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連載
epilogue
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――全てが終わってから、一月ほど経った。
私が提案した魔物の処理……もとい実験場については、王子様によって国王陛下たちとの相談が進んでいるそうだ。
さすがにサイファの存在はごく一部の人にしか話していないようだけど、『あの場で魔物を食い止めれば、各地での被害が減る』という感じで、今は結果待ちだ。
これで世界中の被害が確実に減っていることがわかれば、実験場の建設が現実になるだろう。
場所は最後の戦いの地でもあったツィーラーの街の外れが候補となっている。
さすがに遺跡の地下闘技場はもう使わないほうがいいだろうから、別の開けたところに建ててもらうつもりだ。
せっかく宿泊施設が沢山余っている街なのだし、廃墟にしておくぐらいなら有効活用したほうがいいだろう。
……まあ、利用者は騎士とか傭兵とか戦闘特化の人間に限られてしまうけど。それでも、誰も利用せずに風化していくよりははるかにマシなはずだ。
それに、命が関わる仕事は高給なので、戦う人間は大抵羽振りも良いものだ。廃れたこの街も活性化するでしょう。
王都との貴重な連絡経路であるカールの転移魔術も、現在改良が進んでいる。
上手く固定化ができれば、カールがいなくてもテレポートができる装置になるそうだ。
人員にしろ物資にしろ、王都からの運搬にかかる時間はバカにならないし、これらが成功すれば、ツィーラーの利便性はグンと上がる。
現在は弟子のウィリアムが率先して研究してくれているので、数か月以内には完了する見込みらしい。……本当にあの子は人間を辞めてるわよね。
顔を隠すのをやめたせいか、性格も大分明るくなってきたし。主人公は何もしていないのだけど、良い方向へ進んでくれてよかったわ。……破壊魔っぷりぐらいは、もう目をつぶってあげよう。うん。
そんなこんなで色々と進んでいるわけだけど、私たち討伐部隊は『対策部隊』と名前を変えて、相変わらずツィーラーで戦っている。
実験場建設の策が受け入れられようがられなかろうが、魔物が出るのは変わらないからね。
もっとも、今までのように突然奇襲されるような事態は格段に減ったし、強い魔物が出る時は事前に『通知』がくるので、こちらも相応の準備で臨める。おかげで、ここ最近の魔物による被害はほぼゼロだ。
これだけでも、かつてとは比べ物にならないほど素晴らしい結果だろう。
「……とは言っても、そろそろ家に帰りたいのよねぇ」
「さすがに毎日戦ってたら飽きた?」
今日も今日とて、街の外れで魔物を殴り飛ばしながらため息をつく。
私の隣では、ジュードが別の一体を斬り捨てながら苦笑している。彼が戦ってたのは割と強めの魔物なんだけど、返り血一滴浴びていないのだから、いかに戦い慣れているかが窺えるわ。
「戦うのはいいのよ、日課だし。だけどほら、両親に挨拶に行かないと、いつまでたっても結婚できないじゃない」
「あ」
首にかかった鎖をチラリと見せれば、ジュードの頬に朱が走った。
サイファを倒した日にもらった指輪は、傷をつけないようにネックレスにして肌身離さず持ち歩いている。
部隊長の王子様にも報告しているから、一応王族公認の婚約者なのだけど、さすがに親に黙って式を挙げるわけにはいかないからね。
このままツィーラーの街で対策部隊として戦い続けていたら、死ぬまで『婚約者』で終わりそうだ。
「婚約者ってのも悪くないけどね。できればちゃんと『妻です』って名乗りたいじゃない?」
「何年も戻らないのは困るけど、二・三か月なら里帰りしてもらっても全然大丈夫だぞ~」
「うむ。その間は我らがこちらを引き受けよう。なに、そろそろ新人たちにも実戦訓練をさせるべきだと思っていたところだ!」
少し離れたところで戦っていたダレンとディアナ様も、それぞれ魔物を斬り飛ばしながら答えてくれる。
近衛騎士ということで別任務の多いダレンは、旅に出ていた頃よりも同行することが減ってしまった。
それでも、時間を見つけてはこっちの処理に力を貸してくれたり、王都で仕入れた情報を提供してくれたりするので、仲の良さは以前とあまり変わっていない。
逆にディアナ様は、騎士団の魔物対策部門の統括役に任命されたらしく、ほぼずっとツィーラーで一緒に戦ってくれている。
その雄々しく、勇ましい戦いぶりから、新人騎士たちの憧れの存在だ。激務のツィーラー勤めが人気なのも、きっと皆ディアナ様の勇姿を見たいからでしょうね!
私はジュードの婚約者だけど、世界で一番尊敬できる人は今もずっとディアナ様だ。
あのお体に近付くことはそろそろ無理だと気付いているけど、せめて志は共にしたいと思っている。
「ディアナ様が引き受けて下さるなら、ここを離れても大丈夫かしらね」
「そうだね……しかし参ったな。ご挨拶の正装って、騎士団の制服でも大丈夫かな……確か新品がもう一着あったはず……」
ジュードはうんうん唸りながらも、近付いてくる個体を一太刀で斬り捨てている。
魔物を倒すことよりも両親に挨拶に行くことのほうが難しいというのだから、私たちらしいわよね。
「ねえ、ちょっといい?」
「うわっ!?」
そうこう話していたら、突然ジュードの影からにゅっと人間の顔が飛び出した。
亜麻色の髪に白いベールをかぶった、大人しそうな容貌の美少女。……というか、私と同じ顔の【無形の悪夢】こと聖女様である。
「びっくりした……お嬢様、僕の影を出入口にしないで下さいと前にも言った気がするんですけど」
「面積が広い影のほうが〝通り〟やすいのよ。貴方が日々可愛がってる女は、元々私の体なんだから、少しは大目にみなさいよ」
「うぐ……」
色々あって以降、聖女様ともこうして普通に話せる仲になってしまっている。彼女も体をとられたことはもういいのか、非常に軽い感じだ。
そして、どうやらジュードは聖女様には弱いらしい。かつての負い目なのか、それとも私の体のせいなのかは知らないけど。まあ、浮気ではなさそうなので、私も面白く見守っている。
「……アンジェラ、何か変なこと考えてない?」
「何もないわよ。それで聖女様、今日は何の用事?」
「サイファがそろそろ第三進化体を出して消化したいっていうから、意見を聞きにきたのよ」
「あら、魔素ゴミ溜まってたのね」
日々魔物は沢山倒しているつもりだけど、やっぱり世界各地に放っていたものを一か所で処理するとなれば、ゴミも溜まりやすいみたいだ。
チラッと視線を向ければ、ディアナ様は勇ましく、ダレンはちょっと面倒くさそうな顔で私たちの話を聞いている。
「強い魔物を出すのは了解したわ。けど、意見って何かしら」
「えっと、『蜂とカマキリとバッタとどれがいい?』だそうよ」
「虫ネタはいい加減やめなさい」
ダレンの顔がますます嫌そうになったじゃない。第三進化体イコール虫っていうネタは、そろそろ私もお腹いっぱいだわ。
「死骸が簡単に手に入るから仕方ないのよ」
「だったら植物とか、もっと簡単に素材が手に入るモノがあるでしょう。とにかく、虫は私も嫌」
「じゃあ自分で交渉しなさいよ。そこにいるから」
聖女が顔を横へ動かせば、数十メートル離れた先で白っぽい男が手をふっている。……こちらもこちらで軽いわね、【無垢なる王】よ。魔物の創造主という威厳が微塵もないわ。
「じゃ、私先に行ってるから」
「うぃーす」
とぷん、とジュードの影に潜った聖女は、数秒も経たない内にサイファの隣に現れた。
過去には色々とあった彼女も、今は幸せそうで何よりだわ。
「植物の魔物か……僕はあの歩く樹しか知らないなあ」
「これから新種を作ってもらうのよ。虫よりはマシ」
「確かに」
曲剣をしまったジュードが、私の肩を抱き寄せる。仲間から婚約者になっても変わらない、力強くて安心できる腕だ。
これから強い魔物が出てくるみたいだけど、彼と一緒なら問題もないわね。
「おーいアンジェラー! 王都から、戦闘体験希望の魔術師たちが来たぞ」
「あら、ナイスタイミング」
呼ばれた声にふり返れば、相変わらず真っ白なノアを先頭にしてローブ姿の人々がわらわらとこちらへ向かってきている。中には、すっかり顔を出したウィリアムやちょっと疲れた様子のカールの姿も見てとれた。
人外魔術師たちも加わるなら、第三進化体なんてすぐに倒して終われそうだわ。
「これから強い魔物作ってもらうから、協力してくれるー?」
「わーい! やりますやります!!」
「ウィル、お前は本当に自重しろよ……」
サイファたちも彼らの姿に気付いたようだし、これなら今日は予定よりも多くの魔素ゴミを消化できそうね。
そしてその分、世界は平和になっていく。うんうん、喜ばしいことだわ。
「…………ね、アンジェラ」
「うん。ちゃちゃっと終わらせて、今日は里帰りの準備をしましょうね」
「ぐっ…………そ、そうだね。そっちのが大事だ」
「何? いちゃいちゃしたかった? それは今から出てくる魔物を倒して、体力が残ってたらいいわよ」
「速攻で斬り捨てるよ、任せて」
彼の黒い瞳が、スッと殺戮兵器の鋭いそれに切り替わる。
強くて格好良いけど、私の婚約者は相変わらず実にチョロいわ。悪い女に騙されなければいいんだけど……いや、私がいるんだから、その心配はもういらないか。
「さっ、愛のため世界平和のため。元気に討伐いきましょうか!」
私も右手に握ったメイスをぶんっと掲げて宣言する。
おう、と隣からも背後からも元気な返事。どれだけ強い魔物が出てきても、もう世界が危機に陥ることなんてないだろう。
転生……はしてなかったけれど、私は脳筋聖女様。
今日も明日も、大好きな人たちとともに、元気に戦って参ります!
私が提案した魔物の処理……もとい実験場については、王子様によって国王陛下たちとの相談が進んでいるそうだ。
さすがにサイファの存在はごく一部の人にしか話していないようだけど、『あの場で魔物を食い止めれば、各地での被害が減る』という感じで、今は結果待ちだ。
これで世界中の被害が確実に減っていることがわかれば、実験場の建設が現実になるだろう。
場所は最後の戦いの地でもあったツィーラーの街の外れが候補となっている。
さすがに遺跡の地下闘技場はもう使わないほうがいいだろうから、別の開けたところに建ててもらうつもりだ。
せっかく宿泊施設が沢山余っている街なのだし、廃墟にしておくぐらいなら有効活用したほうがいいだろう。
……まあ、利用者は騎士とか傭兵とか戦闘特化の人間に限られてしまうけど。それでも、誰も利用せずに風化していくよりははるかにマシなはずだ。
それに、命が関わる仕事は高給なので、戦う人間は大抵羽振りも良いものだ。廃れたこの街も活性化するでしょう。
王都との貴重な連絡経路であるカールの転移魔術も、現在改良が進んでいる。
上手く固定化ができれば、カールがいなくてもテレポートができる装置になるそうだ。
人員にしろ物資にしろ、王都からの運搬にかかる時間はバカにならないし、これらが成功すれば、ツィーラーの利便性はグンと上がる。
現在は弟子のウィリアムが率先して研究してくれているので、数か月以内には完了する見込みらしい。……本当にあの子は人間を辞めてるわよね。
顔を隠すのをやめたせいか、性格も大分明るくなってきたし。主人公は何もしていないのだけど、良い方向へ進んでくれてよかったわ。……破壊魔っぷりぐらいは、もう目をつぶってあげよう。うん。
そんなこんなで色々と進んでいるわけだけど、私たち討伐部隊は『対策部隊』と名前を変えて、相変わらずツィーラーで戦っている。
実験場建設の策が受け入れられようがられなかろうが、魔物が出るのは変わらないからね。
もっとも、今までのように突然奇襲されるような事態は格段に減ったし、強い魔物が出る時は事前に『通知』がくるので、こちらも相応の準備で臨める。おかげで、ここ最近の魔物による被害はほぼゼロだ。
これだけでも、かつてとは比べ物にならないほど素晴らしい結果だろう。
「……とは言っても、そろそろ家に帰りたいのよねぇ」
「さすがに毎日戦ってたら飽きた?」
今日も今日とて、街の外れで魔物を殴り飛ばしながらため息をつく。
私の隣では、ジュードが別の一体を斬り捨てながら苦笑している。彼が戦ってたのは割と強めの魔物なんだけど、返り血一滴浴びていないのだから、いかに戦い慣れているかが窺えるわ。
「戦うのはいいのよ、日課だし。だけどほら、両親に挨拶に行かないと、いつまでたっても結婚できないじゃない」
「あ」
首にかかった鎖をチラリと見せれば、ジュードの頬に朱が走った。
サイファを倒した日にもらった指輪は、傷をつけないようにネックレスにして肌身離さず持ち歩いている。
部隊長の王子様にも報告しているから、一応王族公認の婚約者なのだけど、さすがに親に黙って式を挙げるわけにはいかないからね。
このままツィーラーの街で対策部隊として戦い続けていたら、死ぬまで『婚約者』で終わりそうだ。
「婚約者ってのも悪くないけどね。できればちゃんと『妻です』って名乗りたいじゃない?」
「何年も戻らないのは困るけど、二・三か月なら里帰りしてもらっても全然大丈夫だぞ~」
「うむ。その間は我らがこちらを引き受けよう。なに、そろそろ新人たちにも実戦訓練をさせるべきだと思っていたところだ!」
少し離れたところで戦っていたダレンとディアナ様も、それぞれ魔物を斬り飛ばしながら答えてくれる。
近衛騎士ということで別任務の多いダレンは、旅に出ていた頃よりも同行することが減ってしまった。
それでも、時間を見つけてはこっちの処理に力を貸してくれたり、王都で仕入れた情報を提供してくれたりするので、仲の良さは以前とあまり変わっていない。
逆にディアナ様は、騎士団の魔物対策部門の統括役に任命されたらしく、ほぼずっとツィーラーで一緒に戦ってくれている。
その雄々しく、勇ましい戦いぶりから、新人騎士たちの憧れの存在だ。激務のツィーラー勤めが人気なのも、きっと皆ディアナ様の勇姿を見たいからでしょうね!
私はジュードの婚約者だけど、世界で一番尊敬できる人は今もずっとディアナ様だ。
あのお体に近付くことはそろそろ無理だと気付いているけど、せめて志は共にしたいと思っている。
「ディアナ様が引き受けて下さるなら、ここを離れても大丈夫かしらね」
「そうだね……しかし参ったな。ご挨拶の正装って、騎士団の制服でも大丈夫かな……確か新品がもう一着あったはず……」
ジュードはうんうん唸りながらも、近付いてくる個体を一太刀で斬り捨てている。
魔物を倒すことよりも両親に挨拶に行くことのほうが難しいというのだから、私たちらしいわよね。
「ねえ、ちょっといい?」
「うわっ!?」
そうこう話していたら、突然ジュードの影からにゅっと人間の顔が飛び出した。
亜麻色の髪に白いベールをかぶった、大人しそうな容貌の美少女。……というか、私と同じ顔の【無形の悪夢】こと聖女様である。
「びっくりした……お嬢様、僕の影を出入口にしないで下さいと前にも言った気がするんですけど」
「面積が広い影のほうが〝通り〟やすいのよ。貴方が日々可愛がってる女は、元々私の体なんだから、少しは大目にみなさいよ」
「うぐ……」
色々あって以降、聖女様ともこうして普通に話せる仲になってしまっている。彼女も体をとられたことはもういいのか、非常に軽い感じだ。
そして、どうやらジュードは聖女様には弱いらしい。かつての負い目なのか、それとも私の体のせいなのかは知らないけど。まあ、浮気ではなさそうなので、私も面白く見守っている。
「……アンジェラ、何か変なこと考えてない?」
「何もないわよ。それで聖女様、今日は何の用事?」
「サイファがそろそろ第三進化体を出して消化したいっていうから、意見を聞きにきたのよ」
「あら、魔素ゴミ溜まってたのね」
日々魔物は沢山倒しているつもりだけど、やっぱり世界各地に放っていたものを一か所で処理するとなれば、ゴミも溜まりやすいみたいだ。
チラッと視線を向ければ、ディアナ様は勇ましく、ダレンはちょっと面倒くさそうな顔で私たちの話を聞いている。
「強い魔物を出すのは了解したわ。けど、意見って何かしら」
「えっと、『蜂とカマキリとバッタとどれがいい?』だそうよ」
「虫ネタはいい加減やめなさい」
ダレンの顔がますます嫌そうになったじゃない。第三進化体イコール虫っていうネタは、そろそろ私もお腹いっぱいだわ。
「死骸が簡単に手に入るから仕方ないのよ」
「だったら植物とか、もっと簡単に素材が手に入るモノがあるでしょう。とにかく、虫は私も嫌」
「じゃあ自分で交渉しなさいよ。そこにいるから」
聖女が顔を横へ動かせば、数十メートル離れた先で白っぽい男が手をふっている。……こちらもこちらで軽いわね、【無垢なる王】よ。魔物の創造主という威厳が微塵もないわ。
「じゃ、私先に行ってるから」
「うぃーす」
とぷん、とジュードの影に潜った聖女は、数秒も経たない内にサイファの隣に現れた。
過去には色々とあった彼女も、今は幸せそうで何よりだわ。
「植物の魔物か……僕はあの歩く樹しか知らないなあ」
「これから新種を作ってもらうのよ。虫よりはマシ」
「確かに」
曲剣をしまったジュードが、私の肩を抱き寄せる。仲間から婚約者になっても変わらない、力強くて安心できる腕だ。
これから強い魔物が出てくるみたいだけど、彼と一緒なら問題もないわね。
「おーいアンジェラー! 王都から、戦闘体験希望の魔術師たちが来たぞ」
「あら、ナイスタイミング」
呼ばれた声にふり返れば、相変わらず真っ白なノアを先頭にしてローブ姿の人々がわらわらとこちらへ向かってきている。中には、すっかり顔を出したウィリアムやちょっと疲れた様子のカールの姿も見てとれた。
人外魔術師たちも加わるなら、第三進化体なんてすぐに倒して終われそうだわ。
「これから強い魔物作ってもらうから、協力してくれるー?」
「わーい! やりますやります!!」
「ウィル、お前は本当に自重しろよ……」
サイファたちも彼らの姿に気付いたようだし、これなら今日は予定よりも多くの魔素ゴミを消化できそうね。
そしてその分、世界は平和になっていく。うんうん、喜ばしいことだわ。
「…………ね、アンジェラ」
「うん。ちゃちゃっと終わらせて、今日は里帰りの準備をしましょうね」
「ぐっ…………そ、そうだね。そっちのが大事だ」
「何? いちゃいちゃしたかった? それは今から出てくる魔物を倒して、体力が残ってたらいいわよ」
「速攻で斬り捨てるよ、任せて」
彼の黒い瞳が、スッと殺戮兵器の鋭いそれに切り替わる。
強くて格好良いけど、私の婚約者は相変わらず実にチョロいわ。悪い女に騙されなければいいんだけど……いや、私がいるんだから、その心配はもういらないか。
「さっ、愛のため世界平和のため。元気に討伐いきましょうか!」
私も右手に握ったメイスをぶんっと掲げて宣言する。
おう、と隣からも背後からも元気な返事。どれだけ強い魔物が出てきても、もう世界が危機に陥ることなんてないだろう。
転生……はしてなかったけれど、私は脳筋聖女様。
今日も明日も、大好きな人たちとともに、元気に戦って参ります!
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