魔女として断罪された悪役令嬢は婚約破棄されたので魔王の妃として溺愛されることを目指します

悠月

文字の大きさ
上 下
77 / 106
第三章 内政チートで魔王の国を改革! 魔王からの好感度アップを目指します

31 ヴィネ陛下からアンケートです。職業選択の自由があったらみんなはどうしますか?

しおりを挟む
「そうだ、せっかく農村に来たのだから皆に聞いておきたい」

 フライドポテトを食べ終えたヴィネ様は、民たちに気さくに声をかけた。

「陛下、なんでしょうか」
「もし、自由に職業を選んでいいと言われたらそなたらはどうする?」

 ヴィネ様の唐突な発言は、そんな制度を想像したことすらない彼らにとってあまりに飛躍した考えだったようだ。
 皆、ポカーンと、目を丸くしたまま、答えに窮している。

「たとえば、農家の次男より下の者はここにいるか?」
「はい、次男です」
「俺は、三男です」

 当然、長男より次男以下の者の方が人数が多い。集まっていたうち、四分の三ほどの男性が手を挙げた。

「そなたら、農家以外の職についていいぞ、と言ったらどうする? たとえばだな、城で私の警護をしたり、都市で市民の安全を守ったり……。いや、兵に限らぬ。もし計算ができるのであれば、文官として勤められる道も用意する。ただし、適性試験は受けてもらうがな。どうだ?」

 手を挙げた者たちは、しばらくヴィネ様の提案を、理解しようと黙って思案していた。
 数分が経過しただろうか。
 理解できた者が順に、肯定的な意見を口にし始めた。

「できるなら挑戦してみたいです。俺、腕っぷしにだけは自信があるんだ。陛下をお守りしたいです」
「俺は、小さい頃、親戚の商家に預けられていたことがあって、その時に簡単な計算なら教えてもらえたんです。だから、できればその特技を活かせる仕事に就きたいと思います」

「うむ。試験があれば挑戦してみたいと思うか?」

 まだ迷っているものも、中には当然いる。
 しかし、予想していたよりも多くの者たちが、

「はい」

 と頷いた。

「女性たちはどうだ?」

 これまで、完全に自分たちは蚊帳の外と思って話を聞き流していた女性たちが、急に話を振られて目を丸くする。

「え? でも、私たちは、子育てや家事があるから……」
「子育てを代行する制度を作り、子育て中も働ける制度があったとしたらどうだ? そして好きな職に就けるとしたら?」

 これもまた、聞いたことのない制度に、最初は理解がなかなか及ばないといった表情を皆、浮かべている。
 しばらくして、一人の女性がおずおずと口を開いた。

「私、刺繍が得意なんで、外に働きに行けるならお針子仕事がしてみたいです。……実は、農家の仕事は、体力のない私にはキツくて……」
「あの……、これは男の仕事かもしれないけど、私、料理屋を開きたいです。女だけど女将じゃなくて、料理人になれたらいいなって」
「ちょっと待っておくれよ、そういう荒唐無稽なのもありなのかい? あたしは、女だけど腕っぷしに自信があるから、陛下の近衛兵に入りたいよ」
「そういうのでいいなら、私は宮廷画家になりたいです。絵は独学ですが、得意なつもりです」

 女たちの語る夢に、これまで黙っていた男たちも割って入る。

「え、そういうのでもいいの? なら、俺、楽士を目指したいんだけど」
「俺は、魔道士になりたい。実はちょっとだけ、魔力が使えるんだよね。練習さえすればいける気がするんだよ」

 ヴィネ様は、民たちの声に、うんうんと頷いている。
 皆が、やりたい夢をいきいきと語る中で、一人の女性が申し訳なさそうに、おずおずと口を開いた。

「あたし……いろいろとやってみたいことはあるんです。だけど、あたしは女だし、貧しい農家の生まれだから、文字が……読めないんです」

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

なにをおっしゃいますやら

基本二度寝
恋愛
本日、五年通った学び舎を卒業する。 エリクシア侯爵令嬢は、己をエスコートする男を見上げた。 微笑んで見せれば、男は目線を逸らす。 エブリシアは苦笑した。 今日までなのだから。 今日、エブリシアは婚約解消する事が決まっているのだから。

運命に勝てない当て馬令嬢の幕引き。

ぽんぽこ狸
恋愛
 気高き公爵家令嬢オリヴィアの護衛騎士であるテオは、ある日、主に天啓を受けたと打ち明けられた。  その内容は運命の女神の聖女として召喚されたマイという少女と、オリヴィアの婚約者であるカルステンをめぐって死闘を繰り広げ命を失うというものだったらしい。  だからこそ、オリヴィアはもう何も望まない。テオは立場を失うオリヴィアの事は忘れて、自らの道を歩むようにと言われてしまう。  しかし、そんなことは出来るはずもなく、テオも将来の王妃をめぐる運命の争いの中に巻き込まれていくのだった。  五万文字いかない程度のお話です。さくっと終わりますので読者様の暇つぶしになればと思います。

【完結】「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と言っていた婚約者と婚約破棄したいだけだったのに、なぜか聖女になってしまいました

As-me.com
恋愛
完結しました。  とある日、偶然にも婚約者が「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」とお友達に楽しそうに宣言するのを聞いてしまいました。  例え2番目でもちゃんと愛しているから結婚にはなんの問題も無いとおっしゃっていますが……そんな婚約者様がとんでもない問題児だと発覚します。  なんてことでしょう。愛も無い、信頼も無い、領地にメリットも無い。そんな無い無い尽くしの婚約者様と結婚しても幸せになれる気がしません。  ねぇ、婚約者様。私はあなたと結婚なんてしたくありませんわ。絶対婚約破棄しますから!  あなたはあなたで、1番好きな人と結婚してくださいな。 ※この作品は『「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。 』を書き直しています。内容はほぼ一緒ですが、細かい設定や登場人物の性格などを書き直す予定です。

悪役令嬢の涙

拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

【完結】目覚めたらギロチンで処刑された悪役令嬢の中にいました

桃月とと
恋愛
 娼婦のミケーラは流行り病で死んでしまう。 (あーあ。贅沢な生活してみたかったな……)  そんな最期の想いが何をどうして伝わったのか、暗闇の中に現れたのは、王都で話題になっていた悪女レティシア。  そこで提案されたのは、レティシアとして贅沢な生活が送れる代わりに、彼女を陥れた王太子ライルと聖女パミラへの復讐することだった。 「復讐って、どうやって?」 「やり方は任せるわ」 「丸投げ!?」 「代わりにもう一度生き返って贅沢な暮らしが出来るわよ?」   と言うわけで、ミケーラは死んだはずのレティシアとして生き直すことになった。  しかし復讐と言われても、ミケーラに作戦など何もない。  流されるままレティシアとして生活を送るが、周りが勝手に大騒ぎをしてどんどん復讐は進んでいく。 「そりゃあ落ちた首がくっついたら皆ビックリするわよね」  これはミケーラがただレティシアとして生きただけで勝手に復讐が完了した話。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

処理中です...