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第三章 内政チートで魔王の国を改革! 魔王からの好感度アップを目指します
31 ヴィネ陛下からアンケートです。職業選択の自由があったらみんなはどうしますか?
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「そうだ、せっかく農村に来たのだから皆に聞いておきたい」
フライドポテトを食べ終えたヴィネ様は、民たちに気さくに声をかけた。
「陛下、なんでしょうか」
「もし、自由に職業を選んでいいと言われたらそなたらはどうする?」
ヴィネ様の唐突な発言は、そんな制度を想像したことすらない彼らにとってあまりに飛躍した考えだったようだ。
皆、ポカーンと、目を丸くしたまま、答えに窮している。
「たとえば、農家の次男より下の者はここにいるか?」
「はい、次男です」
「俺は、三男です」
当然、長男より次男以下の者の方が人数が多い。集まっていたうち、四分の三ほどの男性が手を挙げた。
「そなたら、農家以外の職についていいぞ、と言ったらどうする? たとえばだな、城で私の警護をしたり、都市で市民の安全を守ったり……。いや、兵に限らぬ。もし計算ができるのであれば、文官として勤められる道も用意する。ただし、適性試験は受けてもらうがな。どうだ?」
手を挙げた者たちは、しばらくヴィネ様の提案を、理解しようと黙って思案していた。
数分が経過しただろうか。
理解できた者が順に、肯定的な意見を口にし始めた。
「できるなら挑戦してみたいです。俺、腕っぷしにだけは自信があるんだ。陛下をお守りしたいです」
「俺は、小さい頃、親戚の商家に預けられていたことがあって、その時に簡単な計算なら教えてもらえたんです。だから、できればその特技を活かせる仕事に就きたいと思います」
「うむ。試験があれば挑戦してみたいと思うか?」
まだ迷っているものも、中には当然いる。
しかし、予想していたよりも多くの者たちが、
「はい」
と頷いた。
「女性たちはどうだ?」
これまで、完全に自分たちは蚊帳の外と思って話を聞き流していた女性たちが、急に話を振られて目を丸くする。
「え? でも、私たちは、子育てや家事があるから……」
「子育てを代行する制度を作り、子育て中も働ける制度があったとしたらどうだ? そして好きな職に就けるとしたら?」
これもまた、聞いたことのない制度に、最初は理解がなかなか及ばないといった表情を皆、浮かべている。
しばらくして、一人の女性がおずおずと口を開いた。
「私、刺繍が得意なんで、外に働きに行けるならお針子仕事がしてみたいです。……実は、農家の仕事は、体力のない私にはキツくて……」
「あの……、これは男の仕事かもしれないけど、私、料理屋を開きたいです。女だけど女将じゃなくて、料理人になれたらいいなって」
「ちょっと待っておくれよ、そういう荒唐無稽なのもありなのかい? あたしは、女だけど腕っぷしに自信があるから、陛下の近衛兵に入りたいよ」
「そういうのでいいなら、私は宮廷画家になりたいです。絵は独学ですが、得意なつもりです」
女たちの語る夢に、これまで黙っていた男たちも割って入る。
「え、そういうのでもいいの? なら、俺、楽士を目指したいんだけど」
「俺は、魔道士になりたい。実はちょっとだけ、魔力が使えるんだよね。練習さえすればいける気がするんだよ」
ヴィネ様は、民たちの声に、うんうんと頷いている。
皆が、やりたい夢をいきいきと語る中で、一人の女性が申し訳なさそうに、おずおずと口を開いた。
「あたし……いろいろとやってみたいことはあるんです。だけど、あたしは女だし、貧しい農家の生まれだから、文字が……読めないんです」
フライドポテトを食べ終えたヴィネ様は、民たちに気さくに声をかけた。
「陛下、なんでしょうか」
「もし、自由に職業を選んでいいと言われたらそなたらはどうする?」
ヴィネ様の唐突な発言は、そんな制度を想像したことすらない彼らにとってあまりに飛躍した考えだったようだ。
皆、ポカーンと、目を丸くしたまま、答えに窮している。
「たとえば、農家の次男より下の者はここにいるか?」
「はい、次男です」
「俺は、三男です」
当然、長男より次男以下の者の方が人数が多い。集まっていたうち、四分の三ほどの男性が手を挙げた。
「そなたら、農家以外の職についていいぞ、と言ったらどうする? たとえばだな、城で私の警護をしたり、都市で市民の安全を守ったり……。いや、兵に限らぬ。もし計算ができるのであれば、文官として勤められる道も用意する。ただし、適性試験は受けてもらうがな。どうだ?」
手を挙げた者たちは、しばらくヴィネ様の提案を、理解しようと黙って思案していた。
数分が経過しただろうか。
理解できた者が順に、肯定的な意見を口にし始めた。
「できるなら挑戦してみたいです。俺、腕っぷしにだけは自信があるんだ。陛下をお守りしたいです」
「俺は、小さい頃、親戚の商家に預けられていたことがあって、その時に簡単な計算なら教えてもらえたんです。だから、できればその特技を活かせる仕事に就きたいと思います」
「うむ。試験があれば挑戦してみたいと思うか?」
まだ迷っているものも、中には当然いる。
しかし、予想していたよりも多くの者たちが、
「はい」
と頷いた。
「女性たちはどうだ?」
これまで、完全に自分たちは蚊帳の外と思って話を聞き流していた女性たちが、急に話を振られて目を丸くする。
「え? でも、私たちは、子育てや家事があるから……」
「子育てを代行する制度を作り、子育て中も働ける制度があったとしたらどうだ? そして好きな職に就けるとしたら?」
これもまた、聞いたことのない制度に、最初は理解がなかなか及ばないといった表情を皆、浮かべている。
しばらくして、一人の女性がおずおずと口を開いた。
「私、刺繍が得意なんで、外に働きに行けるならお針子仕事がしてみたいです。……実は、農家の仕事は、体力のない私にはキツくて……」
「あの……、これは男の仕事かもしれないけど、私、料理屋を開きたいです。女だけど女将じゃなくて、料理人になれたらいいなって」
「ちょっと待っておくれよ、そういう荒唐無稽なのもありなのかい? あたしは、女だけど腕っぷしに自信があるから、陛下の近衛兵に入りたいよ」
「そういうのでいいなら、私は宮廷画家になりたいです。絵は独学ですが、得意なつもりです」
女たちの語る夢に、これまで黙っていた男たちも割って入る。
「え、そういうのでもいいの? なら、俺、楽士を目指したいんだけど」
「俺は、魔道士になりたい。実はちょっとだけ、魔力が使えるんだよね。練習さえすればいける気がするんだよ」
ヴィネ様は、民たちの声に、うんうんと頷いている。
皆が、やりたい夢をいきいきと語る中で、一人の女性が申し訳なさそうに、おずおずと口を開いた。
「あたし……いろいろとやってみたいことはあるんです。だけど、あたしは女だし、貧しい農家の生まれだから、文字が……読めないんです」
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