2 / 49
2人の出会い
しおりを挟む
恭介は追っ払うのも面倒になり
「勝手にしろ!」
そう吐き捨てると、美咲に背を向けた。
美咲は近くの木の切り株に座ると、植物を見てなにやら書いている恭介の横顔を見ていた。
出会いは入学式だった。
憧れのキャンパスライフに胸を躍らせ、学校の講堂を探していた。
広いキャンパスで迷子になっていると
「何をしている?」
と、背中から声を掛けられて振り返った。
そこに立っていたのは、スーツに身を包み身綺麗にしていた恭介だった。
(すっごいイケメン!)
唖然として見ていると
「新入生だろう?講堂は向こうだ」
恭介はぶっきらぼうにそう言うと、美咲に背を向けて歩き出した。
思わず見惚れていた美咲は、ハッとして恭介を追い掛けて
「ちょ…ちょっと待って下さい。あっちって指さしただけじゃわからないですよ!」
と、恭介の腕にしがみついた。
美咲は可愛らしい顔立ちもそうだが、性格も明るく無邪気な事から、同年代はもとより年上年下問わず、男性からは可愛がられて来た。
なので、道に迷った美咲を置いてさっさと歩き出す恭介に驚いていた。
「はぁ?」
綺麗な顔立ちに眼鏡をしているせいか、なんだか少し冷たい感じがする恭介に睨まれて、美咲は一瞬怯んだ。
「私…酷い方向音痴なんです」
俯いて呟いた美咲に、恭介は深い溜め息を吐くと
「付いて来い」
とだけ言って歩き出した。
美咲はちょっと(本当はかなり)怖い恭介の背中を見つめて歩いていると、履き慣れないヒールに足首が痛んだ。
靴擦れがおきてしまったようだ。
しかし、少しでも歩くペースを変えたら置いて行かれると思い必死に歩いていると、恭介が『遅い!』とでも言いたげに振り向いた。
美咲は又、怒られる!と思い小さくなると
「お前…足、どうした?」
と呟かれた。
「え?」
「右足、さっきから引き摺ってないか?」
ぽつりと聞かれ
「靴擦れしたみたいで…」
って、苦笑いして答えた。
すると恭介は突然美咲に歩み寄り、ふわりと美咲の身体を抱き上げた。
「きゃ~!」
突然の事で悲鳴を上げると
「うるさい!足、痛いんだろう?講堂の医務室まで運んでやる。ジッとしていろ」
そう言われて、美咲はお姫様抱っこされた姿で医務室まで運ばれてしまったのだ。
その時、美咲は恭介を「もしかしたら、この人が私の王子様なのかもしれない」と、そう思った。
美咲は小さな頃から、物語の中に出てくる王子様に憧れていた。
自分がピンチの時に現れて、颯爽と助けてくれるカッコいい王子様。
周りからは「いい加減に目を覚ませ」と言われているが、祖母から子供の頃に聞かされていた「運命の赤い糸」を、美咲は信じていた。
恭介は美咲を医務室へ運ぶと、名前も告げずにさっさと医務室から去ってしまった。
美咲は医務室に居た保健婦に恭介の名前を聞き出すと、翌日から猛アタックを開始したのだ。
文学部の自分が、生物学部の恭介の授業が受けられる筈もなく…。
それでも、こっそり授業に参加しては恭介にアピールし続けていた。
周りの人達から、「顔は良いけど変わり者」と言われている恭介を追い掛ける美咲を、彼女の友達は心配していた。
色々な人に告白されているのに、美咲は
「双葉教授以外とは付き合いません!」っと突っ撥ねて恭介を追い掛けて4年目になってしまった。
(大学も今年で卒業なのに…)
黙々と山の植物を調べている恭介の横顔を見つめ、美咲はそう思いながら溜め息を吐いた。
せめて、一緒に写真だけでも撮ってくれたら良いのに…と思い、ふと気が付いた。
恭介は集中すると、何も見えなくなる。
山の中の植物や木に触れながら、何やらメモしている恭介の横顔は集中していて自分が居るのを忘れているようだ。
だったら、今がチャンスでは無いだろうか?と。
美咲は鞄からスマホを取り出し、恭介の横顔を撮り、その横顔と一緒に自分も自撮りするように写真を撮り始めた。
すると恭介が、カシャカシャと不快な電子音に集中力を消され、音のする方へと視線を向けた。
「勝手にしろ!」
そう吐き捨てると、美咲に背を向けた。
美咲は近くの木の切り株に座ると、植物を見てなにやら書いている恭介の横顔を見ていた。
出会いは入学式だった。
憧れのキャンパスライフに胸を躍らせ、学校の講堂を探していた。
広いキャンパスで迷子になっていると
「何をしている?」
と、背中から声を掛けられて振り返った。
そこに立っていたのは、スーツに身を包み身綺麗にしていた恭介だった。
(すっごいイケメン!)
唖然として見ていると
「新入生だろう?講堂は向こうだ」
恭介はぶっきらぼうにそう言うと、美咲に背を向けて歩き出した。
思わず見惚れていた美咲は、ハッとして恭介を追い掛けて
「ちょ…ちょっと待って下さい。あっちって指さしただけじゃわからないですよ!」
と、恭介の腕にしがみついた。
美咲は可愛らしい顔立ちもそうだが、性格も明るく無邪気な事から、同年代はもとより年上年下問わず、男性からは可愛がられて来た。
なので、道に迷った美咲を置いてさっさと歩き出す恭介に驚いていた。
「はぁ?」
綺麗な顔立ちに眼鏡をしているせいか、なんだか少し冷たい感じがする恭介に睨まれて、美咲は一瞬怯んだ。
「私…酷い方向音痴なんです」
俯いて呟いた美咲に、恭介は深い溜め息を吐くと
「付いて来い」
とだけ言って歩き出した。
美咲はちょっと(本当はかなり)怖い恭介の背中を見つめて歩いていると、履き慣れないヒールに足首が痛んだ。
靴擦れがおきてしまったようだ。
しかし、少しでも歩くペースを変えたら置いて行かれると思い必死に歩いていると、恭介が『遅い!』とでも言いたげに振り向いた。
美咲は又、怒られる!と思い小さくなると
「お前…足、どうした?」
と呟かれた。
「え?」
「右足、さっきから引き摺ってないか?」
ぽつりと聞かれ
「靴擦れしたみたいで…」
って、苦笑いして答えた。
すると恭介は突然美咲に歩み寄り、ふわりと美咲の身体を抱き上げた。
「きゃ~!」
突然の事で悲鳴を上げると
「うるさい!足、痛いんだろう?講堂の医務室まで運んでやる。ジッとしていろ」
そう言われて、美咲はお姫様抱っこされた姿で医務室まで運ばれてしまったのだ。
その時、美咲は恭介を「もしかしたら、この人が私の王子様なのかもしれない」と、そう思った。
美咲は小さな頃から、物語の中に出てくる王子様に憧れていた。
自分がピンチの時に現れて、颯爽と助けてくれるカッコいい王子様。
周りからは「いい加減に目を覚ませ」と言われているが、祖母から子供の頃に聞かされていた「運命の赤い糸」を、美咲は信じていた。
恭介は美咲を医務室へ運ぶと、名前も告げずにさっさと医務室から去ってしまった。
美咲は医務室に居た保健婦に恭介の名前を聞き出すと、翌日から猛アタックを開始したのだ。
文学部の自分が、生物学部の恭介の授業が受けられる筈もなく…。
それでも、こっそり授業に参加しては恭介にアピールし続けていた。
周りの人達から、「顔は良いけど変わり者」と言われている恭介を追い掛ける美咲を、彼女の友達は心配していた。
色々な人に告白されているのに、美咲は
「双葉教授以外とは付き合いません!」っと突っ撥ねて恭介を追い掛けて4年目になってしまった。
(大学も今年で卒業なのに…)
黙々と山の植物を調べている恭介の横顔を見つめ、美咲はそう思いながら溜め息を吐いた。
せめて、一緒に写真だけでも撮ってくれたら良いのに…と思い、ふと気が付いた。
恭介は集中すると、何も見えなくなる。
山の中の植物や木に触れながら、何やらメモしている恭介の横顔は集中していて自分が居るのを忘れているようだ。
だったら、今がチャンスでは無いだろうか?と。
美咲は鞄からスマホを取り出し、恭介の横顔を撮り、その横顔と一緒に自分も自撮りするように写真を撮り始めた。
すると恭介が、カシャカシャと不快な電子音に集中力を消され、音のする方へと視線を向けた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ


君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる