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異世界帰りへ② ひきこもる少女は○○を望みます
マノン③ ひきこもり
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学校が嫌で家に引きこもっている少女に、語りかける。
「その気持ち、俺もわかるよ」
彼女をヒロインには選べない。
だが変態国王に追い詰められて引きこもった少女に救いの手を差し伸べてやるのは、人として間違った行為ではないだろう。
中学時代に中二病を拗らせて友達と居場所を失い、部屋に閉じこもった時期が俺にはある。カーテンを閉めて、光を鎖して――。
だから共感できる。
「俺も学校を休んで引きこもったことがあるんだ。あのお爺ちゃんの言ってることも全然理解できない。ただの変態だと思ってる」
まだ言葉の続きがあったのだが、急に嗄れた老人男性の声で「はぅぅッ」とか気持ち悪い音が漏れ聞こえてきたから、俺は国王に視線をやった。
「変態だと思って――」
「はぅっ」
「へんた」
「も、もっと――」
「ド変態ジジイ」
「ぅくぅ――――っ」
なるほど。本格的に目覚めたようだな。気持ち悪っ。
ほら見ろよ。侍従と近衛兵が顔を引き攣らせて、マノンに至っては明らかに汚物を扱う目だぞ。パティだけは平然としているけれど……、なんで?
「…………こほん。――ごめんな、マノンちゃん。この通り、あの爺さんはもう駄目なんだ。あんな人の作る学校になんて行かなくていいし、行かなくてよかった。俺だって学校に行かないで引きこもったことがあるけれど……。でもほら、こうして大人になれているだろ?」
異世界召喚という極めてイレギュラーな展開を経て、だけど。
「……あの、もしかしてお兄ちゃんが、『英雄様』?」
お兄ちゃん――――。なんだろうね、この古典的かつ破壊力抜群の胸キュンワード。
マノンみたいな子に言われると余計に胸を打つ。
でもなんで俺のことを英雄だとわかったんだろう?
パレードでは盛大に祝ってもらえたけど、安全がどうとかで街道の人とは結構距離が遠かったからなぁ。
引きこもっているなら見に来てもいなさそうだし。
……ああそうか。ヒロイン養成学校に所属しているなら、俺が召喚された経緯や十字大陸が統一国家となった後にヒロインが日本へ渡ることぐらいは、聞かされているのだろう。
広く喧伝する新聞でもないし、顔写真の一つぐらい見せられていると想像できる。
「――そうだよ」
俺はできるだけ優しく微笑んで、答えた。
「すごい! 日本ってどんなところ? 引きこもってる間、どうやって生活していたの!?」
興味津々といった様子だ。
好感度も大きく上昇してきた。
「その気持ち、俺もわかるよ」
彼女をヒロインには選べない。
だが変態国王に追い詰められて引きこもった少女に救いの手を差し伸べてやるのは、人として間違った行為ではないだろう。
中学時代に中二病を拗らせて友達と居場所を失い、部屋に閉じこもった時期が俺にはある。カーテンを閉めて、光を鎖して――。
だから共感できる。
「俺も学校を休んで引きこもったことがあるんだ。あのお爺ちゃんの言ってることも全然理解できない。ただの変態だと思ってる」
まだ言葉の続きがあったのだが、急に嗄れた老人男性の声で「はぅぅッ」とか気持ち悪い音が漏れ聞こえてきたから、俺は国王に視線をやった。
「変態だと思って――」
「はぅっ」
「へんた」
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「ぅくぅ――――っ」
なるほど。本格的に目覚めたようだな。気持ち悪っ。
ほら見ろよ。侍従と近衛兵が顔を引き攣らせて、マノンに至っては明らかに汚物を扱う目だぞ。パティだけは平然としているけれど……、なんで?
「…………こほん。――ごめんな、マノンちゃん。この通り、あの爺さんはもう駄目なんだ。あんな人の作る学校になんて行かなくていいし、行かなくてよかった。俺だって学校に行かないで引きこもったことがあるけれど……。でもほら、こうして大人になれているだろ?」
異世界召喚という極めてイレギュラーな展開を経て、だけど。
「……あの、もしかしてお兄ちゃんが、『英雄様』?」
お兄ちゃん――――。なんだろうね、この古典的かつ破壊力抜群の胸キュンワード。
マノンみたいな子に言われると余計に胸を打つ。
でもなんで俺のことを英雄だとわかったんだろう?
パレードでは盛大に祝ってもらえたけど、安全がどうとかで街道の人とは結構距離が遠かったからなぁ。
引きこもっているなら見に来てもいなさそうだし。
……ああそうか。ヒロイン養成学校に所属しているなら、俺が召喚された経緯や十字大陸が統一国家となった後にヒロインが日本へ渡ることぐらいは、聞かされているのだろう。
広く喧伝する新聞でもないし、顔写真の一つぐらい見せられていると想像できる。
「――そうだよ」
俺はできるだけ優しく微笑んで、答えた。
「すごい! 日本ってどんなところ? 引きこもってる間、どうやって生活していたの!?」
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