名の無い魔術師の報復戦線 ~魔法の天才が剣の名家で産まれましたが、剣の才能がなくて追放されたので、名前を捨てて報復します~
アレフ・ブレイブは優秀な剣聖の家系に生まれたものの、剣の才能が全くなかった。
けれど、ひょんな事から魔法に興味を持ち、自室である物置小屋で独学で魔法をマスターしていくも、ある日父親ジャコブ・ブレイブに魔法の入門書が見つかってしまう。
「剣技も録に会得できないくせに、魔法なんぞにかまけていたのか! 剣も振れないお前など、ブレイブ家の恥さらしだ! もう出て行け!」
「そ、そんな……!」
アレフは剣の稽古をサボっていたわけでもなく、魔法の研究は空いた小さな時間でやっていたのに、ジャコブに家から追放されてしまう。
さらには、ジャコブにより『アレフ・ブレイブ』は病死したことにされてしまい、アレフは名前すら失ってしまった。
「うっ……」
今までずっと住んできた屋敷から追い出され、それによりアレフ――否、名無しの少年が得たものは不安だけだった。
大粒の涙をこぼして、追い出された屋敷の近くの森の中で静かに泣いた。外はもう暗くなっていて、そこら中から獣のうめき声が聞こえる。
とてつもない悲しみに少年は打ちひしがれていた。けれど、彼は立ち上がる。
「……行かなきゃ」
ぽつぽつと一人、少年は歩み始めた。――生まれ育った屋敷に背を向けて。
「アレフ・ブレイブは……死んじゃったんだ……僕はもう、アレフじゃないんだ……」
名前を失った少年はただ暗い森の中を歩く。
その先に明日があるのかも分からないけれど、とにかく歩いた。
少年はぼそっと呟く。
「……そうだ。まずは僕が誰なのか、名前をつけないと……僕が僕であるために……」
「名前……そういえば、男の魔法使いはウィザードって呼ばれることがあるんだっけ……。なら僕は……」
「――ウィズ。そう名乗ろう」
足を止めていたウィズはまた歩き出した。その先には何があるのか分からないけど、後ろには戻れない。
「……さようなら、アレフ・ブレイブ」
ウィズは今までの自分に別れを告げると、暗闇の中に消えていったのだった。
――物語が動き出すのは、『ウィズ』と名乗る青年が雑貨店を営み始め、数年後のことになる――。
けれど、ひょんな事から魔法に興味を持ち、自室である物置小屋で独学で魔法をマスターしていくも、ある日父親ジャコブ・ブレイブに魔法の入門書が見つかってしまう。
「剣技も録に会得できないくせに、魔法なんぞにかまけていたのか! 剣も振れないお前など、ブレイブ家の恥さらしだ! もう出て行け!」
「そ、そんな……!」
アレフは剣の稽古をサボっていたわけでもなく、魔法の研究は空いた小さな時間でやっていたのに、ジャコブに家から追放されてしまう。
さらには、ジャコブにより『アレフ・ブレイブ』は病死したことにされてしまい、アレフは名前すら失ってしまった。
「うっ……」
今までずっと住んできた屋敷から追い出され、それによりアレフ――否、名無しの少年が得たものは不安だけだった。
大粒の涙をこぼして、追い出された屋敷の近くの森の中で静かに泣いた。外はもう暗くなっていて、そこら中から獣のうめき声が聞こえる。
とてつもない悲しみに少年は打ちひしがれていた。けれど、彼は立ち上がる。
「……行かなきゃ」
ぽつぽつと一人、少年は歩み始めた。――生まれ育った屋敷に背を向けて。
「アレフ・ブレイブは……死んじゃったんだ……僕はもう、アレフじゃないんだ……」
名前を失った少年はただ暗い森の中を歩く。
その先に明日があるのかも分からないけれど、とにかく歩いた。
少年はぼそっと呟く。
「……そうだ。まずは僕が誰なのか、名前をつけないと……僕が僕であるために……」
「名前……そういえば、男の魔法使いはウィザードって呼ばれることがあるんだっけ……。なら僕は……」
「――ウィズ。そう名乗ろう」
足を止めていたウィズはまた歩き出した。その先には何があるのか分からないけど、後ろには戻れない。
「……さようなら、アレフ・ブレイブ」
ウィズは今までの自分に別れを告げると、暗闇の中に消えていったのだった。
――物語が動き出すのは、『ウィズ』と名乗る青年が雑貨店を営み始め、数年後のことになる――。
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ご指摘ありがとうございます!直しておきます!
いえいえ逆に一般的に理解出来る話の構成だから呆れられて無視されてるとかでなくて安心しました
先程120まで読み終えてなんで117と119のあいだが108なのかと疑問に思った以外はとてもスムーズに物語に没入できました
続きとても楽しみにしてます
ありがとうございます!
嬉しかったので更新しました。
また次回の更新を早くできるかは分かりませんが、気長に待っていただけると幸いです。
返信遅れてしまってすみません…!
ルインさん仰る通りで、そこは『ブレイブ家』ですね……。自分が間違えて書いていました……orz 混乱させてしまってごめんなさい。
すぐに修正させていただきます……! 報告ありがとうございます! 重ねて、返信遅れてしまってすみませんでした。
誤字報告
「・・・フィリアがソニアに上質な剣を扱っている”馬車”はないか・・・」のくだりの”馬車”は”場所”ですかね。
誤字報告ありがとうございます。
仰る通り"場所"です(〃ω〃)
修正しました!
ドラちゃんが可愛い♡
コメントありがとうございますー!
癒し(?)キャラですね!
大胆で協力な魔法
強力
コメントありがとうございます!
修正させていただきました!いつも読んでくださりありがとうございます!
63ページ ソニアがソナイになっています
コメントありがとうございます!
おって修正させていただきます!
62ページ誤字?
述者って術者?
コメントありがとうございます!!
術者です! たくさんの誤字報告ありがとうございます! おって修正しますね!
12ページご
ヒューレットのソニアをひっ叩いた
ヒューレットが
1ページ
アレフは執事たちに~施錠した。
文面から
施錠した。のではなく、施錠させられた。
9ページ誤字
剣聖御三家 が 聖剣御三家
コメントありがとうございます!
蚊帳の外にいますからね……。渦中に入る日はくるのでしょうか……。
コメントありがとうございます!
ノブレス・オブリージュなんてよく知っておられますね……。
アーク家にも色々あるのかもですね。ウィズは……うん……。
コメントありがとうございます!
アレフの実家とはえらい違いですよね……。
どうしてここまで魔法に対して積極的なのでしょうか。もしかしたら何か目的があるのかもしれません……。
コメントありがとうございます!
あんなんでも『アーク家』ですからね~。
ウィズさんは『アーク家』なんて真面目にどうでも良いのかもしれません。明確な標的がありますからね。
ウィズ、やっぱりラノベの主人公なんだねぇ、そういうとこ😁
コメントありがとうございます!
そうですねえ! めっちゃラノベ主人公ですな!
ウィズさん……。これが悪い意味での 八方美人というヤツでしょうか? もしも何らかの組織にウィズさんが所属していたら、人と人の間を取り持つ役回り・調整係とかがまわってきそうですな。
相手の考えを想定した上で、自分の本音とは真逆の台詞をすぐに出せる所とか、真似出来そうにはないなーと。 これらの苦労も目的のためになるはず、なのですよね、たぶんきっと。
コメントありがとうございます!
たぶんウィズは状況的に八方美人になるしかなかったじゃないかなーって感じですね。ウィズはそういうの割と得意そうです。それが得意ってだけで、本人の性格とかとかみ合ってるかは分かりませんが……。
苦労が報われるといいですね……。
32 浮き沈み
でもさ、ウィズ。キミってフィイア様
多分フィリア様だと思うんだけど誤字だよね?
コメントありがとうございます!
誤字です!おって修正させていただきます!
コメントありがとうございます!
アルトも『アーク家』ですからね。フィリアと同じように、『アーク家』として色々と思うところとかがあるのかもしませんね。
25話に騎馬の才能等とあるのですが、この場合、乗馬の才能の方が正しいかと。
コメントありがとうございます!
おって修正させていただきます!
ウィズは変わっていくのかな?
コメントありがとうございます!
どの方向に変わっていくのか……。それが良い方向だと良いんですけどねえ。
ウィズさん、感情的動機で動いているのに ものすごく冷静で理性的な判断されますな。 似たような境遇で同志ともなり得るはずのフィリアさんを騙して利用しようとはせず、なんやかんやで周囲に余計な犠牲を出さないようにしているようにも見えますし。 個人的には、「悪」になりきれない事や フィリアさんと自分を比較して辛くなったりはしないのか?とも感じますが。
復讐には意義は確かに有るはずですが、ウィズさんが復讐を達成したとしてその後に 何か残るモノが有るように思えないのですよな。 燃えかすにならないよう、復讐以外の生き続ける理由や幸せを見つけて欲しいです。
コメントありがとうございます!
そうですね……ウィズの行動原理は案外感情由来なのが多いのかもしれません。フィリアとの関係性も何か思うところがあるのかもしれませんね。
復讐は何も生まなないってよく言いますからね……。ウィズがどのような選択をするのか、お楽しみいただけたらと思います。
少しは気持ちは分かるけど、こんな素晴らしい力を手に入れて自由に生きられるのに復讐に生きるとか。
物語の設定上仕方ないのだろうけど、もったいないなぁ。これじゃぁ、主人公を捨てた連中と同じ穴の狢かな。同じ土俵に上がろうとしているのだから。
コメントありがとうございます!
確かに自由に生きた方が人生楽しくなりそうですよね〜。
復讐の動機が思っているより根強いのかもしれません……。
ぷっ、アーク家面白いですわね。
父も相当豪快な方のように想像しております。
面白いので、一気に拝読いたしました。
更新をお待ちしております。
コメントありがとうございます!
アルトの一人でもうるさいあの感じ、自分も気に入っています。
しかしアルトも『アーク家』なので、フィリアと通じるところはあるかもですね。
お褒めの言葉ありがとうございます!!更新頑張ります!
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