絶対神の子、最強国家を建国す~でもやっぱり気ままなスローライフを送りたい~

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1部『タルタロス建国編』 序章 『大魔境での新生活』

プロローグ

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 ここは都内の隅に立っているビルの五階、某制作会社の支所で只今の時刻は夜中の十二時を回ったところ。俺、西野礼二は連日続く無理な残業に追われながら現在進行形でパソコンの画面とにらめっこしている。

(クソッあのハゲ課長、俺がまだ若くて体力が有り余っているだろとか言ってこんなとんでもない量の書類仕事押し付けやがって、お陰でここ数日ろくに寝れてない)

 愚痴をこぼしつつも残りわずかとなった仕事を終わらせ眉間を揉みほぐしながらふと壁に立てかけられている時計を見る。

「……あ、もう夜中の一時回ってるじゃん。……もう終電もないし、明日は土曜日だけどどうせ休日出勤して仕事しないといけないからな。今日は会社に泊まるとするか。――よし、そうと決まれば腹も減ったし近くのコンビニで何か買って来るかな」

 会社の入っているビルの道路を挟んで反対側にあるコンビニに行くために会社を出る。


 夜食を買ってコンビニを後にし、会社に戻るために横断歩道で信号が青に変わるのをスマホをいじりながら待っていると

(――――ん?な!?)

 スマホに向けていた目を何となく前方に向けるとそこにはヘッドホンをしながらスマホで何かを聞いている十代後半くらいの女の子が赤信号に気付かずに横断歩道を渡ろうとしている。

 とっさに道路のほうを見ると向こうから大型トラックが走って来ていてしかも目算けっこうなスピードが出ている。十代後半の女の子はまだこちらに向かって来る大型トラックに気付いていない様だ。

(…………って言うか未だに呑気にスマホをいじりながら何かを聞いてるじゃないか)

 少し躊躇している間に大型トラックはもうすぐそこまで来ている。

 さすがの女の子もその頃にはトラックに気付いた様だが、あまりの恐怖からか全身を震わせながらその場に立ちすくんでいる。

(クソ、このままじゃ不味い)

 俺の体は自分でも驚く程にスムーズに動いた。俺は女の子に向かって走り寄りながら手をめいいっぱい伸ばして女の子の腕を掴んで走り寄った勢いを利用して彼女を俺の背後へと引き戻した。

 しかし、彼女を引き戻した際に思いの他勢いがついてしまい体はコントロールを失い路上へと投げ出されてしまった。

(う、……いててて)

 上半身を起こしてトラックが走って来ていた方を見ると、トラックのヘッドライトのせいでよく見えなくなるほど直ぐそこまで来ていた。

(……あ、これはもう駄目だは、しかも運転手居眠り運転してるじゃねえか……それにしてもこういう時って本当にスローモーションに見えるんだな。……とにかくあの子が無事でよかった)

 最後にチラッと女の子の方を見ると、彼女は泣きじゃくりながら俺の方を見ていた。

 直後、やけに鈍い音と強い衝撃を受けて俺は意識を手放した。


***


 バシャッ

 ん!?……何だ……冷たい?……体中が痛い?……そうかあの後救急車で病院に運ばれて今手術でも受けてるのかな。だとすれば体中が冷たいのも痛いのも説明が付く。でも消毒液ってこんな体全体にかける物なのか

 朦朧としはっきりとしない頭で考えていると

 バシャッ

 またも何かを体にかけられた。

 直後

「何時まで気絶しているんですか!!――――全くこれだから卑しいメイドの子は。ほら!!さっさと起きなさい。まだユジンの訓練は終わっていませんよ!!」

 ……卑しいメイドの子?……ユジンの訓練?……一体何言ってんだこの女は……てかこの虐待女は一体どこのどいつなんだ?

 いまだ意識が朦朧としているなかゆっくりと体を起こすと少し離れた所に素晴らしく卑しい笑みを顔に張り付けた十四、五歳くらいの少年が俺に剣を向けて立っている。

 こんな危険な物を向けて一体こいつは何がやりたいんだぁ?

 こちらに剣を向けてニヤニヤしている少年を見ながら訳がわからず首を傾げて困惑していると

「おらおら、早くそこに落ちてる剣を拾わないと怪我しちまうぞ。おら!!」

「うお!!――――」

 な!?あ、あぶねぇ……何しやがんだこのクソガキは!?

 俺は少年……ユジンが勢いよく切り込んで来た剣を寸でのところで拾った剣で受け止めようとしたが耐えられず後方に何度もバウンドしながら吹き飛ばされた。

「……う……うぅぅぅ――――――」

 ……な、何て……威力……なんだ……本当に……子供……なの……か?



***

「……う……んん?――――」

 ガバッ

!?…………キョロキョロ…………!?

 ――知らない天井に知らない壁……一体ここはどこなんだ。……それによく見ると至る所に物が散乱していて……凄え汚ねえなあ!!
 
「きれい好きの俺にはこれは少しきつすぎるな。…………まあいい先ずは今の状況把握からだな。先ず俺はあの時女の子を助けて大型トラックにひかれて確実に死んだはずだ。…………!?って言うか俺の体よく見たら凄くちっさくなってないか」

 えっと鏡……鏡っと

 俺は周辺を探して手鏡を見つけると恐る恐る鏡を覗き込んでみた。するとそこには俺が生まれてから二十七年間慣れ親しんで来た平凡なモブ顔ではなく余り栄養が取れていないのか頬はこけ目も窪んでいるが誰が見てもイケメンだとわかる少し幼さの残る顔があった。

「……誰だこりゃ!?…………うん、俺だなこれ」

 自分で体中触って徹底的に調べたし間違いないこの手鏡に映ったこの少年は俺自身だ。…………まさか、これはラノベやネット小説で今人気の異世界転生ってやつじゃないか。こうしちゃいられない早速この部屋を出て情報収集をしないと…………いやいやちょっと待てちょっと落ち着いて考えよう。

 ス~~ハ~~、ス~~ハ~~

 よし、先ずこの体だ。こんなにボロボロだし着ている服も継ぎはぎのボロ着って事はこの少年、いや俺かはこの家で相当ひどい扱いをされている事が火を見るよりも明らかだ。とりあえずこの部屋の外の様子を少し見てみるか。

 部屋の外の様子を見に行くために立ち上がると途端、頭に激痛が走りたまらずその場にくず倒れ暫く頭を抱えながら転げ回った。

 ……な、何だこれは。俺以外の記憶が流れ込んでくる。こ、これは、べ、ベイル少年の記憶か。

「……はぁ……はぁ……な、成程。わかってはいたが、まさかここまで酷い仕打ちを受けていたとはな。よく今まで生きていたもんだ」

 頭の中に流れ込んで来たベイルのこれまでの記憶は想像を絶するものだった。

「まあ、さっきの激痛を耐えたかいはあったな。お陰でベイルのこれまで体験して来たものを知ることが出来たし、色々と情報も手に入れる事が出来た」

 どうやらベイルの記憶によるとこの世界は前世と同じで1日が24時間で1ヶ月が30日で、それが12回あり1年が360日らしい。さらに小間使い的な事もやらされていたみたいでお金関係の事も知ることが出来た。

 例えばお金には鉄貨~大黒金貨まであり、国民が使う主な硬貨は鉄貨~大金貨まで、それより上の白金貨~大黒金貨は商会同士の商売や国同士での商売でのみ使われるらしい。因みにお金の単位はコルだった。

 因みにこの家はウォーカー侯爵家と言いベイル、俺はウォーカー侯爵家当主である父親ギルバートと侯爵家でメイドとして働いていた母親アイシスとの間に生まれた。そして屋敷の庭で俺をいたぶっていた女とガキは義母のイレーヌと腹違いの弟ユジンと言うらしい。

 すでに我が母アイシスはこの家に居らず、今どこでどうしているのかは知るすべもない。

 これ以外の事で記憶からわかることは……成程、五日後に教会で洗礼の儀ってやつが行われるのか。成程、洗礼の儀では神様からステータスとスキルがもらえるのか。……となるともらえたスキルとステータスしだいで俺の待遇も今より幾分かマシになるかもな。……まあ、洗礼の儀はまだ五日後だし今考えても意味無いか。……いいスキルとステータスがもらえる様に一応祈っとくかな。

 この日はその後何もせず夕食時に物置の様な自室にメイドがイヤイヤ持って来たクッソ硬い黒パンと具がろくに入っていない薄い塩味のスープを食して早々に眠りに就いた。



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