風の唄 森の声

坂井美月

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隠された記憶②

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空は悲しそうに顔を歪ませると
「それが…思い出さない方が良い記憶だとしても…ですか?」
と呟いた。
「それは俺が決める!あんたには分かるか?2年間、自分が何処で何をしていたのかを忘れている人間の気持ちが!」
恭介が叫ぶと
「止めろ!」
と声が聞こえた。
物凄い疾風が恭介を覆い、空の肩を掴んで居た手が離れる。
すると空の前に風太と座敷童子が立ちはだかり
「空をいじめるな!」
そう叫んで恭介を睨んだ。
「風太、違うんだ!」
「何が違うんだよ!空が、悲しそうな顔してるだろう!オイラ、恭介が大好きだけど、空を苛める恭介は大嫌いだ!」
風太が叫ぶと、河原の辺りに風の渦が現れ、恭介は前が見えないほどの風に覆われてしまう。
「風太!ダメ!」
空がそう叫ぶと、風太の身体を抱き締めた。
「風太、怒ってはダメ!それに、恭介様は私を虐めていた訳では無いのよ」
空が風太を宥めるように背中を摩ると、竜巻になりそうな風の渦がゆっくりと消えて行き、恭介を襲っていた強風が静かになった。
「空…、本当に?本当に恭介に虐められてなかったのか?」
風太は心配そうに空の顔を見つめる。
「ありがとう、風太。ちょっと話をしていたら、お互いに感情的になってしまっただけだから」
空がそう言って風太の頭を撫でると、風太は恭介を睨んで
「又、空を虐めたら、恭介を嫌いになるからな!」
そう叫ぶと、空と手を繋いで家へと歩き出した。
恭介が頭を抱えて近くの大きな岩に腰かけると、座敷童子が悲しそうな顔で恭介を見てた。そしてゆっくりと近付いて恭介の手に触れると、何度も首を横に振っている。
恭介は力無く笑い
「お前も、俺が記憶を取り戻すのに反対なのか?」
と呟いた。
恭介は此処に来てからずっと、何かが溢れ出しそうで無理矢理堰き止められているような感覚に襲われる。
すると
『恭介……ダメ……。記憶…戻ったら……殺されちゃうの』
今にも消えそうな小さな声が頭に響く。
恭介が驚いて座敷童子の顔を見ると、座敷童子も驚いた顔で恭介を見た。
「殺されるって…何だよ。俺は、忘れた記憶が戻ったら殺されるのか?」
座敷童子は慌てて恭介から手を離すと、首を横に振って後退りする。
「なぁ!お前等は何を知っていて、何を隠してるんだよ!」
叫んだ恭介の声に弾かれるように、座敷童子も走り去ってしまう。
恭介は頭を抱えて
「何なんだよ!だったら、今すぐ元の世界に戻せよ!」
そう叫んだ。
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