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第二部 第三章 異界の客人神

『0:00』

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アクセプト鉄塊!!」

 今まさに、金属の棒がマリルの体内へと侵入せんとする寸前──

 颯爽と漆黒の狼──ヴァンガルムが現れて導術を発動。巨大な鉄の塊によってマリルを組み敷く人型を粉砕。どうやらこの巨大な人型から生成された通常の人型にも、特殊なシールドは発生していないようだ。

「装着だマリル!! 装着と同時に実体殺しヴォイドグラスプを発動する!」
「ありがとうヴァンちゃん! 『アクセプト!装着!』」

 マリルが叫ぶと同時、目の前には『/convertコンバート armorアーマー Mariluマリル』と白く輝く文字が現れ、ヴァンガルムが黒い霧となってマリルの体を包みこんだ。そのまま黒い霧は形を変え、宵闇よいやみのような漆黒のドレスへと変わる。

「とりあえず暴れろ! 周囲を消し飛ばす!」
「オッケー!! はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 マリルが群がる管と人型を相手取り、凄まじい速度での乱舞を見舞う。

 まるで暴風のようなマリルの乱舞。

 ヴァンガルムによる的確な実体殺しヴォイドグラスプ

 まさに殲滅の鬼となったマリルが、群がる管と人型を悉く消し飛ばす。

「よし! そのまま左肩へ向けて飛べ! セリシアとルイスはそこに捕らわれておる! ジェシカの場所はまだ分からんが……同時進行で分析しておる! すぐに判明するはずだ!」
「任せてっ! こうなったら三人同時に運び出すんだからっ!!」

 マリルがズガンッと地面を蹴りつけ、巨大な人型の左肩へ向けて飛ぶ。専用兵装を装着したマリルの速度は、もはや死の女神ヘルモードを発動したジェシカを超えていた。この時点で残り時間『1:28』──

「左肩着地と同時に実体殺しヴォイドグラスプを発動する!」
「そんなことが出来るの!?」
「数度発動してデータ処理には慣れた! 多少離れていても作用箇所はブレんはずだが……なるべくセリシアとルイスの近くに着地してくれ!」
「オッケーッ!!」

 ダンッ! と、マリルが巨大な人型の左肩──セリシアとルイスの目の前に着地。それと同時、ドパンッと轟音を響かせ、セリシアとルイスを捉えていた部分が消し飛んだ。そのままマリルが二人を抱きかかえる。

「よし! あとはジェシカさんだ!! ヴァンちゃんジェシカさんはどこっ!?」
「ジェシカは……あそこだ! 左頬の耳近くにおるっ! 右肩からは見えんかったわけだっ!!」
「よしっ! 行くよっ! ジェシカさんを解放と同時に兵装を解除するから、ヴァンちゃんはジェシカさんをお願いっ! 出来ればセリシアさんかルイスさんのどっちかも!」
「時間的に兵装を解除しても離脱は間に合うか……了解したっ!」

 マリルがセリシアとルイスを抱えたまま、凄まじい速度で巨大な人型の左頬へと突撃し、蹴りつける。それと同時、ドパンッと轟音を響かせてジェシカを捉えていた部分が消し飛んだ。

「よし! 『アクセプト解除!!』 ヴァンちゃんジェシカさんとルイスさんをお願いっ!!」
「任せろ! 『アクセプト鉄の鎖!!』」
 
 マリルが兵装を解除。巨大な狼となったヴァンガルムが導術によって現出させた鉄の鎖で、ジェシカとルイスを自身の体に固定する。残り時間『0:49』──

「間に合った! 離脱するよヴァンちゃ……きゃあっ!!」

 離脱しようとしたマリルの足に機械的な管が絡み付く。

「くぅっ! 離してっ! 離してよっ!!」

 マリルが硬質化させた爪を伸ばして管を切り裂くが……

 管は次々と現れてマリルに絡み付く。

 残り時間『0:38』──

「くそっ! マリル! 今助け……ぐぅっ!!」

 マリルを助けに向かおうとしたヴァンガルムにも、機械的な管が絡み付く。さらには無数の人型がわらわらと現れ……

 気付けば周囲は完全に囲まれていた。機械的な駆動音と、金属が軋むギシギシという音が響く。

「ちっ! 『アクセプト鉄の刃!!』 そこだっヴォイドグラスプ!! 『アクセプト鉄の刃!!』 消えんかヴォイドグラスプ!! 『アクセプトォォォォォ鉄の刃ぁぁぁぁぁぁぁォォォォォォォォォォぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁォォォォォォォッ!!ぁぁぁぁぁぁぁっ!!』」

 ヴァンガルムが導術と実体殺しヴォイドグラスプによって、群がる管や人型を蹴散らす。が、あまりにも数が多い上に、やはり実体殺しヴォイドグラスプは自身が動きながらだと相対座標計算などがブレる。残り時間『0:21』──

 もはや詰んでいる。まさかヴァンガルムもここまで機械的な管や人型で溢れるとは想像していなかった。完全なる計算ミス。という時間制限によってあせらされたことによる、絶対に絶命の状況。

 確かにあの叫びや極大レーザー発射まではだったが……

 それ以外の活動も時間経過と共に活発になってきていたのだ。ファムを助けた際はほとんど邪魔はされなかったが、セティーナとミシェリーを助けた際は、。時間経過で活動が活発になっていることには気付けたはずだが……

 時すでに遅し。

 ヴァンガルムやマリルは今現在、巨大な人型の顔付近にいる。これほどの近距離であの叫びを使われでもしたら……

 脳は完全に破壊され、魔石も砕けるだろう。皮膚は破れ、粘膜は破裂し、血管もズタズタに裂けるだろう。捕らわれていたジェシカやルイス達は、

 今は巨大な人型から救出したことで、あの叫びの影響を受ける。

 これは確実に全滅する。

 ヴァンガルムとマリルが力の限り抵抗し、何とか離脱しようとするが……

 残り時間『0:06』──

 もはやここまでかとヴァンガルムが絶望したまさにその瞬間──

「アラガネの戦士ミシェリー見参! インダイレクトシール間接防御壁ド最大展開!!」

 ヴァンガルム達の目の前に、ファムに抱えられたミシェリーが現れた。ミシェリーはそのままこの場にいる全員の体の周囲に薄紫色に光る半透明の膜──間接攻撃を無効化するシールドを展開。

「まだまだ! インダイレクトシール間接防御壁ド同時最大展開!!」

 さらにシールドを幾重にも重ねて発動。それと同時、残り時間『0:00』──

 動きを止めていた巨大な人型の体が揺れ動く。ブンッと目が怪しく光り、まるで谷のような口がギシギシと開いていく。

「「ギギ……ギア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ゛!!」」

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