風の唄 森の声

坂井美月

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隠された記憶①

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「空さん!」
洗濯物を抱えて河原へ走っている空を追い掛けると、恭介は空の腕を掴む。
驚いた顔をした空が恭介を見ると
「どうしてあなたは、俺の顔を見ると逃げるんですか?」
恭介が怒ったような顔で呟く。
「それを言うなら、どうして毎回追い掛けてくるんですか?」
「それは、あなたが逃げるからでしょう!」
「じゃあ、何ですか?私が悪いって言いたいんですか?」
「そうじゃない!」
「だったら、私のことは放っておいて下さい!」
空はそう叫ぶと、恭介から視線を逸らした。
恭介は拒絶の態度を崩さない空に
「…そんなに俺が憎いのか?」
ぽつりと呟いた。
「え?」
驚いて恭介を見た空は
「…思い出したんですか?」
そう呟いた。
恭介が何も言わないで空を見ていると
「どうして?封印は完璧だった筈」
ぽつりと空が呟いた。
「成る程…。やっぱりあんた、俺の空白の2年間の鍵を握っていたんだ」
恭介の言葉に、空はハッとして恭介の顔を見た。
「騙したんですか?」
「騙してなんかいないですよ。まぁ、カマをかけましたけど」
そう言って肩をすぼめる。
「何故そんな事を…」
「何故だって?俺さ…この場所に来た時、不思議と懐かしかったんだ。今、住んでいる場所も、初めて来た筈なのに何故か何処に何があるのか分かるんだよ。なんでだろうな?」
恭介はそう言うと、空の顔を見つめる。
空は視線を外すと
「日本家屋なんて、何処も同じ作りですからね。不思議な事では無いのでは無いですか?」
そう答えて恭介に背中を向けた。
恭介は深い溜め息を吐くと
「俺は今日一日、この森を歩いたんですよ。不思議なんですよね~。歩いた事があるように川の場所や何処になにが実っているのかも分かるんですよ。これって…どういう事ですかね?」
と言うと、背中を向けている空の肩を掴んで自分の方へ向けると
「あなたは何を知ってるんですか?封印ってなんですか?俺は一体、此処で何をしていたんですか?」
そう叫んだ。
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