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第四章 魔王の国を改革するための第一歩! 採用試験で自由に職業選択できる世界を目指します
20 「秋」という国から来た男
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* * *
手当てが済んで、モーリス医師が建物へと運び込まれた後。
私は、先ほどから気になっていた質問を、東洋人の見た目を持つ男性に投げかけてみることにした。
「先ほどは、助けを呼んでくださってありがとうございました。あなたも……試験を受けに来た方でいらっしゃいますよね?」
「はい。官吏の試験を受けにまいりました。会計の知識を活かしたいと思いまして」
「あの……つかぬことを伺いますけれど、あなたのその外見……」
言葉を選んだつもりだったが、この質問の仕方はあらぬ誤解を生んでしまったらしい。
男性が一瞬、眉根を寄せたのを見て、私は急いで、言葉を補う。
「あ、ごめんなさい。悪い意味ではないのよ、誤解しないでいただきたいわ。むしろ良い意味だと受け取っていただきたいの。この国や聖カトミアル王国ではあまり見かけない個性をお持ちのようですけれど、どこか遠くの国からいらしたのかしら?」
言葉を選んではみるが、この問題に関しては本当に難しい。
むしろ、前世の記憶から男性の外見については、非常に親しみを持っているのだが。
そう、素直な気持ちを伝えられないことがもどかしかった。
それでも、男性の外見に対して奇異の目を向けているわけではないということは、なんとか伝わったようだ。
男性は少しずつ、自身の身の上について語りはじめた。
「はい。私は、ここからずっとずっと東へ、日が昇る東の果てまで行ったところにある島国、秋から参りました。聖カトミアル王国からやって来たという商人に奴隷として買われ、連れて来られたのです。名は、佐吉と申します」
「ほう、そのような遥か遠き国から参ったのか。秋の国は、伝説の国ではなく現実として存在しているのだな」
ヴィネ様が驚きをあらわにする。
やはり、予想通りだ。この世界にも、“東洋”が存在するのだ。
マップ構成が、前世の地球と酷似していたので、前世の世界地図を参考に構築された世界なのではないかと思っていた。ゲームの中には、前世の世界で言うところのヨーロッパしか登場しなかったが、西洋があるなら、おそらく東洋も存在するのではないかと推測していたのである。
私はこの世界に転生して後、子どもの頃から、数多くの書物を読み漁り、地図も目にしてきた。
しかし、我が家にある書物と地図からは、東洋の国について、その実態を窺い知ることはできなかった。
遥か東には、文化の異なる国があり、見た目の異なる人が住んでいるらしい。
そのような曖昧とした知識が伝えられているだけだったのだ。
前世の世界の歴史では、古代から東洋と西洋はシルクロードによって結ばれ、交易も行われていた。
しかし、この世界においては、東の国々はまるで異世界のごとくに実体がない。同じ大陸にあるものの、まるで見えない壁で遮られているかのように分断されている。曖昧模糊としていて、朧気な情報しか伝わって来ないのだ。
『聖なる乙女と光の騎士たち』というゲームにおいては、東洋や南半球にあたる地域のマップは存在せず、主人公が移動できるのは、前世で言うところのヨーロッパに該当する地域だけだ。
だから、ぼんやりとした設定しか、作られていないのかもしれなかった。
マップの分断が、そのまま世界の分断という形で影響を受けている。
この世界に住む多くの者にとって、東洋の国々は、おとぎ話にしか過ぎないのだ。
しかし、この男性、佐吉の話によれば、マルコ・ポーロのように、既に東国まで辿り着いた商人がいるということだ。
これは、大きな発見だった。
今後、交易を行うにあたっても大きな影響を及ぼすことだろう。
手当てが済んで、モーリス医師が建物へと運び込まれた後。
私は、先ほどから気になっていた質問を、東洋人の見た目を持つ男性に投げかけてみることにした。
「先ほどは、助けを呼んでくださってありがとうございました。あなたも……試験を受けに来た方でいらっしゃいますよね?」
「はい。官吏の試験を受けにまいりました。会計の知識を活かしたいと思いまして」
「あの……つかぬことを伺いますけれど、あなたのその外見……」
言葉を選んだつもりだったが、この質問の仕方はあらぬ誤解を生んでしまったらしい。
男性が一瞬、眉根を寄せたのを見て、私は急いで、言葉を補う。
「あ、ごめんなさい。悪い意味ではないのよ、誤解しないでいただきたいわ。むしろ良い意味だと受け取っていただきたいの。この国や聖カトミアル王国ではあまり見かけない個性をお持ちのようですけれど、どこか遠くの国からいらしたのかしら?」
言葉を選んではみるが、この問題に関しては本当に難しい。
むしろ、前世の記憶から男性の外見については、非常に親しみを持っているのだが。
そう、素直な気持ちを伝えられないことがもどかしかった。
それでも、男性の外見に対して奇異の目を向けているわけではないということは、なんとか伝わったようだ。
男性は少しずつ、自身の身の上について語りはじめた。
「はい。私は、ここからずっとずっと東へ、日が昇る東の果てまで行ったところにある島国、秋から参りました。聖カトミアル王国からやって来たという商人に奴隷として買われ、連れて来られたのです。名は、佐吉と申します」
「ほう、そのような遥か遠き国から参ったのか。秋の国は、伝説の国ではなく現実として存在しているのだな」
ヴィネ様が驚きをあらわにする。
やはり、予想通りだ。この世界にも、“東洋”が存在するのだ。
マップ構成が、前世の地球と酷似していたので、前世の世界地図を参考に構築された世界なのではないかと思っていた。ゲームの中には、前世の世界で言うところのヨーロッパしか登場しなかったが、西洋があるなら、おそらく東洋も存在するのではないかと推測していたのである。
私はこの世界に転生して後、子どもの頃から、数多くの書物を読み漁り、地図も目にしてきた。
しかし、我が家にある書物と地図からは、東洋の国について、その実態を窺い知ることはできなかった。
遥か東には、文化の異なる国があり、見た目の異なる人が住んでいるらしい。
そのような曖昧とした知識が伝えられているだけだったのだ。
前世の世界の歴史では、古代から東洋と西洋はシルクロードによって結ばれ、交易も行われていた。
しかし、この世界においては、東の国々はまるで異世界のごとくに実体がない。同じ大陸にあるものの、まるで見えない壁で遮られているかのように分断されている。曖昧模糊としていて、朧気な情報しか伝わって来ないのだ。
『聖なる乙女と光の騎士たち』というゲームにおいては、東洋や南半球にあたる地域のマップは存在せず、主人公が移動できるのは、前世で言うところのヨーロッパに該当する地域だけだ。
だから、ぼんやりとした設定しか、作られていないのかもしれなかった。
マップの分断が、そのまま世界の分断という形で影響を受けている。
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しかし、この男性、佐吉の話によれば、マルコ・ポーロのように、既に東国まで辿り着いた商人がいるということだ。
これは、大きな発見だった。
今後、交易を行うにあたっても大きな影響を及ぼすことだろう。
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