魔女として断罪された悪役令嬢は婚約破棄されたので魔王の妃として溺愛されることを目指します

悠月

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第三章 内政チートで魔王の国を改革! 魔王からの好感度アップを目指します

34 と思ったら、セパルが認めてくれたようです

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「魂胆などありません」
「ええ、今はそう信じています。しかし、最初はそれこそ聖カトミアル王国から送られてきた間諜ではないかと疑っておりましたよ」
「間諜!? まさか!」
「ええ、違うでしょうね。今のところエレイン様は、本当に我が国のためになる提案しかなさらない。これが何かの罠なら、相当な策士でしょう」
「まさか、そんな……罠などと。けしてそんなことは、ございません!」
「わかっています。冗談ですよ。何しろ、時々、エレイン様は本当に陛下に対して、純粋に片恋をしているというような表情を浮かべ、熱い眼差しで見つめられていますからね」
「え……」

 片恋とは図星である。
 セパルに指摘された私は、恥ずかしさのあまり思わず、顔が熱く火照るのを感じる。
 おそらく、今の私は、ゆでだこのように真っ赤になっているはずだ。

「不思議ですね。会話の端々やその表情から、エレイン様は陛下のことを、昔からよく知っていたかのようにも受け取れるのです」

 さすが名宰相のセパルだ。
 今日一日で私のことをよく観察している。
 そうなのだ、私は、前世でヴィネ様のことを、ずっと見つめ続けていたのだ。前世からずっとヴィネ様に恋していたのである。
 しかし、そのことを説明するには、「ここは乙女ゲームの世界なのですよ」ということを告げなければならない。
 自分たちがゲームプランナーやシナリオライターという神の手によって作られた存在だと知った時、彼らはどう思うのだろうか。
 そう思うと、なかなか真実を告げるのは躊躇ためらわれる。

「見ていたのです、ずっと……陛下のことを。ずっと、陛下に憧れていたのです。本当に妃になりたいと思ったのです」
「聖カトミアル王国から、見ていたのですか?」
「いえ、前世の世界から、です。魔術師の使う水晶玉のようなもので、この国や、陛下、セパル様のことも……見ていたのです」
「ヴィネ陛下の物語の結末を知っている、と昨日もおっしゃっていましたね。この世界の枠組みの外側から見ていた、と。それは、過去見をしていたということですか?」
「そうですね、それに近いかもしれません」

 理解できたのかどうかわからないが、セパルは「ふうん」と頷いている。

「前世の話については、正直、すべてを理解できてはいないかもしれません。でも、エレイン様、あなたが陛下のことをとても愛していて、我が国のために一生懸命働いてくれようとしていることは、今日一日で理解ができました。陛下の未来を、この国の未来を、良いものに変えようとしてくださっていることはわかります。エレイン様のように、国の発展に寄与してくださる妃であれば、私は賛成してもよいかと思っていますよ」
「セパル様!」

 セパルの胸元で、ハートが舞う。
 これは、セパルから私に対する好意を表しているというよりも、妃候補としての私を認めてくれた評価ということだろうか。

「私は、エレイン様が、陛下の妃になられることを応援してみたいと思いました」
「ありがとうございます、セパル様!」

 私は、セパルに礼を述べる。

「それでは、帰りましょうか。明日からの仕事の段取りでも話し合いながら城へと戻りましょう」

 セパルと私は、馬車に載せられるだけジャガイモを積み込むと、王都への帰路についた。
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