!」

ヴァンデストは指を鳴らすと闘技場から魂を抜かれた男達がゾロゾロと出てきた。
みんな武器持ってるし!!

「何の真似だ!?」

「お前らの相手はこの愚民で十分だ!俺は忙しいんでな!」

ヴァンデストは翼を生やし飛び上がる。

「あ、待ちやがれ!」

「卑怯だぞ!降りてこい!」

「俺は魔王だ!卑怯は当たり前だ!」

ヴァンデストは城の方へ消えた。

「あのキザ野郎!」

「涼!来るぞ!」

抜け殻にされた人達が武器を振りかざしてきた。
まずい、いくらなんでも人は攻撃出来ない。
俺達はとりあえず剣を引き抜き防いで弾く。

「離さんか!」

「凄い力だ!」

「魂が無いからリミッターも外れてやがる」

生き物は絶対に100パーセントの力を出さない様に脳がリミッターをかけて止めている。それが外れているなら身体にかかる負担なんか即死レベルの負担だ。

「痛い痛い!」

「イヤーお尻触らないで!」

ばちん!

「僕なわけないだろ!」

あーもうラチあかない。

俺は人口宝石を宝救剣にはめてグリップを引っ張ると黄色い煙の刃を放つ。

ブーブー!

刃は爆発して汚い黄色い煙が充満する。

「うわ!臭い!」

「オナラジュエルか!んぐ!」

「鼻がイカレる!?」

「臭え!身体どこいく!?」

「.°(ಗдಗ。)°.」

カイエンの身体は頭を落として走り出す。

「何で使ったんだ!」

「んぐ!臭いで怯むかと!」

あら?怯んでないし…

「魂ないのに臭いが効くか馬鹿かお前は!」

カイエンは頭をぴょんぴょんし怒鳴る。
確かに神経繋がってないんじゃ効くわけないか!

「あ!そうだ!」

リアは煙から飛び出すとベルの話で思いついた人口宝石を取り出してはめ込みグリップを引っ張り、剣を地面に刺した。

地面から電気ショックが走り抜け殻達全てに当たると抜け殻達は皆変な動きを始めた。

「た、助かった…」

「リアちゃん何したんだ?」

「はい、生き物は電気信号で動いてるとベルちゃんが教えてくれて、この電気ショックジュエルを使ったんです!」

成る程な電気信号を狂わせた訳な!魂無くとも身体は動いているなら電気信号は発してる訳か!

「リア殿賢い!」

「どっかのお馬鹿とは違うな~」

「悪かったな…」

全くお粗末な奴だなもう。
俺達は今のうちにヴァンデストの跡を追っていく。
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