覚悟ガンギマリ系主人公がハーレムフラグをへし折りつつ、クールな褐色女戦士をデレさせて異世界を救うパワー系ダークファンタジー/ヴァンズブラッド

鋏池穏美

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第二部 第三章 異界の客人神

カグツチの血筋

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「朝になってしばらく経ったが……何も起きないな [私たちもいったんプレトリアに戻る?]」

 アラハガネと人型の群れを撃破後、しばらくは全員で様子を見ていたのだが、これといって次の段階へと進む気配はなかった。ひとまずはジェシカを見張りに残し、他の者は一度プレトリアに戻っている。

「いや、まだ安心は出来ないからな。とりあえずはこのまま見張っていよう [えー? 私もみんなと一緒にプレトリアでお風呂入りたいよー。まあ汗をかいてるのは私じゃなくてジェシカだけどねー] なら気にするな [もう! ジェシカももう少し女の子らしく気を使いなよ! 髪だって伸ばしっぱなしだし!] 髪はニヴルヘイムで調整出来るだろう? [あっ! 忘れてた!] しっかりしてくれよ姉さん…… [だ、だってジェシカがずっと冷たかったから、そこまで頭が回らなくて……] そのことに関しては……本当にごめん [うん! 素直でよろしい! ……とまあ、とりあえず髪の調整する?] いや、しばらくはこのままでいい。ノヒンが天国から見てるかもしれないだろ? 私だって髪くらい伸ばすんだってところを見せたい [……うん……そうだね……会いたい……ね] ああ……会いたい……な……」

 ジェシカとヨーコが取り留めのない会話をしながら数時間が経過。一向に何かが起きる気配はない。アラハガネと人型の群れからは「リセット」という発言が出てはいないので、おそらく次の段階に進んだはずではあるが……

「どーん!!」
「うわっ! [なになに!?]」

 唐突にジェシカの背後からミシェリーが突撃してきた。突撃された勢いでジェシカが倒れ込み、その上にミシェリーが覆い被さる。

「お、驚かすなよミシェリー。まだ呼んでないのに来てしまったのか?」
「うわっ! 冷たいっ! ジェシカさんに会いたいから来たんだよっ!!」

 言いながらミシェリーがジェシカに抱きついて、首筋にキスをする。

「や、やめろってミシェリー。お風呂入ってないし汚いぞ?」
「ふふん! 私が綺麗にしてあげる!」
「わっ! バ、バカ! やめろってミシェリー!」

 ミシェリーがジェシカの服を脱がそうと、体をまさぐる。

「ダ、ダメだって! やめてくれミシェリー!」
「えー? それだと約束が違うっ!」
「い、いや、それはそうなんだが……ここは外だし……」
「ヨーコさん! ヨーコさんも聞いてましたよね!? 私とジェシカさんの約束!」
「[う、うん……聞いてたけど……]」
「じゃあ言ってやってください! 聞き分けのない妹さんに約束は大事だよって言ってやってください!!」
「うぅ……姉さん……姉さんは私の味方だよな……? [ごめんだけどジェシカ……約束は大事だよ? これに関してはお姉ちゃん口出し出来ないな]」

 ジェシカがミシェリーと交わした約束。それは──

 というものだ。

 なぜジェシカがこんな約束をしてしまったのか……

 それはミシェリーがアラハガネのウイルスに打ち勝ち、目を覚ました時に遡る。それまでもジェシカは時間が許す限りミシェリーの手を握り、声をかけ続けていた。

 あの時自分が眠ってさえいなければ──と、自分を責め続けた。そんな中でミシェリーが目を覚まし、こう言ったのだ。「よかった……よかったミシェリー。私のせいで……私に……私に出来ることならなんでもする。いや、させてくれ」と。

 これに対してミシェリーが取り付けた約束が先程の、というものだ。

 ジェシカは初め、これに対してと甘く考えていたのだが……

 もちろんそんなことはなく、現在ミシェリーの指と口でジェシカに触れていない部分はない。それこそジェシカは抵抗しているのだが、「約束」と言われると弱い。

「ん……ダメだってミシェリー……そこは汚いって…… [お、お姉ちゃんは目を瞑ってるね?] 共有してるんだから……あ……目なんて……んん……瞑れないだろ…… [で、でもまさかミシェリーにカグツチ家の血が流れてるなんて……ああ! ダ、ダメだよミシェリー! それはちょっとすごいよ!] ね、姉さん……楽しんで……んん……る……だろ……?」

 「約束」と言われたジェシカが服を脱がされ、ミシェリーに身を委ねている。それにしてもなぜミシェリーがこれほど性に積極的なのか……

 それは今ヨーコが言った通り、ミシェリーがカグツチ家の血を受け継いでいるからだ。世界が分断されてから、カグツチ家はフリッカー大陸で繁栄してきた。実は十二の咎の血族は、。セリシアのように第二子にも遺伝する場合があるが。

 つまりカグツチ家の第一子以降の血族は、能力や特性が劣化している。そこからさらに代を重ね……

 カグツチ家の血が流れてはいるが、十二の咎の能力や特性を持たない子孫が増えた──ということである。その中で稀にカグツチ家の特性が発現する個体がいて、「愛や性」のタガが外れてしまうということだ。ミシェリーの髪がオレンジ色なのもカグツチ家の名残で、髪の中に赤い色素が多い故ということだ。

「ぷは……汚い汚いって言うけど……ジェシカさんに汚いところなんてない! ないない! ぜーんぶ好き! だから……」
「んん……助け……て……姉さん…… [お、お姉ちゃんは何も見てないし聞いてないよ……] ああ……そこは……ん……」

 激しい戦いを終えたカラハリ砂漠に、ジェシカの嬌声が静かに響く。

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