風の唄 森の声

坂井美月

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出会い①

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森の中を歩いていた美咲と修治は、中々恭介と出会えずに居た。
美咲は切り株に座り
「修治~、疲れた」
そう言うと溜め息を吐く。
折角お洒落をして来たのに、結局、恭介と離れてしまった。
どうしていつもこうなんだろうと…美咲が溜め息を吐いていると
「あ!居た居た!」
と、背後から声がした。
美咲と修治が振り向くと、自分達の存在がバレていないと思っているらしく、風太と座敷童子が無遠慮に2人の顔をガン見している。
「座敷童子、あいつ等変な格好してるぜ」
風太は興味深々の顔で2人を見て
「男の方、頭悪そうな顔してないか?」
風太がそう言うと、座敷童子と2人で笑ってる。
美咲は2人の前に立ちはだかると
「ちょっと!確かに修治は頭悪そうだけど、そう言うのは聞こえるように言っちゃダメでしょう!」
と言って怒った顔をした。
すると2人は驚いた顔をして
「お前等、オイラ達が見えるのか?」
って聞かれた。
美咲は呆れた顔をして
「当たり前でしょう!何?それともきみ達は幽霊なわけ?」
と続けた。
すると2人は顔を見合わせて
「益々ヤバいぞ!早く空に知らせないと!」
そう言って走り去ろうとした。
美咲は慌てて2人の腕を掴み
「ちょっと待ちなさい!あなた達、こんな山奥に子供だけで来たら危ないでしょう!」
と叫んだ。
風太と座敷童子は美咲に捕まると
「離せ!ここはオイラ達の縄張りなんだからな!お前等が勝手に入って来たんだぞ!」
そう叫んで、美咲の手に風太が噛み付いた。
「痛い!」
美咲が手を離した瞬間
「ば~か!ば~か!」
って言いながらお尻を叩いてあかんべをした。
その様子に怒って
「馬鹿にして!」
と言って追いかけようとした瞬間、恭介が現れて逃げようとした風太の身体を抱き上げた。
「藤野君、きみ達は子供相手に何してるんですか!」
と言われて、美咲が笑顔を浮かべる。
「教授!もしかして、私達が心配で戻って来てくれたんですか?」
「いや、帰ろうとしたら此処に戻ってしまうんだよ」
美咲の言葉に間髪入れずに答えた恭介に、美咲はうふふって微笑むと
「又々、照れちゃって。本当は美咲達が心配で戻って来てくれたんですよね」
と言って抱き着いた。
片手に風太を抱いているので、美咲を引き剥がせずにいる恭介は
「片桐君!藤野君をなんとかしてくれ!」
そう叫んだ。
すると修治は両手を頭の後で組んで
「え~!美咲、邪魔したら怒るし~」
と言って、知らん顔している。
「分かった!離してくれたら、次の課題を免除してやる」
これ幸いと抱き着いて離れない美咲に困って恭介が叫ぶと
「マジ!それ、約束っすよ!」
と言うと、恭介が抱いている風太の身体を恭介から預かった。
恭介は両手が空くと、直ぐに美咲を引き剥がす。
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