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絡み合う赤い糸③
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その日の夜。
恭介はぼんやりと外に出て星空を眺めていた。
自分たちの世界では、滅多に見られない満点の星空。
電柱や電線の無い、街頭も何も無い月明かりだけが明るく照らす漆黒の世界。
夜になると、蝋燭の灯りだけで辺りは真っ暗になってしまう。
でも、何故か恭介は此処で暮らし始めてから、自分の中の空洞が徐々に埋まっているような感覚になっていた。
自分を慕う風太と座敷童子。
仕事を気にせず、自然の中で暮らす毎日。
出来ればずっと、此処で生活していたいとさえ思っている自分に苦笑いを浮かべる。
そんな時、提灯を持って空が森から現れた。
「空さん?」
声を掛けると、空が驚いたように恭介の顔を見た。
「恭介様?こんな時間にどうなさったんですか?」
「いや、それは空さんこそ」
そう答えると、空が黙り込んでしまう。
恭介がその様子に溜め息を吐くと
「あの…先に戻りますね」
と、足早に家の中に入ろうとする空の腕を掴み
「あの!俺、何かしましたか?」
恭介はそう言って空を見つめた。
すると空は怯えたような視線で恭介を見ると、ゆっくりと視線を落とし
「いいえ、何も…」
とだけ答えると、再び黙り込んでしまう。
「どうして、藤野君や片桐君は下の名前にさんを付けて呼んでるのに、俺だけ様なの?」
詰め寄る恭介に、空は唇を震わせて何も答えない。
「俺、そんなに嫌われる事したんですか?だったら謝りますから、避けるのを止めてもらえませんか?」
「避けて無いです」
「じゃあ、何で!」
声を荒げた恭介に
「では…双葉さんとお呼びすればよろしいですか?」
と、空が俯いたまま答えた。
「え?それって…本気で言ってるの?あのさ、苗字になるって事はさ、恭介様より距離出来たよね?」
肩を掴んで自分の方へ向けると、目に涙を浮かべた空の瞳と目が合う。
「何で…泣いてる…?」
驚いて呟いた恭介に
「すみません!何でもないんです」
慌てて涙を拭う空を、恭介は無意識に抱き締めていた。
「恭介様、いけません!美咲さんが見たら、悲しみます」
慌てて自分の腕から逃れようとする空の唇を、恭介は奪うように重ねた。
「なんで此処で藤野君の名前を出すんだ!俺は今、あんたと話しているのに!」
強く抱き締めて叫ぶ恭介に、空は涙を流して
「あなたは人間なんです。私は…龍神です。決して、交わってはいけないんです」
そう呟いて
「それに…あなたが好きなのは、私じゃない。あなたは、勘違いしてるだけなんです」
空は吐き捨てるように呟くと、恭介の腕の中から霧のように消えてしまった。
恭介はその瞬間、空が自分と同じ世界を生きられない存在なんだと思い知らされる。
それと同時に、空の言葉が妙に引っ掛かった。
『勘違い』と空は自分にそう言った。
誰と?何を勘違いしているのか?
思い出そうとすると、頭の中にあるブラックホールへと記憶が落ちて行きそうになる。
そして一つだけ、恭介には分かった事がある。空は、自分の抜け落ちた2年間を知る存在なのではないか?と。
そして自分の記憶の鍵を握っているのは、もしかしたら空なのではないか?と思い始めるようになってしまうのだった。
恭介はぼんやりと外に出て星空を眺めていた。
自分たちの世界では、滅多に見られない満点の星空。
電柱や電線の無い、街頭も何も無い月明かりだけが明るく照らす漆黒の世界。
夜になると、蝋燭の灯りだけで辺りは真っ暗になってしまう。
でも、何故か恭介は此処で暮らし始めてから、自分の中の空洞が徐々に埋まっているような感覚になっていた。
自分を慕う風太と座敷童子。
仕事を気にせず、自然の中で暮らす毎日。
出来ればずっと、此処で生活していたいとさえ思っている自分に苦笑いを浮かべる。
そんな時、提灯を持って空が森から現れた。
「空さん?」
声を掛けると、空が驚いたように恭介の顔を見た。
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「あの…先に戻りますね」
と、足早に家の中に入ろうとする空の腕を掴み
「あの!俺、何かしましたか?」
恭介はそう言って空を見つめた。
すると空は怯えたような視線で恭介を見ると、ゆっくりと視線を落とし
「いいえ、何も…」
とだけ答えると、再び黙り込んでしまう。
「どうして、藤野君や片桐君は下の名前にさんを付けて呼んでるのに、俺だけ様なの?」
詰め寄る恭介に、空は唇を震わせて何も答えない。
「俺、そんなに嫌われる事したんですか?だったら謝りますから、避けるのを止めてもらえませんか?」
「避けて無いです」
「じゃあ、何で!」
声を荒げた恭介に
「では…双葉さんとお呼びすればよろしいですか?」
と、空が俯いたまま答えた。
「え?それって…本気で言ってるの?あのさ、苗字になるって事はさ、恭介様より距離出来たよね?」
肩を掴んで自分の方へ向けると、目に涙を浮かべた空の瞳と目が合う。
「何で…泣いてる…?」
驚いて呟いた恭介に
「すみません!何でもないんです」
慌てて涙を拭う空を、恭介は無意識に抱き締めていた。
「恭介様、いけません!美咲さんが見たら、悲しみます」
慌てて自分の腕から逃れようとする空の唇を、恭介は奪うように重ねた。
「なんで此処で藤野君の名前を出すんだ!俺は今、あんたと話しているのに!」
強く抱き締めて叫ぶ恭介に、空は涙を流して
「あなたは人間なんです。私は…龍神です。決して、交わってはいけないんです」
そう呟いて
「それに…あなたが好きなのは、私じゃない。あなたは、勘違いしてるだけなんです」
空は吐き捨てるように呟くと、恭介の腕の中から霧のように消えてしまった。
恭介はその瞬間、空が自分と同じ世界を生きられない存在なんだと思い知らされる。
それと同時に、空の言葉が妙に引っ掛かった。
『勘違い』と空は自分にそう言った。
誰と?何を勘違いしているのか?
思い出そうとすると、頭の中にあるブラックホールへと記憶が落ちて行きそうになる。
そして一つだけ、恭介には分かった事がある。空は、自分の抜け落ちた2年間を知る存在なのではないか?と。
そして自分の記憶の鍵を握っているのは、もしかしたら空なのではないか?と思い始めるようになってしまうのだった。
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