君と僕の大事なヒミツ

たらこ餅

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2.君の家

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「(2)の問題を、佐々木。」

4時間目、数学。
僕はいつもより集中力が続かないことに悩んでいた。何となく朝から調子が悪くて、食欲がなく朝ごはんを用意する気力すら起きなかった。

こんな調子で今日一日持つんだろうか...。

__(チャイムの音)

時刻は昼。
いつものように購買へ足を運ぶ...訳ではなく、食欲が無いためおもむろにスマホを取り出してはいじる。

「宮田くん!」

「っえ、一ノ瀬くん?!」

スマホに集中していると、突然の呼び声に驚く。声の主は一ノ瀬だった。変わらずニコニコとした表情をしている。

「ど、どうしたの...いきなり...。」

「今から購買行くんですけど、一緒に行きませんか?昨日のお礼も兼ねて、メロンパン奢りたいなって。好きでしたよね?」

「好きだけど...いいですよ!そんな、奢るとか。それに僕、今あんまり食欲なくて...。」

「そうなんですか?...というか、宮田くん顔若干赤いですよ?少しだけおでこ触ってもいいですか?」

「え?うん...。」

突然のことに少々動揺したが、一ノ瀬が言うなら確かめてもらうことにする。すぐにひんやりとした手がおでこに触れ、少しビクッとした。

「うん。やっぱり熱ありますね。一緒に保健室行きましょっか。」

「そっか...いや、いいですよ。一人で行くので...。」

「僕学級委員ですし、宮田くんフラフラですよ?少しくらい甘えてください!」

何を言っても聞かなさそうだったので、お言葉に甘えることにした。少し足元が覚束無かったため、一ノ瀬と腕を組む。保健室は教室を出て階段を上り、少ししたところにある。

「失礼します。...あれ、先生居ないみたい。じゃあ勝手に使っていいよね...。」

一ノ瀬に連れられてベッドに寝転がる。布団をかけられ、ベッド横の椅子に腰掛けた一ノ瀬にポンポンと頭を撫でられる。正直、悪い気はしない。頭に触れている手に頬を擦り寄せる。

「ん゛っ...ね、ねえ宮田くん。もしかして宮田くんが熱出たのって、僕がお茶かけちゃったからだったりしませんか、?」

「え...?うーんどうだろう...僕にもよく分からなくて...。」

「そっか...でも、多分昨日のことは関係してるよね、本当にごめん。」

「全然!大丈夫なので、頭上げてください、!」

でも、という一ノ瀬に断りを入れどうにか気にしない用納得してもらった。またの機会にお詫びさせて、と言い保健室を後にする一ノ瀬に手を振る。そして、疲れきった脳を休めるため眠りにつく...。


━━━━━━━━━━━━━━━


昼休み、いつもより少し気だるげな君に声を掛ける。顔を赤らめて喋る姿は僕と喋るのが恥ずかしいのかとも錯覚させる。

君の額に手を当てれば、案の定熱があった。僕のせいで、僕が口をつけたお茶を君にかけちゃったせいで君は熱を出した。ダメだとわかっていても笑みがこぼれる。

フラフラとする君と腕を組み、教室からは少し遠い保健室へと向かった。ベッドに寝転んだ君の頭を撫でると君は頬を僕の手に擦り寄せた。

ああ、なんて可愛いんだ。

僕と君しか居ない静かな保健室で、二人っきりの幸せな時間を過ごす。ずっとここに居たいという僕の気持ちとは裏腹に、煩いチャイムが鳴り響く。

愛しい君に別れを告げ、保健室を後にする。

あのまま、時間が止まってしまえば良かったのに。


━━━━━━━━━━━━━━━


__(チャイムの音)

校内に鳴り響くチャイムの音で目が覚める。何となくまだ体が熱いと感じ、ぼーっとする。そんなことを考えていたらカーテンの向こうからガラガラとドアの開く音がする。すると、シャッとカーテンが開く。

「宮田くん、放課後になったけど帰れますか?」

「あ...一ノ瀬くん...。うん、帰れると思う。」

上手く働かない頭を必死に動かし、起き上がってベッドに座る。すると、体温計を渡されて熱を測る。しばらくして体温計が示したのは37.5度。

「まだ熱ありますね、家まで送っていきますよ?」

「え、あ、ありがとうございます...。お願いします。」

「じゃあこれ、荷物です。それじゃあかえりましょうか。」

「あ、ありがとうございます。」

保健室に来た時と同じように一ノ瀬と腕を組み、昇降口に向かう。帰宅する生徒の視線は痛いが無視して帰路に着く。なんやかんやあってもう部屋のベッドの上だ。

「宮田くんって一人暮らしだったんですね、僕とお揃い。」

「あ、一ノ瀬くんも一人暮らしなんですか...。」

「何も食べてないならお腹すいたでしょう。簡単なものしか作れませんが食べたいものはありますか?」

「え...お、お茶漬け?」

「わかりました。キッチンお借りしますね。」

そう言うと、ニコッと微笑んでキッチンの方へ消えていった。今日は一ノ瀬におんぶにだっこでありがたさもあるが、申し訳なさが勝る。着替えたり、テーブルの上を片付けたり、そうこうしているとゴトッとお茶漬けが一つテーブルに置かれる。

「熱いのでお気を付けください。...もし良ければ食べさせましょうか?」

「え...うーん、お、お願いします...。」

熱が出ているからついつい甘えてしまう。そう、熱が出ているから!そんなことを考えていると、あーん、という声と共に口元へスプーンが運ばれる。ほんのり暖かく、いつもより美味しいような気がする。

「どうですか?美味しいですか?」

「あ、はい。なんか僕の作るお茶漬けより美味しい...同じはずなのに...。」

「ふふふ、それは僕の愛情っていう隠し味ですよ。ご飯は愛情を込めれば美味しくなりますからね。」

若干戸惑ったが、それだけ心配してくれているんだと思うと少し嬉しくなった。

「...。」

「...。」

ただお茶漬けを食べさせているだけの静かな時間が流れる。少しして、口を開いたかと思えば

「宮田くんって、好きな人居るんですか?」

「ん゛っ、ゴホッ、ゴホッ。」

恋愛話を持ちかけられ、まさかそんな話をするなんて思ってなかったから酷く噎せた。

「好きな人って...僕は...居ません。」

「そうなんですか?僕は居ますよ!好きな人!」

嬉々として好きな人のどこが好きなのか話す姿は、まるで子供みたいで可愛らしかった。ふと最近、一ノ瀬に興味があることを思い出し、気になる人は居ると訂正する。

「え?気になる人?誰ですか。」

ゾッとするほど表情が無くなり真剣な眼差しが僕の視線と交差する。何故そんなに僕の言葉に食らいつくのかはわからないが、とりあえず秘密と口に指を当て言った。すると、いつものぱっとした笑顔に戻った。

「秘密って...もー、教えてくれないなんていじわるですね。」

本人に言うのは小っ恥ずかしい。なのでしばらくの間、一ノ瀬には勘違いしてもらう事にした。


━━━━━━━━━━━━━━━


時は放課後、僕は足早に保健室へと向かう。目の前に居るのは寝起きかつ服が少しはだけている最愛の人。必死に感情を押えて、一緒に下校するよう促す。

あっさり一緒に下校することが決まり、また腕を組んで帰路に着いた。

君と雑談を交わしつつ、君の家までの道を歩く。

「ここです。」

君が指したのは少し高級そうなマンション。


へぇ、ここに住んでるんだ。
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