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第三章 コルマノン大騒動
72 影
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シルヴァとドルフは二人でライニー家とのいざこざを解決する策を練っていたものの、残念ながら具体的な策をだすことはできなかった。
そんなこんなで考えている内に、隣の部屋から微かに聞こえてきた話し声や物音が消えていた。恐らく、シアンとニーナが就寝したのだろう。それに気づいた二人は、このまま考えていても良い案は浮かばないだろうということで、彼女らに倣って寝ることにした。
部屋の明かりを消して、それぞれの布団に入る。
明日は色々と動かなくてはならない。早ければ明日にでも何かアクションを起こしてくるだろう。役所に勤めるディヴィがある程度の情報を知らせてくれるとは思うけれど、そこまで有用なものは望めない。所詮は役所と住民の関係であり、役人だからとライニー家に大きく踏み込むことはできないし、そもそもライニー家がそんなことをさせるとは思えなかった。
だから、ディビィによって与えられる情報はほんの雀の涙程度のものだろうと推測できる。が、それでも無いよりはマシだ。
慣れない空気。
目を閉じて、しんと静まり返った部屋の空気に呑まれ、夢を見ようとするも、何だか肌に合わない暗闇がそれを阻害する。
シルヴァは別に枕が変わったから眠れなくなるというようなことはない。そもそも、冒険者として町を転々としていたこともあり、そういうことには慣れている。
では、何が原因で眠れないのか。
「……」
瞳を開けて、薄暗い天井を見つめた。そして目をつぶった。
今、目を閉じたのは眠るためではない。感覚を研ぎ澄ますためだ。眠れないのがただの杞憂だったらまだ良い。しかしそれが、虫の知らせのような、原因を解明できない得体のしれないものだとしたら……。
静まった暗い部屋は心なしか通常以上に冷たい空気が沈殿している気がする。
「……」
瞼の裏の暗闇は何も映さない。シルヴァはそのまま耳をすます。
窓をかすかに打ち付ける、ごくわずかな風の音。家鳴り。そして――。
「――っ!」
静寂を劈く高い音。月光に反射して、飛び散ったガラスの破片がキラキラと薄く光った。
「なっ……!」
隣で眠っていたドルフも、部屋の窓が割れた音に気づいて跳び起きる。シルヴァは一足先に反応していて、窓をかち割って侵入してきた人影へと枕もとに置いてあった、冷たい『虚無の短銃』を手に取った。
そしてそれを侵入者へ構えようとしたところで、ふとシルヴァの視線が泳いだ。
人影がどこにもいない。
しかしその直後、シルヴァの首元に冷たく鋭いものが突き付けられた。その感覚はあるものの、前の前には暗闇が広がっているだけ。『首元へ突き付けられているもの』が見えない。シルヴァはビクリと驚き、肩を震わせる。それと同時に瞬きを一回。そう、たった一回瞬きをしただけなはずだった。
シルヴァは瞬きの一瞬で現れた人影に思わず息を呑んだ。シルヴァの首元には小型のナイフが突きつけられている。
「動くな」
その人影はシルヴァにナイフを突きつけながら、そう低く唸ったのだった。
そんなこんなで考えている内に、隣の部屋から微かに聞こえてきた話し声や物音が消えていた。恐らく、シアンとニーナが就寝したのだろう。それに気づいた二人は、このまま考えていても良い案は浮かばないだろうということで、彼女らに倣って寝ることにした。
部屋の明かりを消して、それぞれの布団に入る。
明日は色々と動かなくてはならない。早ければ明日にでも何かアクションを起こしてくるだろう。役所に勤めるディヴィがある程度の情報を知らせてくれるとは思うけれど、そこまで有用なものは望めない。所詮は役所と住民の関係であり、役人だからとライニー家に大きく踏み込むことはできないし、そもそもライニー家がそんなことをさせるとは思えなかった。
だから、ディビィによって与えられる情報はほんの雀の涙程度のものだろうと推測できる。が、それでも無いよりはマシだ。
慣れない空気。
目を閉じて、しんと静まり返った部屋の空気に呑まれ、夢を見ようとするも、何だか肌に合わない暗闇がそれを阻害する。
シルヴァは別に枕が変わったから眠れなくなるというようなことはない。そもそも、冒険者として町を転々としていたこともあり、そういうことには慣れている。
では、何が原因で眠れないのか。
「……」
瞳を開けて、薄暗い天井を見つめた。そして目をつぶった。
今、目を閉じたのは眠るためではない。感覚を研ぎ澄ますためだ。眠れないのがただの杞憂だったらまだ良い。しかしそれが、虫の知らせのような、原因を解明できない得体のしれないものだとしたら……。
静まった暗い部屋は心なしか通常以上に冷たい空気が沈殿している気がする。
「……」
瞼の裏の暗闇は何も映さない。シルヴァはそのまま耳をすます。
窓をかすかに打ち付ける、ごくわずかな風の音。家鳴り。そして――。
「――っ!」
静寂を劈く高い音。月光に反射して、飛び散ったガラスの破片がキラキラと薄く光った。
「なっ……!」
隣で眠っていたドルフも、部屋の窓が割れた音に気づいて跳び起きる。シルヴァは一足先に反応していて、窓をかち割って侵入してきた人影へと枕もとに置いてあった、冷たい『虚無の短銃』を手に取った。
そしてそれを侵入者へ構えようとしたところで、ふとシルヴァの視線が泳いだ。
人影がどこにもいない。
しかしその直後、シルヴァの首元に冷たく鋭いものが突き付けられた。その感覚はあるものの、前の前には暗闇が広がっているだけ。『首元へ突き付けられているもの』が見えない。シルヴァはビクリと驚き、肩を震わせる。それと同時に瞬きを一回。そう、たった一回瞬きをしただけなはずだった。
シルヴァは瞬きの一瞬で現れた人影に思わず息を呑んだ。シルヴァの首元には小型のナイフが突きつけられている。
「動くな」
その人影はシルヴァにナイフを突きつけながら、そう低く唸ったのだった。
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