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異世界帰りへ④ 魔法は時として○○にもなります

影響力

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 城に入ると、無数の『お邪魔ぶよ』と城を守る兵士が、れつな戦いを繰り広げていた。
 剣も槍もカツンカツンとはじかえすだけで、上にのしかかられなければじんちくがい
 だからまあ、危なくはないというか、むしろ必死に攻撃する中で動けない人がザックリいかれないかのほうが心配になるんだけれど……。

 剣を収めてくれ――なんて言ったところで、正体不明の敵に城をおそわれているじようきようで、冷静でいられるわけもないしなぁ。
 なにせ五年かけた十字大陸統一の間に、この城はただの一つもがいを受けていないんだ。
 それが統一を果たした後に正体不明の生物に襲われ――。異常事態にも程があると言ったところだろう。


「とりあえずの心当たりはある! マノンの部屋――いや、俺の部屋に行くぞ!」

「う、うんっ」


 リルの手を引っ張って、俺がまりする客室を目指した。マノンはそこでているはずだ。
 この世界で最もイレギュラーな存在はマノンだろう。
 王族が支配する世界で、王族をえる力を持ち、それを使いこなす訓練は積んでいない引きこもり……。
 てきな部分以外で魔法の力が解明されていない世界でちようじよう現象が起こったとなれば、いの一番にイレギュラーな存在であるかのじよを疑うべきだ。


「マノン!!」


 じゆうこう感のあるドアをドタンと開けて、中に向かって叫ぶ。
 ……しかしマノンは、ベッドの上でとんにくるまって、すやすやといきを立てていた。
 この物音でも起きないということは、じゆくすい中なのだろう。


「…………んん?」


 俺は困り果てて首をかしげる。


「マノンちゃんが原因――というわけじゃ、ないみたいだけど」

「そうだな。何も変わりがない」


 強いて言えば開きっぱなしの本が散らばっているぐらいか。
 六法全書と『ぶよぶよ』じゃ、繋がりはなさそうだ。


「なんでマノンちゃんだと思ったの?」

「そりゃ、力の強さ順に……」


 言いかけて、ふと思った。
 よく考えてみると街の外周での獣害さわぎは、昨日今日に始まった話じゃないはずだ。
 今日は俺がぶよの消しかたを伝えたから、王城にお邪魔ぶよが降ってきた――というだけで。

 数日程度さかのぼると、それだけでマノンと『ぶよぶよ』に関連性は無くなってしまう。
 ――――と、なると。


「あ、これジジイだわ」

「おさまが!?」


 おどろいているけれど、当然の帰結である。


「だってなぁ。マノンの次に魔法の力が強いのは?」

「お祖父様ね」

「この世界で『日本のゲーム』ができるのは?」

「お祖父様がそういうものをたしなんでいる、とは、聞いている……けれど」

「あの『ぶよ』は日本のちようゆうめいパズルゲームに出てくるんだ。同じ色を四つ合わせると消えるのも、空からほとんど透明なお邪魔ぶよが降ってくるところも、まんま同じ。んで、爺さんの得意魔法は?」

「召喚術……」


 ここまで誘導されてなお、リルは腕を組んで「んー……」と考え込んだ。
 こいつにとってみれば、尊敬するお祖父様が国に害をなしていることを、信じたくはないのかもしれないな。
 ……この調子だとネトラレをなおに叩き込まれちゃったことにも、わずかながら理解がおよぶ。残念なことに。


「とにかく玉座の間へ急ぐぞ! 本格的な被害が出る前に、爺さんを止めるんだ!」

「――うんっ。わかった!」


 再びリルの手を引いて、今度は玉座の間へ向かった。そこにいるといいが……。
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