君と僕の大事なヒミツ

たらこ餅

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1.始まり

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××県××市、市立萩原高等学校に通う僕、宮田奏斗は教室の隅で本を読んでそうな人、いわゆる陰キャ。

僕は人と関わるのが苦手で、学校では目立たないよう静かに生活している。
そんな僕の天敵はクラスの中心になるような人気者、いわゆる陽キャ。声が大きくて必要以上に話しかけてくる。学校生活を穏やかに、静かに過ごしたい僕にとってはとても厄介な存在だ。

正直、関わり合いにはなりたくないな...

___(チャイムの音)

「それではこれで終わります。号令~。」

先生の合図で4時間目の授業が終わる。昼休みに入るやいなや、お腹が空いたと嘆きながら購買へと足を運ぶ生徒が多数。それを横目に僕も足早に購買へ向かう。

僕がいつも買う物はメロンパンと水。図体の大きい運動部を躱して無事購入。毎度毎度、列というものが機能していなくて嫌になる。教室へ足を運びつつスマホに溜まった通知を処理する。

「え?マジ!?ウケるww」

呑気にながら歩きしていたら前から陽キャが歩いてきた。横に並んで歩いているもんだからすれ違うスペースがない。ぶつかってきたと悪態を付けられてはたまったもんじゃない。廊下の脇にそっと立ち止まって過ぎ去るのを待つ。

ドンッ バシャ

最悪だ。陽キャとぶつかった挙句、陽キャが飲んでいたであろうお茶が宙に舞い、僕にかかった。冷たい。

「ごめんなさい!大丈夫ですか?もう、佐々木が押すから宮田くんにぶつかっちゃったじゃん。」

「(え、謝られた...?って、この人は、!)」

僕は目を丸くした。謝られたということにも驚いた。だが何より目の前に居たのが、入学して間もなくファンクラブが作られたという男、一ノ瀬悠真だったからだ。
一ノ瀬は学校一の人気者、故に目を向ける生徒は多い。一ノ瀬様に話しかけられてるあいつは誰だ、そんな視線が僕を貫く。僕への心配の気持ちは無いのか。

「ぼ、僕は大丈夫です。あの、僕の方こそごめんなさい。邪魔でしたよね...。」

「ぶつかっちゃったのは僕の方なので。服濡れちゃって、ほっといたら風邪ひいちゃいますよね...。僕ので良ければジャージ貸しますよ、?」

「だ、大丈夫です!自分のがあるので...。」

「じゃあなんか奢ったりとか、」

「本当に!大丈夫なんで、ありがとうございます。」

ちょっと、と呼び止める一ノ瀬の声を無視して元の進行方向だった教室の方へ逃げるように向かう。机に購買で買ったパンと水を置いてロッカーからジャージを取り出し、極力目立たないように更衣室へと向かう。

目立ちたくない、陽キャと関わりたくないと宣言した春、そして夏が始まろうとしている今。僕は予想もしない形でフラグ回収したみたいだった。

そういえば、ぶつかった時僕の名前を呼んでいたような。確か話したのは初めてだったはず。

こんな影の薄くて喋ったこともないような陰キャの名前を、なんで知っているんだ?


━━━━━━━━━━━━━━━


僕の名前は一ノ瀬悠真。
ただの男子高校生、と言うのは少し難しいかもしれない。
入学したと思えばいつの間に設立されていたファンクラブ。その存在を僕も知っている。対象が僕だとは思いもしてなかったけど。

さて、本題に入ろう。
僕には気になる人、そう気になる人がいる。

僕は同じクラスの宮田奏斗くんという子のことが気になっている。
いつも一人で居て、落ち着いている。座る姿が芸術作品かのように美しい。可愛い、美しい、格好良い、全ての言葉が当てはまる。

ほら今も、僕に話しかけられて慌ててる。

見てていつも思う。

可愛いなぁって。

......可愛いなぁって。


━━━━━━━━━━━━━━━


あの後、特に何も無く帰宅することが出来た。こんなに疲れた一日は初めてだ。

「それにしても、名前...。学級委員だから、?」

昼のことを思い出す。一ノ瀬は同じクラスで、学級委員だ。だからといって6月下旬の今、全員の名前と顔を一致させるのは難しいはず。多分クラスの序列最下位の僕のことを覚えているはずがない。

そんなことをベッドの上でうだうだ考えていると段々と眠くなっていた。昼のもやもやが残るにしろ、こうやって安全に一日を終えられることに感謝だ。

そう思い、僕は眠りについた。
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