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第一部 第一章

21話

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 エスト村でひと悶着あったものの無事にマスイの街に戻って来たエルクたちは依頼達成の報告をするために冒険者ギルドを訪れていた。

 冒険者ギルドの中にルリを連れて入るとエルクは早速、受付カウンターで仕事をしているはずのキイラを探した。

「お、いた、いた。キイラの列は結構混んでいるな。大人しく空いている列に並ぶか」

 エルクはキイラの列に並ぶのを諦めてルリを連れて空いている受付の列に並んだ。

 エルクたちの並んだ受付の列は余り混んでいなかった為、直ぐにエルクたちの番が来た。

「いらっしゃいませ。本日はどの様なご用件でしょうか。依頼の受領ですか、依頼の達成報告ですか、それとも……依頼の申し込みではありませんよね。すいません。それで、ご用件は」

 担当の受付嬢がエルクたちの服装を見て依頼の申し込みを否定すると冒険者ギルドを訪れた用件を聞いて来た。

「え、ああ、俺達は依頼の達成報告をしに来たんだけど、一先ず村長のサイン入りの依頼書とゴブリン十体の右耳が入った袋だ。確認してくれ。それと、今回の依頼の途中で幾つかゴブリンの巣を潰して来たからそれについても話したいんだけど。大丈夫か」

 エルクが色々な報告をしたので受付嬢は目を回して少しの間、アワアワ混乱していたがすぐに持ち直した。

「は、はい。わかりました。先ずは依頼達成の確認をしてきますので少しお待ちください」

 受付嬢はそう言うとカウンターの奥に行き、少しすると小さな袋を持って戻って来た。

「依頼達成を確認しました。こちらが今回の依頼の報酬の五万五千円となりますお受け取り下さい」

 エルクは受付嬢から受け取った袋の中身を確認した。

「ああ、丁度だな」

 エルクは受け取った報酬を無限収納にしまった。

 すると、受付嬢がエルクに話しかけて来た。

「それでは、先程のゴブリンの巣の件についてギルドマスターに聞いて来ますので暫くあちらの席で待っていて貰ってもよろしいでしょうか」

「ああ、わかった」

 エルクとルリは、カウンターの奥にある階段を勢いよく駆け上がって行く受付嬢の姿を見送りながら彼女にすすめられた席に座って彼女が戻って来るのを待った。

「エルクさん、ルリさん、ギルドマスターがギルド長室で話を聞くとのことなので、これからギルド長室までお連れします」

「ああ、わかった」

 エルクとルリは、受付嬢に連れられてギルド長室を訪れた。

「ギルドマスター、エルクさんとルリさんをお連れしました」

「ええ、入って来て下さい」

 エルクとルリがギルド長室に入るとそこには金髪を肩甲骨の辺りまで伸ばし耳が長くとがったエルフの女性がいた。

 ギルドマスターのエルフの美人さんにエルクが少し見とれていると真横にいたルリがふくれっ面でエルクの脇腹をつねった。

「いやいや、えっと、エルクさんにルリさんでしたか、わざわざこんな所まで来て貰っちゃってすいませんね」

 ギルドマスターがエルクたちに話しかけると、ギルドマスターの脇に控えていた受付嬢が咳払いをしてギルドマスターに注意をした。

「あ、まだ自己紹介をしていなかったね。私はギルドマスターのビアンカ、そして、君たちをここまで連れて来た彼女が、この冒険者ギルドマスイ支部のサブギルドマスターであるスーシャだ。さてと、自己紹介はこの位で良いだろう。それじゃあ、話を聞こうじゃないか」

 それからエルクはビアンカにエスト村で起こっていた事と四つのゴブリンの巣を跡形も無く潰した事、巣の一つにゴブリンキングとゴブリンジェネラルがいた事を話した。

「そうか、まさか既に攫われた村娘たちを村人たちが救出に向かっていて、しかも、その村人たちもゴブリンたちに攫われてしまっていたとは、しかも、ゴブリンキングとゴブリンジェネラルまでいたとは。これは完全にアイアン級の依頼ではないな。しかし、結果的にではあるが攫われた村娘たちは只のゴブリンだけしかいない巣にいたと言うことだし、ギルドの規則として依頼のランク的にはギリギリではあるがアイアン級の範疇におさまる。だからランクを修正して依頼料をあげる事は出来ない。すいません」

「いえいえ、ギルドの規則じゃあ仕方ありませんよ」

 エルクがビアンカにそう言うとビアンカは申し訳なさそうにしていたが、直ぐに姿勢を正してエルクに話しかけた。

「しかし、このまま何もなしと言うのは申し訳なさすぎる。と言うことでエルクさん、あなた方の倒したゴブリンキングを含めたゴブリンの死体は持って帰って来ましたか。もしあるのなら素材の買取料に少しではありますが色を付けさせていただき、エルクさんとルリさんはギルドランクをシルバー級に他のみなさんはブロンズ級にあげたいと思います」

「え、俺とルリがシルバー級でブロンたちがブロンズ級に上がるんですか。ありがとうございます。あ、でも俺は無限収納を持っているからゴブリンの死体いっぱいありますよ。良いんですか」

「ええ、構いません。ゴブリンの死体はこの後スーシャにギルドの裏にある解体所の倉庫に案内させますのでそこの倉庫に出して下さい。スーシャ、お願いね」

「はい。わかりました。それではエルクさん、ルリさんご案内致します」

 そしてエルクとルリはスーシャさんに案内されてギルド裏の解体所へと向かった。 

 解体所へと案内されたエルクとルリはスーシャさんに解体所の所長を紹介されていた。

「エルクさん、ルリさん、こちらの方がこの解体所の所長を務めているデボンさんです。今後エルクさんたちがこのマスイの街で活動して行く限りデボンさんとは会う機会が多くあると思いますので覚えておいて下さいね」

「おう、坊主ども、今、紹介された解体所所長のデボンだ。これからよろしくな。それで、今日はどうしたんだ。素材でも卸に来たのか」

「はい。ゴブリンの解体をお願いしに来ました」

「なに、ゴブリンだと、数はどの位だ」

「そうですね。大量です」

「大量だぁ。まあ良い。取り敢えずそこの倉庫に出してくれ」

 エルクはデボンさんに言われた通りに指定された倉庫に大量のゴブリンやゴブリンの上位種、そしてゴブリンキングの死体を出した。

「な、何じゃこりゃあああ!!多いなんてもんじゃねえぞ。ゴブリンだけじゃねえ。その上位種にキングまでいるじゃねえか。おい坊主、これは全部お前たちが倒したのか」

「え、ああ、全部俺たちが倒した」

「そ、そうか、そ、そうだな。この量だと査定には二日ほど欲しいがそれで良いか」

「ああ、大丈夫だ」

 そしてエルクとルリはゴブリンの素材を解体所の倉庫に預けるとギルドを出て人気のない路地裏から箱庭に戻り、その日は小屋でルリとゆっくり過ごして眠りに就いた。                     

 
         

 
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