34 / 93
異世界帰りへ④ 魔法は時として○○にもなります
影響力
しおりを挟む
城に入ると、無数の『お邪魔ぶよ』と城を守る兵士が、熾烈な戦いを繰り広げていた。
剣も槍もカツンカツンと弾き返すだけで、上にのしかかられなければ人畜無害。
だからまあ、危なくはないというか、むしろ必死に攻撃する中で動けない人がザックリいかれないかのほうが心配になるんだけれど……。
剣を収めてくれ――なんて言ったところで、正体不明の敵に城を襲われている状況で、冷静でいられるわけもないしなぁ。
なにせ五年かけた十字大陸統一の間に、この城はただの一つも被害を受けていないんだ。
それが統一を果たした後に正体不明の生物に襲われ――。異常事態にも程があると言ったところだろう。
「とりあえずの心当たりはある! マノンの部屋――いや、俺の部屋に行くぞ!」
「う、うんっ」
リルの手を引っ張って、俺が寝泊まりする客室を目指した。マノンはそこで寝ているはずだ。
この世界で最もイレギュラーな存在はマノンだろう。
王族が支配する世界で、王族を超える力を持ち、それを使いこなす訓練は積んでいない引きこもり……。
基礎的な部分以外で魔法の力が解明されていない世界で超常現象が起こったとなれば、いの一番にイレギュラーな存在である彼女を疑うべきだ。
「マノン!!」
重厚感のあるドアをドタンと開けて、中に向かって叫ぶ。
……しかしマノンは、ベッドの上で布団にくるまって、すやすやと寝息を立てていた。
この物音でも起きないということは、熟睡中なのだろう。
「…………んん?」
俺は困り果てて首を傾げる。
「マノンちゃんが原因――というわけじゃ、ないみたいだけど」
「そうだな。何も変わりがない」
強いて言えば開きっぱなしの本が散らばっているぐらいか。
六法全書と『ぶよぶよ』じゃ、繋がりはなさそうだ。
「なんでマノンちゃんだと思ったの?」
「そりゃ、力の強さ順に……」
言いかけて、ふと思った。
よく考えてみると街の外周での獣害騒ぎは、昨日今日に始まった話じゃないはずだ。
今日は俺がぶよの消しかたを伝えたから、王城にお邪魔ぶよが降ってきた――というだけで。
数日程度遡ると、それだけでマノンと『ぶよぶよ』に関連性は無くなってしまう。
――――と、なると。
「あ、これジジイだわ」
「お祖父様が!?」
驚いているけれど、当然の帰結である。
「だってなぁ。マノンの次に魔法の力が強いのは?」
「お祖父様ね」
「この世界で『日本のゲーム』ができるのは?」
「お祖父様がそういうものを嗜んでいる、とは、聞いている……けれど」
「あの『ぶよ』は日本の超有名パズルゲームに出てくるんだ。同じ色を四つ合わせると消えるのも、空からほとんど透明なお邪魔ぶよが降ってくるところも、まんま同じ。んで、爺さんの得意魔法は?」
「召喚術……」
ここまで誘導されてなお、リルは腕を組んで「んー……」と考え込んだ。
こいつにとってみれば、尊敬するお祖父様が国に害をなしていることを、信じたくはないのかもしれないな。
……この調子だとネトラレを素直に叩き込まれちゃったことにも、僅かながら理解が及ぶ。残念なことに。
「とにかく玉座の間へ急ぐぞ! 本格的な被害が出る前に、爺さんを止めるんだ!」
「――うんっ。わかった!」
再びリルの手を引いて、今度は玉座の間へ向かった。そこにいるといいが……。
剣も槍もカツンカツンと弾き返すだけで、上にのしかかられなければ人畜無害。
だからまあ、危なくはないというか、むしろ必死に攻撃する中で動けない人がザックリいかれないかのほうが心配になるんだけれど……。
剣を収めてくれ――なんて言ったところで、正体不明の敵に城を襲われている状況で、冷静でいられるわけもないしなぁ。
なにせ五年かけた十字大陸統一の間に、この城はただの一つも被害を受けていないんだ。
それが統一を果たした後に正体不明の生物に襲われ――。異常事態にも程があると言ったところだろう。
「とりあえずの心当たりはある! マノンの部屋――いや、俺の部屋に行くぞ!」
「う、うんっ」
リルの手を引っ張って、俺が寝泊まりする客室を目指した。マノンはそこで寝ているはずだ。
この世界で最もイレギュラーな存在はマノンだろう。
王族が支配する世界で、王族を超える力を持ち、それを使いこなす訓練は積んでいない引きこもり……。
基礎的な部分以外で魔法の力が解明されていない世界で超常現象が起こったとなれば、いの一番にイレギュラーな存在である彼女を疑うべきだ。
「マノン!!」
重厚感のあるドアをドタンと開けて、中に向かって叫ぶ。
……しかしマノンは、ベッドの上で布団にくるまって、すやすやと寝息を立てていた。
この物音でも起きないということは、熟睡中なのだろう。
「…………んん?」
俺は困り果てて首を傾げる。
「マノンちゃんが原因――というわけじゃ、ないみたいだけど」
「そうだな。何も変わりがない」
強いて言えば開きっぱなしの本が散らばっているぐらいか。
六法全書と『ぶよぶよ』じゃ、繋がりはなさそうだ。
「なんでマノンちゃんだと思ったの?」
「そりゃ、力の強さ順に……」
言いかけて、ふと思った。
よく考えてみると街の外周での獣害騒ぎは、昨日今日に始まった話じゃないはずだ。
今日は俺がぶよの消しかたを伝えたから、王城にお邪魔ぶよが降ってきた――というだけで。
数日程度遡ると、それだけでマノンと『ぶよぶよ』に関連性は無くなってしまう。
――――と、なると。
「あ、これジジイだわ」
「お祖父様が!?」
驚いているけれど、当然の帰結である。
「だってなぁ。マノンの次に魔法の力が強いのは?」
「お祖父様ね」
「この世界で『日本のゲーム』ができるのは?」
「お祖父様がそういうものを嗜んでいる、とは、聞いている……けれど」
「あの『ぶよ』は日本の超有名パズルゲームに出てくるんだ。同じ色を四つ合わせると消えるのも、空からほとんど透明なお邪魔ぶよが降ってくるところも、まんま同じ。んで、爺さんの得意魔法は?」
「召喚術……」
ここまで誘導されてなお、リルは腕を組んで「んー……」と考え込んだ。
こいつにとってみれば、尊敬するお祖父様が国に害をなしていることを、信じたくはないのかもしれないな。
……この調子だとネトラレを素直に叩き込まれちゃったことにも、僅かながら理解が及ぶ。残念なことに。
「とにかく玉座の間へ急ぐぞ! 本格的な被害が出る前に、爺さんを止めるんだ!」
「――うんっ。わかった!」
再びリルの手を引いて、今度は玉座の間へ向かった。そこにいるといいが……。
0
お気に入りに追加
73
あなたにおすすめの小説
ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ
高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。
タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。
ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。
本編完結済み。
外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。
一家処刑?!まっぴら御免ですわ! ~悪役令嬢(予定)の娘と意地悪(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。
この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。
最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!!
悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
【完結】美しい人。
❄️冬は つとめて
恋愛
「あなたが、ウイリアム兄様の婚約者? 」
「わたくし、カミーユと言いますの。ねえ、あなたがウイリアム兄様の婚約者で、間違いないかしら。」
「ねえ、返事は。」
「はい。私、ウイリアム様と婚約しています ナンシー。ナンシー・ヘルシンキ伯爵令嬢です。」
彼女の前に現れたのは、とても美しい人でした。
「専門職に劣るからいらない」とパーティから追放された万能勇者、教育係として新人と組んだらヤベェ奴らだった。俺を追放した連中は自滅してるもよう
138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「近接は戦士に劣って、魔法は魔法使いに劣って、回復は回復術師に劣る勇者とか、居ても邪魔なだけだ」
パーティを組んでBランク冒険者になったアンリ。
彼は世界でも稀有なる才能である、全てのスキルを使う事が出来るユニークスキル「オールラウンダー」の持ち主である。
彼は「オールラウンダー」を持つ者だけがなれる、全てのスキルに適性を持つ「勇者」職についていた。
あらゆるスキルを使いこなしていた彼だが、専門職に劣っているという理由でパーティを追放されてしまう。
元パーティメンバーから装備を奪われ、「アイツはパーティの金を盗んだ」と悪評を流された事により、誰も彼を受け入れてくれなかった。
孤児であるアンリは帰る場所などなく、途方にくれているとギルド職員から新人の教官になる提案をされる。
「誰も組んでくれないなら、新人を育て上げてパーティを組んだ方が良いかもな」
アンリには夢があった。かつて災害で家族を失い、自らも死ぬ寸前の所を助けてくれた冒険者に礼を言うという夢。
しかし助けてくれた冒険者が居る場所は、Sランク冒険者しか踏み入ることが許されない危険な土地。夢を叶えるためにはSランクになる必要があった。
誰もパーティを組んでくれないのなら、多少遠回りになるが、育て上げた新人とパーティを組みSランクを目指そう。
そう思い提案を受け、新人とパーティを組み心機一転を図るアンリ。だが彼の元に来た新人は。
モンスターに追いかけ回されて泣き出すタンク。
拳に攻撃魔法を乗せて戦う殴りマジシャン。
ケガに対して、気合いで治せと無茶振りをする体育会系ヒーラー。
どいつもこいつも一癖も二癖もある問題児に頭を抱えるアンリだが、彼は持ち前の万能っぷりで次々と問題を解決し、仲間たちとSランクを目指してランクを上げていった。
彼が新人教育に頭を抱える一方で、彼を追放したパーティは段々とパーティ崩壊の道を辿ることになる。彼らは気付いていなかった、アンリが近接、遠距離、補助、“それ以外”の全てを1人でこなしてくれていた事に。
※ 人間、エルフ、獣人等の複数ヒロインのハーレム物です。
※ 小説家になろうさんでも投稿しております。面白いと感じたらそちらもブクマや評価をしていただけると励みになります。
※ イラストはどろねみ先生に描いて頂きました。
祖母の家の倉庫が異世界に通じているので異世界間貿易を行うことにしました。
rijisei
ファンタジー
偶然祖母の倉庫の奥に異世界へと通じるドアを見つけてしまった、祖母は他界しており、詳しい事情を教えてくれる人は居ない、自分の目と足で調べていくしかない、中々信じられない機会を無駄にしない為に異世界と現代を行き来奔走しながら、お互いの世界で必要なものを融通し合い、貿易生活をしていく、ご都合主義は当たり前、後付け設定も当たり前、よくある設定ではありますが、軽いです、更新はなるべく頑張ります。1話短めです、2000文字程度にしております、誤字は多めで初投稿で読みにくい部分も多々あるかと思いますがご容赦ください、更新は1日1話はします、多ければ5話ぐらいさくさくとしていきます、そんな興味をそそるようなタイトルを付けてはいないので期待せずに読んでいただけたらと思います、暗い話はないです、時間の無駄になってしまったらご勘弁を
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
好きにしろ、とおっしゃられたので好きにしました。
豆狸
恋愛
「この恥晒しめ! 俺はお前との婚約を破棄する! 理由はわかるな?」
「第一王子殿下、私と殿下の婚約は破棄出来ませんわ」
「確かに俺達の婚約は政略的なものだ。しかし俺は国王になる男だ。ほかの男と睦み合っているような女を妃には出来ぬ! そちらの有責なのだから侯爵家にも責任を取ってもらうぞ!」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる