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第10話 今の勇者と昔の勇者

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何故こんな事に…

俺達は黒の森に入り最後の仲間を探していたのだが、会っちゃいけないやつに会ってしまった。

デュラハン…それは有名な首無しの騎士と言われているアンデット。人の魂を狩るために現れると言われているヤバイ怪物である。

「まあ、ゆっくりしていってくれ!」

何故かデュラハンにもてなされている俺達…ここはデュラハンの丸太小屋。

「冷めないウチにお茶をのんでくれや」

「い、いただきます…」

「「「いただきます…」」」

毒とか入ってないよな…

俺達が茶をすするとデュラハンもカップを片手にお茶を飲む。が…首の無い胴体の頭があるはずの場所の穴に注いでいる。

ブーーーーーー!?

俺達四人は吹いてしまった。

頭で茶をのまないのかよ!?ホラー過ぎてマジ怖いわ!

「うわ、汚いな!俺のお茶は不味くないぞ!」

「アンタの飲み方に皆んなビビってるんだ!」

コハクは声を上げた。

やっぱこの人は人じゃないんだ…

我輩まだ死にたくはないぞ…

皆んなビビってる、そりゃ頭と身体が離れて普通に生きてる怪物が目の前にいればそりゃビビるって。

「あははは!悪い悪い、何せ客なんかこんな所に来ないからな!」

確かにこんな怪物がいれば人なんかこないよな絶対。

「で、こんな所に何ようだ?」

「俺達は人探しだ」

「人探し?ここには人間族なんかいないぞ」

「居ないのか!?」

じゃあ何で勇者石はこの森を指したんだよ。

「居るのは俺達アンデット族くらいだな~」

やはりアンデット族の住処になっていたかこの森は…

アンデット族は言葉通りの怪物の種族だ、ゾンビとか喋る骨にデカイ蝙蝠の魔物とかそういう類を全てアンデットと纏めている。

「帰るか?」

「でも真っ暗闇ですし」

「帰り道も分からないですぞ」

「無駄足だったな全く…」

勇者石一体どうなってんだよ、もうこの森には反応した奴はいないのか?

「いや、もうすぐ夕方だ明るくなってくるぜ」

は?何言ってるんだあんた?

デュラハンの男は自分の頭片手に窓を開けた。
外はやはり真っ暗闇じゃん。

「見てろよ!」

俺達は窓の外を見る。

あれ?だんだん明るくなってきた?

黒くなっていた木がぽわっと光始めた。

「何だよこれ」

「これは…」

「凄い綺麗」

「蛍の光のようですな!」

黒い森は淡い光がそこら中で始まりそこはさながら昔の街灯のロウソクと同じだった。

「夕方になると貯め込んだ光をああやって放って辺りを照らすんだ」

「確かにこりゃ明るい!」

木だけじゃない周りのキノコや岩まで淡く光ってるコレは幻想的な光だ!

「凄いだろ!黒の森は呪いの森って言われているが実際は夜光植物の森なんだ」

夜光植物だって!夜光植物とは次の通り夜に光る植物の事だ。洞窟で光るキノコとかと同じと思うがまるで違う。
夜光植物は昼間は活動しなく日光ではく月の光をエネルギーにしている。
昼間は基本陽光を集めて夜になると内側を光らせる。月の光は根を広げ夜光植物達をまた増やすという連鎖らしい。

僕は前に母から聞いた。

「じゃあ、必ず災いが起きるというのは」

「大方俺達を目撃したから人間族が勝手にレッテルを貼っただけだろ、それか他の奴が悪戯をしたからだ」

何だそりゃ…結局お化けの仕業かい…人の噂が一人歩きしただけかい。

「じゃあアンタは呪いとかそういうのはないのか?」

「ねえよそんなの!まあ冥界との交信くらいなら出来るがな」

笑いながらおっかない事言うなよ! 

「それと俺はカイエンな!」 

デュラハンは名乗った。

「俺は猿渡涼だ!」 

「僕はコハク」

「私はリアです」

「我輩はルーガルですぞ!」

「俺達はホウキュウジャーだ!」

「は?ホウキュウジャー??」

涼達は一通り説明した。

「お前らが噂の100年振りの勇者だったのか」

やっと分かってもらえた…涼がやたらと特撮だのヒーローだのと訳わからない事を言うから説明が面倒だったのだ。

「我輩達は勇者石に選ばれた勇者である!」

「何で蜥蜴が混じってるんだ?」

「がくっ!」

ルーガルはズッコケてしまった。

「我輩は蜥蜴ではないリザードマンだ!」

「リザードは蜥蜴って意味だぞ、わかってをんのかお前?」

「カイエン殿だって首無しではないか!」

「俺はデュラハンだ、首無しじゃ只の死体だろ」

馬鹿にしてるだろこの者は絶対に!!

「しかし、お前らが勇者ね~昔の勇者みたいにはなるなよ」

昔の勇者ってあの爺さん蜥蜴が言ってた1世紀前の勇者の事か?

「昔の勇者の事知ってるのか?」

「まあ、俺はデュラハンだ人間と違って死は来ないからな~」

死なないってデュラハンって凄いなオイ…余計にホラーだわ…

「だから100年前の話もしってる…前の勇者は…」

カイエンは深刻な顔になる。 

「どうかしてる連中だった」

え?どうかしてる連中?そういやあの爺さん蜥蜴もどうしようもない輩とか言ってたな。

「長老様も言っておられましたな」

「先代の勇者ってどんな人達だったんですか?」

「絵本には彼らの事は乗ってはなかったな確か」

「訳の分からない言葉を並べては身勝手し、かつてはそこら中に居た宝石獣達が…捕まり砕かれ道具に加工された…」


えっ!?宝石獣達が…滅んだ理由か??

確かにルビティラ達以外の宝石獣なんか確かに見当たらない。何故滅んだかも俺たちは余り知らない。わかっているのは100年前に魔人族に滅ぼされたって事だけだ。

「勇者伝説に伝わる神獣である宝石獣達を先代勇者達は命を奪ったというのですか!」 

「確かに僕達も宝石獣はおとぎ話の存在と聞いて育ったからな」

「ルビティラちゃんを見た時ハッキリと存在を確信したくらいだから」

「宝石獣達は居ても基本他の種族とは交わる事はないからな…勇者の存在は例外だが」 

宝石獣達は昔は沢山居たが他の種族と関わる事はなく神獣として崇められて居た。例外に俺達みたいに宝石獣に選ばれた勇者だけが宝石獣達と関わり生きたと。

「本来勇者は宝石獣達を束ね悪しき魔物を討伐し数を減らして自然のバランスを保つ者を指すんだ」

「御伽話では確かにそうだったな」

「そうだったのか、それがあの魔人族」

「いや、魔人族は100年前に勇者が召喚されたと同時に現れた存在だ」

え!?魔人族は最初からいなかったのか?ていうか召喚された!?

「ちょっと待て。召喚されたって先代の勇者を含め勇者は皆んな俺みたいに別の世界から来たって言うのか!?」

「確かに御伽話にも悪しき魔物を倒す為に強い力を持つ勇者を呼び宝石獣と共に戦ったってありました。」

「本には無いが僕たちみたいに現存する世界で選ばれた者もいるんじゃないか?」
 
俺以外にも異世界に呼ばれて勇者をしていた奴がいたんだな。

「カイエン殿、魔人族とは具体的に何なんですぞ?」

「1世紀前に突然現れて人々を脅かし宝石獣達を殺しまくり道具にした、そして、その時居た3人の勇者達は…その魔人族に加担したんだ!」 

は?勇者が魔人族に加担したって??つまり寝返った!?

何でだよ!

「勇者が寝返ったというのか魔人族に!」

「どうしてそんな」

「宝救剣は何故そんな悪しき事に使われたのだ!?」

「それは俺も判らない…ただ当時の勇者の剣は善悪も無い代物で資格さえあれば誰でも使えたと伝承があったからな」

「何だよそれ!ヒーローがそんな事するなんて!信じられるかよ!」

信じたく無い…こんなの特撮にもない話だ。

「そして寝返った勇者達に怒り、生き残った宝石獣達は勇者の剣を破壊し資格を剥奪し奴らを生き地獄と元の世界には返さなかった」

「それから100年勇者は現れず、魔人族と危険な魔物が蔓延る世の中になってしまった…ですね。」

確かに俺の世界の人間なら妙な事を考えて金儲けを思いつくかもしれないな。
いやそれともまた別の知らない世界って可能性もあるか…何にしても迷惑極まりない。

「そんな事が…」

「流石に100年も経てば奴らは人間死んでるだろう過去の話だ今は!」

「だが魔人族は数を増やす一方だ」

「宝石獣達を武器に加工する為探していたならこの前の宝石ワニを狙っていたのも納得だ。」 

「ワニの宝石獣だって!奴は先代の勇者の宝石獣の一体だ生きていたんだな」

「なるほどな、宝石獣達は消えて勇者の真実は闇の中で魔人族が増えたから勇者が再び持ち上げられたと」

「ああ、そうだ何せもはやその世代の人間はいないからな噂が一人歩きしいつの間にか世界を救う勇者の話が再び上がって今にいたる」

カイエンがの話が本当なら俺は何でこの世界に呼ばれたんだ?
ていうかルビティラは何で勇者を集めて回ってたんだ?

「これが知ってる全てだ、伝承が残ってる国もあるから慎重にお前達は行動しろよ、出口まで案内する」

この世界の勇者になった俺…先代の悪に寝返った勇者…現実の特撮にはこんな展開はない…悪から正義になるのが通例だ!

昔はどうあれ、今の勇者は俺達だ…
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