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4 仕事場
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僕はカーテルに連れられ、町の港に来ていた。当然、カーテル以外にもウィスペルと呼ばれた紫色の髪をしていて、銀色の瞳が怖い女性もいる。
僕ら三人は、港につながれている木製ボートの上で、絹の下に他の荷物と共に隠れていた。カーテルとウィスペルが、その中からちらりと港の方を一定間隔で見張っている。
「……もうすぐだな」
家にいたときのずぼらな服とは違い、今のウィスペルは襟の高い白いコートを身にまとっていて、いかにも『できる』人になっていた。どちらかというとカッコいい。
半面、カーテルはまるでデートに行くような恰好をしている。丈の長いスカートに、大きな胸を強調させるような薄い緑色の服。そんなカーテルを僕が見ていると、その視線に気づいた彼女がほほ笑んだ。
「どう? かわいいでしょ?」
「……う」
微笑む彼女に対し、僕は慌てて目線を反らす。そんな僕を、カーテルは「かわいい~」と言って抱きしめた。僕はさらに混乱して、目が回っている気がした。
そんな僕たちを見て、ウィスペルは軽くため息をついた。と、その視線が港の地上ではなく、海上へ素早く移動する。
「片方が来たぞ」
カーテルも一気に真面目な瞳になって、ウィスペルと同じ方向を見つめた。僕も二人の邪魔にならないよう、その方向を見る。
時はすでに黄昏時。夕暮れの赤で外は染まっていた。
そしてその赤が反射する海上。そこには一隻の船が港へ向かってきていた。
「じゃあ、もうそろそろ顔を出すわね」
カーテルは港の地上部分の方へ視線を向ける。
その彼女の視線は、さっきまでの僕に向けているような目ではなく、真剣そのものだった。そのギャップに僕は思わずドキリとする。今の彼女の横顔はとてもかっこよかった。
その彼女に見惚れていた僕であったが、すぐに煩悩を振り払って、彼女と同じ方向へ僕も目を向けた。
「……出て来たな」
ウィスペルがぼそりと呟く。
船が着た途端に、港にある大きな倉庫の建物からパラパラと人影が出てきた。僕は目を細めてよく見てみると、その腰には剣だったり、杖だったりと物騒なものを引っ提げている。
「船に乗ってるのは……魔炎石だっけ?」
「違う。爆炎岩だったな。ちょっと突くと爆発するやつ」
爆炎岩――僕もその響きには聞き覚えがあった。刺激を与えると辺りを巻き込んで大爆発を起こすA級危険物指定されている代物だ。国から特別な許可が下りない限り、採石や運搬、利用はできないことになっているはず。
「……密輸現場ってこと?」
僕はついついぼやいてしまった。カーテルとウィスペルの視線が僕に集中し、僕は慌ててすぐさま口を手で押さえる。
そんな僕を見て、カーテルはなんとにこやかに笑って僕を抱きしめた。
想像では怪訝そうな目を向けてきたり、ちょっと怒られるのではないかと思っていたので、面食らう。
「そういうことー! 賢いね!」
「うぐ……」
これほどにないまでに強く抱きしめられ、思わず声が出てしまった。
そんな僕たちを気にする風もなくじっと見つめていたウィスペルは、普通に視線を港の連中に向きなおす。
「あの船にはそれが乗っているはずだ。……対面の時に船から離れるのは多くても二、三人。船には数人ほど見張りを残すはず。私にはそいつらを殺るのは能力的に無理だ。たぶん爆炎岩が誘爆する」
「分かった。私が船に残った見張りを最優先で殺ればいいのね」
「そう。それが初弾でいく」
滞りなく決まっていく作戦。それを聞いた僕は心なしか鼓動が嫌な感じにバクバクと大きくなっていくのを感じる。もちろん、これはカーテルに抱きしめられたとか、そういうことから派生したことではない。
――殺る、か。やっぱり、この人達は僕と同じ……。
穢れた手で顔を洗って食べ物を食べている人。
僕は二人の間で、ごくんと息を呑んだ。
僕ら三人は、港につながれている木製ボートの上で、絹の下に他の荷物と共に隠れていた。カーテルとウィスペルが、その中からちらりと港の方を一定間隔で見張っている。
「……もうすぐだな」
家にいたときのずぼらな服とは違い、今のウィスペルは襟の高い白いコートを身にまとっていて、いかにも『できる』人になっていた。どちらかというとカッコいい。
半面、カーテルはまるでデートに行くような恰好をしている。丈の長いスカートに、大きな胸を強調させるような薄い緑色の服。そんなカーテルを僕が見ていると、その視線に気づいた彼女がほほ笑んだ。
「どう? かわいいでしょ?」
「……う」
微笑む彼女に対し、僕は慌てて目線を反らす。そんな僕を、カーテルは「かわいい~」と言って抱きしめた。僕はさらに混乱して、目が回っている気がした。
そんな僕たちを見て、ウィスペルは軽くため息をついた。と、その視線が港の地上ではなく、海上へ素早く移動する。
「片方が来たぞ」
カーテルも一気に真面目な瞳になって、ウィスペルと同じ方向を見つめた。僕も二人の邪魔にならないよう、その方向を見る。
時はすでに黄昏時。夕暮れの赤で外は染まっていた。
そしてその赤が反射する海上。そこには一隻の船が港へ向かってきていた。
「じゃあ、もうそろそろ顔を出すわね」
カーテルは港の地上部分の方へ視線を向ける。
その彼女の視線は、さっきまでの僕に向けているような目ではなく、真剣そのものだった。そのギャップに僕は思わずドキリとする。今の彼女の横顔はとてもかっこよかった。
その彼女に見惚れていた僕であったが、すぐに煩悩を振り払って、彼女と同じ方向へ僕も目を向けた。
「……出て来たな」
ウィスペルがぼそりと呟く。
船が着た途端に、港にある大きな倉庫の建物からパラパラと人影が出てきた。僕は目を細めてよく見てみると、その腰には剣だったり、杖だったりと物騒なものを引っ提げている。
「船に乗ってるのは……魔炎石だっけ?」
「違う。爆炎岩だったな。ちょっと突くと爆発するやつ」
爆炎岩――僕もその響きには聞き覚えがあった。刺激を与えると辺りを巻き込んで大爆発を起こすA級危険物指定されている代物だ。国から特別な許可が下りない限り、採石や運搬、利用はできないことになっているはず。
「……密輸現場ってこと?」
僕はついついぼやいてしまった。カーテルとウィスペルの視線が僕に集中し、僕は慌ててすぐさま口を手で押さえる。
そんな僕を見て、カーテルはなんとにこやかに笑って僕を抱きしめた。
想像では怪訝そうな目を向けてきたり、ちょっと怒られるのではないかと思っていたので、面食らう。
「そういうことー! 賢いね!」
「うぐ……」
これほどにないまでに強く抱きしめられ、思わず声が出てしまった。
そんな僕たちを気にする風もなくじっと見つめていたウィスペルは、普通に視線を港の連中に向きなおす。
「あの船にはそれが乗っているはずだ。……対面の時に船から離れるのは多くても二、三人。船には数人ほど見張りを残すはず。私にはそいつらを殺るのは能力的に無理だ。たぶん爆炎岩が誘爆する」
「分かった。私が船に残った見張りを最優先で殺ればいいのね」
「そう。それが初弾でいく」
滞りなく決まっていく作戦。それを聞いた僕は心なしか鼓動が嫌な感じにバクバクと大きくなっていくのを感じる。もちろん、これはカーテルに抱きしめられたとか、そういうことから派生したことではない。
――殺る、か。やっぱり、この人達は僕と同じ……。
穢れた手で顔を洗って食べ物を食べている人。
僕は二人の間で、ごくんと息を呑んだ。
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