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罪悪感【アレックスside】
しおりを挟むずっと似ていると思っていた。忘れらないあのブルーサファイアの瞳が。
彼女であって欲しかった。だけれども違って欲しかった。
相反する心が俺を蝕んでいた。
あの桐の下で微笑みを見つけたとき、もしやそうではないかと思ったのだ。あの微笑み方は同じように見えたのだから。だが、自分の口からは聞けなかった。
ルーシア本人の口がその思い出が出たとき、本当はその口を開かないように塞いでしまいたくなった。自らの耳を抑え、もうやめろと叫びたかった。
ーー何故なら俺は、〝罪〟をおかしているから。
今の彼女に近づいたのは〝ゲーム〟だ。正直に言えば、相手を傷をつけることに罪悪感を覚えてはなかった。きっと、長く生きている間に麻痺してしまったのだろう。
俺はいつしか傲慢になっていたのだ。女という存在は、自分の下にあるものであると。
ゲームから始めた恋愛ごっこ。
相手に教えるつもりはない。教えれば、ルーシアはきっと傷つくだろう。
あの無表情の下には、様々な感情が隠されていることを知った。
その無表情が解れ、本心からの笑みが浮かぶと、17歳の女の子らしい愛らしさがある事を知った。
ただ口下手なだけであって、相手を拒絶しているわけではないのだと分かった。
(そうだ。俺はルーシアという存在を、深く知ってしまったのだ)
まだこれが恋なのか、そうでないのかは分からない。だが、彼女に傷ついて欲しくないと思ったことは紛れもない本心だった。それは自己満足であると自分自身も分かっていたが、どうしても気持ちが溢れてしまうのだ。
(マイク、あいつに相談しよう)
情けないが、俺1人では心の整理をしきれなない。償いの方法すら分からない。なんて自分は頼りない男なのだろうか。
だが、生まれて初めて覚えた気持ちを大切に守るためにも、頼れるものは全て頼る。
そう決意し、机の引き出しの便箋を取り出したのだった。
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