魔女として断罪された悪役令嬢は婚約破棄されたので魔王の妃として溺愛されることを目指します

悠月

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第一章 婚約破棄されたので魔王のもとに向かいます

8 前世の私はゲーマーでした①

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 いや、私が生きている間には、実現されることはなかった――
 と表現するのが、正しいだろうか。

 私が今、この『聖なる乙女と光の騎士たち』の中に転生しているということは、前世の私は、もう亡くなっているということだろう。
 どうやって亡くなったのか、はっきりとした記憶はない。
 でも、なんとなくだが、想像はつく。

 前世の私は、大学までは順風満帆じゅんぷうまんぱんな人生を送っていたと思う。
 子どもの頃から真面目に勉強を頑張って、志望大学にも無事入学した。
 初めて挫折を感じたのは、就職活動の時だったと思う。
 大学在学中に、激しい不況が世界中を襲った。何百社と履歴書を送ったけれど、私を正社員として雇用してくれる企業はひとつもなかった。
 正規の雇用が見つからないまま、30代に突入し、アラフォーと呼ばれる年代も現実として見えてくると、もう何もかもがどうでもよくなってくる。
 正社員としての職もない、彼氏もいない。
 派遣社員として惰性で食いつなぐだけの日常。
 私たち派遣社員は、アルバイトやパート職員たちと共に雇用の調整弁と呼ばれた。
 災害や不況など、社会に何かあった時、真っ先に解雇されるのは私たちだ。
 そうして、会社都合による何度かの解雇を経験するうちに、いろいろなことがどうでもよくなっていった。
 令和と呼ばれる「日本」の社会に身分制度はない。それでも、見えない形で身分制度は存在していた。
 『聖なる乙女と光の騎士たち』の世界のように、王、公爵、平民というはっきりとした形の身分がないだけだ。
 
 どこに不満をぶつけていいのかわからない閉塞感を抱えたまま、ただ年月だけが無為に、無情に過ぎていく。

 ――私はこのまま、死に向かって日々を無為に過ごしていくだけなのだろうか。

 日々の生活に何の喜びも見いだせない日々の中、私に唯一、喜びと満足感を与えてくれたのが、ゲームだった。
 乙女ゲームに限らず、MMORPG、アクション、FPS、TPS、ハクスラ、シミュレーション、MOBA、スポーツ、リズムゲームなど、あらゆるジャンルのゲームを、私は寝る間も惜しんで楽しんでいたのだ。
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