魔女として断罪された悪役令嬢は婚約破棄されたので魔王の妃として溺愛されることを目指します

悠月

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第一章 婚約破棄されたので魔王のもとに向かいます

6 私は悪役令嬢であることを思い出しました②

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 そして、なぜかこの婚約破棄・断罪イベントは、ジャン以外の男性キャラを攻略する際にも発生するのである。
 乙女ゲームであるからには、ヴァレリーの攻略対象キャラは、ジャンの他にも複数設定されている。
 私に対して、蕩々とうとうと罪状を読み上げてくれたジャンの側近、ダミアンもその一人だ。他に、聖堂騎士団の団員で司祭でもあるアンリ・ド・イスマエルなんていうキャラもいたはずだ。
 乙女ゲームらしく、いずれも見目麗しく、個性的な攻略対象キャラが複数用意されている。
 基本的に、正ヒーローであるジャンの周囲に攻略キャラは設定されているため、おのずとジャンの婚約者であるエレイン・ド・サヴァティエは、どのルートでも登場することになる。

 ジャンを攻略するのに、もともとの婚約者である、私、エレインが邪魔だから婚約破棄・断罪イベントが発生するというのは、まあ、理解することが可能だ。
 ヒロインであるヴァレリーがジャンとのハッピーエンドを迎えるには、婚約者である私は、あくまでも邪魔者だ。いじめてもいないのに、呪ってもいないのに、なぜか罪をきせられて、婚約破棄されるというのは、まあ、多少――いや、かなりご都合主義ではあるが理解はできる。
 エレイン本人の立場としては、“百歩譲って”ということにはなるが、理解できないことではない。
 しかし、このゲームの場合、ジャン・ルート以外を選んでも、「悪役令嬢・エレイン」との婚約破棄イベントが発生するのだ。
 ヴァレリーが聖なる乙女として魔王を倒し世界を救うという、大団円シナリオがあるため、魔女として、敵役として、「悪役令嬢・エレイン」という存在が必要だと、シナリオライターは考えたのだろう。
 つまり、大団円ルートだろうと、誰との恋愛ルートであろうと、

――必ず、「悪役令嬢・エレイン」は魔女として断罪される――

 のである。

 どう考えても、今後、私が魔女として烙印を押されることと、サヴァティエ家が没落するというイベントだけは避けようがない。

(どうせ魔女として断罪されるなら、魔王のところに行ってみようか……)

 私は、そう考えたのだった。
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