魔女として断罪された悪役令嬢は婚約破棄されたので魔王の妃として溺愛されることを目指します

悠月

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第三章 内政チートで魔王の国を改革! 魔王からの好感度アップを目指します

23 「悪魔の果実」って何ですか? ②

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「ジャガイモ……? あそこに置かれた“実”のことをおっしゃっているのですか? いえ、あれは栽培しているわけでありません。勝手に生えてきてしまったものを、抜いただけです。大麦や小麦の栽培の邪魔になりますので」

(“実”ではなく、地下に生えている“茎”の一部なのだけれども……。まあ、この際、そんな細かいことは置いておくとして。セパルが「勝手に生えてきている」と認識しているということは、もうこの国に入って来て随分経つのね。
 誰かの手によって持ち込まれて、その後、それが増えたということか……、あるいはこの世界では、もともとこの地域に存在していた植物、という設定だったのかもしれないわ。ジャガイモなら、寒冷地に強いはずだもの。持ち込まれたとしても、この国の気候に合っているから、きっとどんどん増えたのね。
 ……それなのに、雑草扱いということ? なぜ、抜くだけで食べないのかしら)

 私は疑問を口にする。

「抜くだけで食べないのですか?」
「ええ、あれは“毒の実”ですから」
「え? 毒……?」
「あれを食べると、毒が身体に回って具合が悪くなってしまうのです。最悪、亡くなってしまうこともあるほどの“毒の実”です。“悪魔の果実”とも呼ばれているのですよ。聖カトミアル王国では、あの実は自生していないのですか?」

 セパルの言葉に私はしばらく思案する。

「もしかして……、かつてジャガイモを芽ごと食べてしまった方がいたのでしょうか? あるいは、皮が緑色の未熟な状態のまま、食べてしまった方がいらしたとか……?」
「え?」
「あの植物は、芽の部分に毒素が含まれているのです。成熟したジャガイモであれば、芽の部分を取り除けば、食中毒は起こさないはずです。ただ、皮が緑色のまだ成熟していないジャガイモは毒なので、食べない方がいいと思いますが」
「あれは、食べられる……のですか?」
「はい」

 前世では、ジャガイモは食材として、世界中で利用されていた。
 フライドポテトにハッシュドポテト。ポテトサラダにジャーマンポテト、冷たいジャガイモのスープのヴィシソワーズ。美味しいメニューは山ほどあった。世界中で愛されているスナック菓子と言えば、ポテトチップスだ。
 思い出すだけで、口中に唾液が広がる。思わずよだれを垂らしてしまいそうだ。
 
(ハンバーガーに続いて、フライドポテトもこの世界で食べられたら、嬉しいわよね!
 美味しいから、きっとみんなも喜んでくれるはずだわ。
 みんなに、ジャガイモが食べられることを伝えてあげなければ!)

「あれは、“悪魔の果実”なんかではありません。調理法を間違えなければ、食べられます!」

 胸を張って、そう断言した私に、どこかから石礫いしつぶてが飛んで来た。

「え!?」

 石礫は、私の頬をかすめた。
 と同時に、鎌を手にした男が、こちらを睨みつけるようにして野次を飛ばす。

「嘘だ! そうやって“毒の実”を俺たちに食べさせて、この村を全滅させようって魂胆なんだろう? この、魔女め!」

    
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