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異世界帰りへ② ひきこもる少女は○○を望みます

マノン② 汚い大人は嫌いです

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 小屋の中から出てきた少女が、言い放つ。


「私は汚い大人がきらいなの! 早く帰って!」


 顔立ちは良いが服の上からでも一見してわかるぺったんこな胸に、恐らくまだ成長の余地を残している低い身長。
 幼い声で大人を嫌いだと主張する姿は、まあ可愛いと言えば可愛いではあるのだが。
 さすがに子供すぎてヒロインとしてはちょっと……。
 十代前半か、よくてちゆうばん…………日本なら中学生か、精々、高校一年生ぐらいといったところかな。さすがに小学生ではないと信じたい。

 残念だけど、彼女は個人的な条件を満たしていない。
 わざわざ好みでもない女の子を、いくら可愛いとは言え連れ帰る必要はなかろう。
 ここは早いところ話を終えて帰るのがきち、だな。


「陛下、彼女ではさすがに幼すぎて、ヒロインにすることは――」


 日本に連れ帰ったらヒロインはよめになるという前提なわけで。
 こんな子を嫁にしようとしたって、日本じゃこんいん可能年齢に届かないし……。
 俺もう二十一だから、世間様にも冷たい目を向けられるだろう。それはかんべん願いたい。


「ふむ……。まあ、常識的にそうじゃろうな。彼女の年齢をかんがみれば幼すぎるということは、ワシも重々承知しておる。いくら約束と言えど犯罪まがいの紹介は気が引けるのう」


 ネトラレ属性を国中の美少女、あまつさえ人妻にまで叩きんでる変態ジジイのくせに、何を急に常識人ぶっているんだか。
 つうか……。


「そんな子供にネトラレを叩き込むのは、常識的に考えてどうなんですかねー」


 よく考えたら、こんな子供までもがヒロイン養成学校の生徒ならば、ジジイは国家権力をかざしてちくきわまりないことをしている。
 だがライカブルで確認した限り、この子は俺に対する好感度が低くない。嫌いな大人、というわくみの中に、俺は入っていないのか……?

 ためしに軽くかがんで視線を落とし、長く白っぽいぎんぱつのツルペタ少女に、声をかけてみる。
 髪の色は成長と共に変わることがあるからか、下のほうがより白く、上のほうは僅かに茶褐色が混ざっている。これも幼さの証明だ。


「名前だけ、教えてもらえるかな?」

「……マノン」

「そっかぁ。マノンちゃんは、どうして大人が嫌いなのかな?」


 するとマノンはジッとだまって、顔をうつむかせた。
 わずかにほおが赤くなっているような気もする。

 同時に、じわりと好感度が上がった。

 ひょっとしたら俺のことを、相談できるお兄さん――ぐらいの感覚でとらえているのかもしれない。それならちょっとうれしいかも。
 少女はおもむろうでを上げると、国王を指差して言った。


「ネトラレを理解しないと立派な大人にはなれない――って、このお爺ちゃんが! 私、そんなこと知りたくなかった!!」


 俺は思わずジト目になってジジイを見る。
 白いひげを手ででて視線を空に投げ、『ワシは関係ないぞよ』というような態度を取っているが……。
 このド変態め! いたいな女の子に何を叩き込んでやがる!


「……それで私、学校に行くのが嫌で……家に、引きこもって……」


 なるほど。そりゃそうだ。当たり前の感覚が残っていてよかった。
 そして話の前段はさん極まりないが、『学校に行くのが嫌で』というところだけを切り取れば、日本でもよく聞く台詞せりふである。
 事情を打ち明けることができたからか、またじわりと好感度が上がった。
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