上 下
200 / 229
第二部 第三章 異界の客人神

救出戦

しおりを挟む

「ヴァンちゃん! やるなら今じゃない!?」
「やるしかないようだな。ルイス達はどうやらあの巨大な人型に捕らわれておるようだ。『アクセプト望遠』『アクセプト解析』『アクセプト投射』」

 ヴァンガルムが導術を発動し、目の前に黒い霧で覆われた画面が現れる。そこには巨大な人型の体から、顔と胴体だけが露出しているルイス達の姿。体には機械的な管が蠢き、うねうねと口や下腹部から侵入している。

「ちっ……悪趣味にも程があるわ」

 発動した導術はさらに巨大な人型を分析。極大レーザー再稼働までの時間を導き出し、巨大な人型の頭上に『5:13』と残り時間を可視化させた。さらにこの巨大な人型は、攻撃を無効化する特殊なシールドを持たないことも判明。

「どうやら後五分は先程の叫びと極大レーザーは使えんようだ。それに加えてやはりルイス達の魔石は同化させられておらん。突撃し、体の周りを実体殺しヴォイドグラスプで消し飛ばせば助け出せるはずだ」
「よし! よしよし! まずはみんなを助け出すよヴァンちゃん!!」
「くく……いい顔をしておるな。では……」

 「行くぞマリルッ!!」とヴァンガルムが叫び、マリルがまるで彗星の如き速度で巨大な人型へと向けて飛ぶ。


---


 ──巨大な人型の尾根のような腕の上

「さ、さすがにこれはデカすぎだろう……」
「もう! 圧倒されてないで行くよヴァンちゃん!!」

 近付いて分かる圧倒的な巨大さ。もはやそれは山であり、体表からは機械的な管がうねうねと蠢く。

「いたっ! あそこだヴァンちゃん!」

 マリルの視線の先、巨大な腕の付け根にファムの姿。やはり機械的な管が辱めるようにファムの体を蠢く。

「……っくぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 ズガンッと巨大な人型の体表を蹴りつけ、マリルが放たれたバリスタの矢のようにファムの元へと向かう。

「そこだっ!!」

 そのまま取り込まれたファムの真横を殴り付ける。するとドパンッと轟音を響かせて巨大な人型の体表──ファムを捉えていた部分が消し飛ぶ。これが実体殺しヴォイドグラスプの力。

 計算も発動もヴァンガルムが行っているのだが、マリルが動いてくれるからこそ、ヴァンガルムが様々な計算に集中出来る。

「よし! ひとまずファムを安全な場所まで運ぶぞ!」
「うん! 分かった!!」

 マリルがファムを抱きかかえ、凄まじい速度で巨大な人型から離脱。そのまま先程の叫びが届かない場所まで運ぶ。この時点で叫びと巨大レーザー発射まで残り『4:08』となっていた。

「い、急がないとっ!!」
「よし! 次は右肩付近だ!! 先程セティーナとミシェリーの姿が見えたのでな!!」
「オッケーッ!!」

 再び凄まじい速度でマリルが飛び、巨大な人型の右肩まで到達。ヴァンガルムの言うように、セティーナとミシェリーがほぼ並んで捉えられていた。ここでも機械的な管がピストン運動でもするように、二人の体を弄ぶ。

「二人を……離せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 マリル渾身の拳がセティーナとミシェリーの間に炸裂。ドパンッと実体殺しヴォイドグラスプが発動し、二人を捉えていた部分を消し飛ばす。

「よし! じゃあ二人を運……きゃあっ!!」

 二人を抱きかかえ、飛び立とうとするマリルの足に機械的な管が絡まる。

「やめて! 離してよっ!!」
そこだっヴォイドグラスプ!!消えんかヴォイドグラスプ!!」

 うねうねとマリルに絡まる管を、ヴァンガルムが実体殺しヴォイドグラスプで消し飛ばすが……

 管は次々と現れてマリルに絡み付く。この時点で残り時間『3:18』まで減る。

「これじゃ間に合わない! アクセプト!解除!

 何を思ったのかマリルが自身の兵装を解除し、ヴァンガルムが巨大な狼へとなる。

「な、何をしておるのだマリル!!」
「いいから二人をファムの場所まで連れてって! ヴァンちゃんが戻ってくるまで何とか耐えるから!! 言い返すの禁止!! 行って!!」
「くぅ……分かった! すぐに戻る!!」

 ヴァンガルムがセティーナとミシェリーを咥えて離脱。マリルが「よしっ!」と気合いを入れる。

「私はあのレーザーを食らってないから同化させられないは……ひゃんっ!!」

 マリルの背後から管が襲いかかり、体に絡み付く。

「んんっ! んぐっ!」

 さらに管はマリルの口から侵入。

「んぶはっ!!」

 マリルが力任せに口腔内に侵入した管を引き抜く。その間も管はマリルの体を這い回る。

「勝手に……触らないでよねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 マリルがヴァンパイアの力で硬質化した爪を伸ばす。その爪によって自身の体を這い回る管や周囲の管を烈断。

「そこっ! はぁっ! 遅いよっ! 無駄なんだからっ!!」

 そのまま流れるように出現する管を切り刻んでいく。が、出現する管の数は増していき、さらには通常の人型まで無数に現れ始める。

「さ、さすがに多すぎ……ひぁっ!!」

 マリルの足に絡み付く機械的な管。そのまま両手両足が管によって拘束され、一体の人型がマリルを組み敷く。人型は無遠慮にマリルの服を引き千切り──

「い、いやっ! やめてよっ!!」

 マリルの視線の先、自身を組み敷く人型の下腹部に金属の棒が現れ、ゆっくりとマリルの下腹部へと近付く。金属の棒の先が触れ、ひんやりとした感触。

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生弁護士のクエスト同行記 ~冒険者用の契約書を作ることにしたらクエストの成功率が爆上がりしました~

昼から山猫
ファンタジー
異世界に降り立った元日本の弁護士が、冒険者ギルドの依頼で「クエスト契約書」を作成することに。出発前に役割分担を明文化し、報酬の配分や責任範囲を細かく決めると、パーティ同士の内輪揉めは激減し、クエスト成功率が劇的に上がる。そんな噂が広がり、冒険者は誰もが法律事務所に相談してから旅立つように。魔王討伐の最強パーティにも声をかけられ、彼の“契約書”は世界の運命を左右する重要要素となっていく。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

処理中です...