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第三章 内政チートで魔王の国を改革! 魔王からの好感度アップを目指します

8 まずは台所から改革しましょう⑤

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「先ほどの、ピーラーや、フォークも……作れますか?」
「ええ、おそらく。こちらは、鍛冶職人たちに聞いてみましょう。我が国のドワーフたちは、手先が器用ですからね」

 ドワーフたちは、鍛冶仕事を得意にしているというのは、耳にしたことがある。
 RPGで勇者の伝説の武器を作るのは、ドワーフの職人だったりするものだ。
 アヴァロニア王国では、エルフや獣人たちを差別することなく重用しているように、ドワーフとも平和的に共存しているということなのだろう。
 ドワーフの技術をもってすれば、武具だけではなく、ピーラーやフォークのような生活に必要な道具も他の国より優れたものを作り出せる可能性がある。

「あ……、だとしたら、貿易が可能かもしれないわ……!」
「貿易?」
「さっき話したピーラーやフォークは、まだ、世界のどこにもありませんよね? 自分たちで使うだけではなく、優れた道具を作って、他国に売れば、国が潤うのではないですか?」
「確かに……、それはいい考えですね!」
「それに、ドワーフたちだったら、コレクションになるような食器も作り出せるかもしれませんよね」

 私は、前世でプレイしていた戦国シミュレーションゲームを思い出す。
 戦国時代、茶器は大名たちの間で、人気のコレクションであり、高額で取引されていた。ゲームの中でも、茶器を家臣にあたえることで忠誠度を上げることができたし、他国の大名に貢物として送れば、友好度を上げることができた。茶器は、国家間の交渉の道具としても使用されていたのだ。
 戦国時代には、他の国で、庶民たちが日常の道具として使用していたなんでもない瓶を、「わびさびの風情を持つ茶器」として売り出して、大儲けした商人がいたとも聞く。
 そんな詐欺まがいの商売ではなく、きちんと技術を持った職人が、手の込んだ銀器や磁器を作れば、立派な交易品として売りに出せるのではないだろうか。

 思いつきに過ぎなかったが、そんな考えを伝えると、ベルクの目が輝いた。
 頭頂部についた狼の耳がピンと立ち、尻尾も元気よく動く。
 ピロピロロ~ンという電子音と共に、ハートが舞った。
 ベルクから私への好感度が、「1」アップしたらしい。

「それはいい! さっそく、セパル様にも相談してみましょう」

 最初は、どうなることかと思ったが、ベルクを失望させることなく、なんとか最初のミッションを終えることができたようだ。
 私はほっと胸を撫で下ろす。

(なんだか地味~な提案だったように思うけれど……、好感度が上がったということは、ベルク的には大丈夫だったのかしら? 理想と現実は違うわね。この後も、よりいっそう頑張って改革案を提案していきましょう)
 
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