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龍神の里に雪が降る③
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「あ…」
「あ…」
その日の夜遅く、部屋に戻ったものの眠れなくて水を飲みに行った空は、同じく水を飲みに来ていた恭介と遭遇してしまう。
「眠れないのか?」
そう訊かれて、空は小さく頷く。
恭介はコップにお水を入れると、空に手渡した。
「ありがとうございます」
空がコップを受け取ると、恭介が部屋へと戻ろうとする。
「あの…」
意を決して声を掛けた空に、恭介が不思議そうに振り返る。
「ちょっとお時間をいただけませんか?」
空に言われて首を傾げる。
「別に構わないけど…こんな夜中に?」
「はい。明日の朝だと、忘れてしまいそうなので」
空に言われて、恭介は空の後に続く。
屋敷の最奥にある空の部屋に着くと
「どうぞ」
と中へ招かれる。
空は引き出しから白い狐のお面と、可愛らしい子供用のピンクの浴衣を取り出した。
そして先日、恭介が見つけたハンカチを乗せると
「これをお返ししなけければと…」
そう言って風呂敷に包むと、恭介に差し出した。
「ハンカチは分かるけど…その子供用の浴衣は、座敷童子のじゃないの?あと、白い狐のお面は何?」
と訊くと、空は小さく笑って
「あとで思い出します」
そう答えた。
恭介は首を傾げながら
「もし、子供用の浴衣も俺が関係している物なら、座敷童子に着させてやってくれないか?狐のお面は、風太に」
そう言って風呂敷を開けてハンカチだけ取り出した。
「これだけは…返してもらうよ」
恭介がそれだけ言って部屋から出ようとすると
「あの…」
と、空が声を掛けた。
疑問に思って振り返ろうとすると、空が背中にそっと手を当てて額を当てた。
(え……?)
驚いて固まる恭介に空は
「美咲さんに言われました。最後くらい、我儘を言ったらどうかと…」
そう呟く。
「藤野君に?」
空の顔が見たくて振り向こうとすると
「そのままで聞いて下さい。私はずっと…あなたが好きでした。初めて出会った頃からずっと…。でもそれは…あなたを苦しめるだけでした。だから、謝らないでください。風太の事も、私は風太が居たからここまで生きて来られました。だから、私の方こそ『ありがとう』を言わせて下さい。私は…あなたと再び出会えて幸せでした」
そう呟いた。
恭介は空の手を掴んで引き寄せると、
「あんた…こんな夜中に男を部屋に連れ込んで、そんな事言ったらどうなるのか分かってるのか?」
と言うと、唇を重ねた。
「恭介さん…愛しています」
唇が離れた時、空は涙を浮かべてそう微笑んだ。
もう…自分の感情を押さえるのは無理だった。
このまま何もせず、離れた方がお互いの為だと思っていた。
お互いの頬に触れ、口付けを交わす。
黙って見つめ合うだけで、もう言葉は要らなかった。
空は、2度と触れる事が許されないと…そう思っていた恭介の背中に手を回して瞳を閉じた。
これが本当の最後の別れになると、そう心の中で覚悟を決めてーーー。
「あ…」
その日の夜遅く、部屋に戻ったものの眠れなくて水を飲みに行った空は、同じく水を飲みに来ていた恭介と遭遇してしまう。
「眠れないのか?」
そう訊かれて、空は小さく頷く。
恭介はコップにお水を入れると、空に手渡した。
「ありがとうございます」
空がコップを受け取ると、恭介が部屋へと戻ろうとする。
「あの…」
意を決して声を掛けた空に、恭介が不思議そうに振り返る。
「ちょっとお時間をいただけませんか?」
空に言われて首を傾げる。
「別に構わないけど…こんな夜中に?」
「はい。明日の朝だと、忘れてしまいそうなので」
空に言われて、恭介は空の後に続く。
屋敷の最奥にある空の部屋に着くと
「どうぞ」
と中へ招かれる。
空は引き出しから白い狐のお面と、可愛らしい子供用のピンクの浴衣を取り出した。
そして先日、恭介が見つけたハンカチを乗せると
「これをお返ししなけければと…」
そう言って風呂敷に包むと、恭介に差し出した。
「ハンカチは分かるけど…その子供用の浴衣は、座敷童子のじゃないの?あと、白い狐のお面は何?」
と訊くと、空は小さく笑って
「あとで思い出します」
そう答えた。
恭介は首を傾げながら
「もし、子供用の浴衣も俺が関係している物なら、座敷童子に着させてやってくれないか?狐のお面は、風太に」
そう言って風呂敷を開けてハンカチだけ取り出した。
「これだけは…返してもらうよ」
恭介がそれだけ言って部屋から出ようとすると
「あの…」
と、空が声を掛けた。
疑問に思って振り返ろうとすると、空が背中にそっと手を当てて額を当てた。
(え……?)
驚いて固まる恭介に空は
「美咲さんに言われました。最後くらい、我儘を言ったらどうかと…」
そう呟く。
「藤野君に?」
空の顔が見たくて振り向こうとすると
「そのままで聞いて下さい。私はずっと…あなたが好きでした。初めて出会った頃からずっと…。でもそれは…あなたを苦しめるだけでした。だから、謝らないでください。風太の事も、私は風太が居たからここまで生きて来られました。だから、私の方こそ『ありがとう』を言わせて下さい。私は…あなたと再び出会えて幸せでした」
そう呟いた。
恭介は空の手を掴んで引き寄せると、
「あんた…こんな夜中に男を部屋に連れ込んで、そんな事言ったらどうなるのか分かってるのか?」
と言うと、唇を重ねた。
「恭介さん…愛しています」
唇が離れた時、空は涙を浮かべてそう微笑んだ。
もう…自分の感情を押さえるのは無理だった。
このまま何もせず、離れた方がお互いの為だと思っていた。
お互いの頬に触れ、口付けを交わす。
黙って見つめ合うだけで、もう言葉は要らなかった。
空は、2度と触れる事が許されないと…そう思っていた恭介の背中に手を回して瞳を閉じた。
これが本当の最後の別れになると、そう心の中で覚悟を決めてーーー。
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