記憶喪失の逃亡貴族、ゴールド級パーティを追放されたんだが、ジョブの魔獣使いが進化したので新たな仲間と成り上がる

グリゴリ

文字の大きさ
上 下
20 / 91
第一部 第一章

20話

しおりを挟む
 村長邸で夕食をご馳走になることになったエルクたちは村長邸のリビングにみんな集まって食事をしていると徐々に洞窟で助けた村人たちやブロンたちが助けた村人たちが集まって来て宴会の様な状態になっていた。

「村長、改めて思うけど大勢で食べる食事は格別だな。こいつらと出会ってから改めて仲間の大切さっていうやつを実感してさ。今思うと前にいたパーティーでは俺って孤立してたんだなって、一人だったんだなって気付かされるんだよな。だからさ、俺はこいつらに結構感謝してるんだよね。まあ、こいつらに俺の気持ちが伝わっているかどうかはわからないけどな」

 エルクは、お酒を飲んで酔いつぶれているルリやブロン一家を見ながら村長に語りかけた。

「そうですな。気持ちと言うのは言葉にして相手に伝えなければ決して相手に伝わる事はないです。先ずは、エルクさんのその気持ちを包み隠さずみなさんに伝えてみることですな。私が見たところちゃんと伝えればみなさんは答えてくれると思いますよ。まあ、自分勝手な考えで一方的に気持ちを伝えるのは論外ですが」

「ふん、村長、それはあの青年の村人の事を言っているのか」

「ええ、あやつももう少し大人になってくれると良いのですがね」

 そして、宴会状態となった食事は夜中の十二時にお開きとなった。

 食事を終えたエルクはブロン一家を起こして箱庭の中に戻らせると未だ眠っているルリを抱えて今夜の寝床として借りた部屋へと戻った。

「さてと、俺も寝るかな」

 エルクは眠りに就く前に部屋の入り口である戸の前と窓の前に仙術の精霊樹の束縛陣を設置して侵入者を束縛するようにセットするとベッドに入り眠りに就いた。

 エルクが眠りに就いてから数時間が経ち時刻は深夜の三時を過ぎた頃、一つの人影が村長邸に近づいて来た。

「ふふふ、ルリさん待っててね。今からオレが迎えに行くからね。オレの家に戻ったら楽しくて気持ちいい事いっぱいしようね」

 その男は気持ち悪い笑みを顔に張り付けながら村長邸の裏手に回り裏口から中に侵入した。

 男は順調に村長邸の二階まで上がり遂にエルクとルリが眠っている部屋の前までやって来た。

 男はズボンのポケットから縄と針金を取り出して部屋に侵入する準備を整えると身を屈めて針金を鍵穴に差し込み音がならない様に慎重に数回針金をカチャカチャと動かして鍵を開けると戸を開け静かに部屋の中に足を踏み入れた。

 しかし、男が足を踏み入れた瞬間、足元が鈍く光り出しそこから魔法陣らしきものが現れその瞬間植物のツタの様な物が男の体や口に絡みついて来て男は拘束され身動き一つ取れなくなった。

 翌朝、エルクとルリが殆ど同時に眠りから覚めて目をこすりながら上半身を起こすと目の前には植物のツタが体中に絡みついて身動きが取れなくなり色々な汚物を垂れ流して静かに泣いている救出時にエルクに絡んで来た青年の姿があった。

「え~と、お前そんな所で汚物垂れ流して何をやっているんだ」

 エルクが青年に尋ねるが青年は口をツタで塞がれているため話す事が出来ず「ん、ん、ん~」としか声を出す事が出来なかった。

 エルクとルリがこの状況をどうしようかと悩んでいると朝食の時間になったのか村長がこの部屋までエルクとルリを呼びに来た。

「エルクさん、ルリさん、朝食の準備が出来たので下のリビングまで」

 村長がそこまで言って戸を開けると自分の目に飛び込んで来た余りにも酷い光景に村長は言葉を失ってしまった。

「あ~、えっと、村長、一応言っておくけどこの状況は俺たちがやった訳じゃないぞ。俺たちが起きたら既にこう言う状況になっていたんだ。正直、俺たちも困惑している。まあ、大体は察しがつくけどな」

「ええ、私にも大体察しは付きます。この度は私たちの村の者が大変な失礼をあなた様方にはたらいてしまい誠に申し訳ありません」

 村長が正座をしてエルクたちに謝罪をしたのでエルクとルリは慌ててベッドから出て青年を避けながら村長の下へ行き直ぐに立たせた。

「何も村長が謝らなくて良いんだよ。謝るなら彼が謝るのが筋ってもんだよ」

 その後、この青年の両親を彼の家から呼んで来て一緒に彼をツタを外して下ろし引き取ってもらった。

 勿論、彼がまき散らした汚物は彼の両親が綺麗に片付けてくれた。

 彼は両親に引き取られて村長邸を出て行く時も態度を改めることなく終始「ルリさんに相応しいのはこの俺だ」と豪語していた。

 青年との一軒にひと段落したエルクとルリは村長邸にて朝食をご馳走になっていた。

 因みにブロン一家は今朝は箱庭で食事をするそうでここにはいない。

 朝食を食べ終えたエルクとルリは部屋に戻ると荷物をまとめてマスイの街へと帰る準備をしていた。

「エルクさん、ルリさん、この度は我々を助けて下さり誠にありがとうございました。こちらサインをした依頼書です。道中お気お付け下さいね」

「ああ、ありがとう。この村は、まあ、色々あったけど、それを除けばいい所だったよ」

 そうして、エルクたちはエスト村をあとにした。

 因みにエスト村を出る時、例のあの青年がこちらに来て「ルリさんをここに置いていけ」とか言い出してひと悶着あったが、その場で父親に殴り飛ばされ気絶していた。

 おっさん、程々にな。

しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる

グリゴリ
ファンタジー
『旧タイトル』万能者、Sランクパーティーを追放されて、職業が進化したので、新たな仲間と共に無双する。 『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる』【書籍化決定!!】書籍版とWEB版では設定が少し異なっていますがどちらも楽しめる作品となっています。どうぞ書籍版とWEB版どちらもよろしくお願いします。 2023年7月18日『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる2』発売しました。  主人公のクロードは、勇者パーティー候補のSランクパーティー『銀狼の牙』を器用貧乏な職業の万能者で弱く役に立たないという理由で、追放されてしまう。しかしその後、クロードの職業である万能者が進化して、強くなった。そして、新たな仲間や従魔と無双の旅を始める。クロードと仲間達は、様々な問題や苦難を乗り越えて、英雄へと成り上がって行く。※2021年12月25日HOTランキング1位、2021年12月26日ハイファンタジーランキング1位頂きました。お読み頂き有難う御座います。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます

海夏世もみじ
ファンタジー
 月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。  だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。  彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

勇者PTを追放されたので獣娘たちに乗り換えて楽しく生きる

まったりー
ファンタジー
勇者を支援する為に召喚され、5年の間ユニークスキル【カードダス】で支援して来た主人公は、突然の冤罪を受け勇者PTを追放されてしまいました。 そんな主人公は、ギルドで出会った獣人のPTと仲良くなり、彼女たちの為にスキルを使う事を決め、獣人たちが暮らしやすい場所を作る為に奮闘する物語です。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

処理中です...