覚悟ガンギマリ系主人公がハーレムフラグをへし折りつつ、クールな褐色女戦士をデレさせて異世界を救うパワー系ダークファンタジー/ヴァンズブラッド

鋏池穏美

文字の大きさ
上 下
182 / 229
第二部 第三章 異界の客人神

天地宿意

しおりを挟む

 ──シェーレとの会談後、ミズガルズ王国王都ソール(旧聖王都ソール)王宮中庭

「あちらとの話し合いはどうだったのだ?」

 季節外れの花々が咲き誇る王宮中庭で、シェーレとの会談を終えたラグナスにロキが問いかける。ラグナスの傍らには、軍馬の姿をしたスレイプニルの姿。そうして「あれは敵に回さない方がよかったのだろうが……」と、ラグナスが呟く。

「敵に回した……と?」
「レイラとサマンサを返せと言われたのでな」
「くく……返せばよかったではないか。貴様はいったい何を目指しているのだ?」
「私は徹頭徹尾、弱き者が蹂躙されない世界を目指している。あちらに返せばが待っているのでな」
「まだ魔女や半魔を弱き者と言うのか?」
「以前までは多数に蹂躙される弱き者だったが、今は『運命に翻弄されし弱き者』だ。必ず私がそれを変える」
「くく……なかなかに大変な道であるな? それで? アウルゲルミルは予想通りだったのか?」
「ああ。あちらはを行っていた。アウルゲルミルは目的を達成して眠りについたのではなく、変化を遂げていたんだ。もちろんそれを知る者はいないのだろうがな」

 そう、のだ。数千年に及び、シェーレと結託して支配を行っていた。

 ロキが「なるほど……」と考え込み、スレイプニルに視線を向ける。

「貴様はあちらにいたのだろう? 知らなかったのか?」
「そうですね……」

 「私は知りませんでしたよ」と、スレイプニルがロキの問いに答える。

「アウルゲルミルとシェーレによる情報統制のレベルが高いのに加え、私自身も休眠中に何がしかの干渉を受けたのだと思われます。そもそも私は、あちらの代表者はレイラだと思っていました。そうなると、フェンリルも知らないのでしょうね」
「くく……話を聞いた限りではあちらの支配は数千年続いている。なんにせよ素晴らしい変化だ。フリームスルスもムスペルも変化を遂げ、アウルゲルミルもとなると残るは……」
「いや」

 「ヨルムンガンドはすでに変化を遂げている」と、ラグナスがロキの言葉を遮って話す。

「それは初耳だな。ヨルムンガンドの所在は私ですら把握していない」
されていたようなのでな」
「くく……ここで空虚なる樹……ガランドウか。やつは万物に干渉する」

 ラグナスやロキ、シェーレの会話で時折聞こえてくる「ガランドウ」「空虚なる樹」とは、マヤと同じくユグドラシルの化身である三大咎さんだいこうである。口ぶりからするに、──つまりを持っていることが伺える。

「厄介な相手ばかりで頭が痛くなってくるよ」

 そうラグナスが言ったところで、地面が微かに揺れる。

「くく……どうやらアメリカ大陸が浮いたようだぞ?」

 そう言ってロキが黒い霧を滲ませると、目の前に巨大な大陸──アメリカ大陸が空に浮かぶ映像が映し出された。

「あちらは素晴らしい変化を遂げたのだな。まさか私の作り出したNACMOがここまでの変化をもたらすとは……」


 この日、世界は再び分断された。

 ラグナスの治める地上──ミズガルズ王国と、シェーレが支配する天上──アメリカ大陸へと。


「あちらが支配による平等を実現したのだとしたら……今後はどう動くと思われる? そして貴様は……」

 「どう動く」と、ロキの鋭い視線がラグナスに向けられる。

「シェーレもガランドウを警戒していた。おそらくすぐに動くということはないだろうが、いずれ衝突することになるのだろうな。こちらの動きとしては、まず国民のエインヘリャル化を完了させる。同時進行でアラガネの調査も行わなければな。ただ……」

 「アラガネに関しては君が答えてくれればそれで済むのだが」と、ラグナスが冷ややかな目でロキを見る。

「シェーレに探りをいれてみたが、『私がいればからの贈り物程度は問題ないわ』と言っていた。つまり今現在ジアースで発生するアラガネは、アースから来ているとみて間違いないだろう。それがどのような方法なのかが分かれば、早い段階で私もアースへと行くことが出来るかもしれない。このまま導術の練度を高めて次元干渉レベルをあげてもいいのだが、それには時間がかかるのでな」
「くく……貴様は本当に素晴らしいな? 気付けば三大咎さんだいこうへと並び立つ程の力となっている。私が答えを教えてもいいのだろうが、考えることによって齎される変化もあるのでな」

 「君は本当に性格が悪いな」と、ラグナスが笑う。

「アラガネに関しての情報を伏せたのは……私がガランドウと接触していたことについて、君に言っていなかったことへの仕返しなのだろう?」
「どうだろうな?」
「やれやれ……ではこれには答えてくれるか?」
「なんだ?」
「アースはどうなっている? 何度か戻ったのだろう?」
「あちらは今……くく……面白いことになっておるわ。あまり干渉してはガランドウに目を付けられそうなのでな。とりあえずは軽く観察している。詳しく聞きたいか?」
「話してくれるのならな」
「くく……では食事でもしながらゆっくり話そうではないか。貴様のお膳立ての結果と──」

 「確率世界の観測についてな」と言って、ロキが不敵に笑った。

 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

最強のコミュ障探索者、Sランクモンスターから美少女配信者を助けてバズりたおす~でも人前で喋るとか無理なのでコラボ配信は断固お断りします!~

尾藤みそぎ
ファンタジー
陰キャのコミュ障女子高生、灰戸亜紀は人見知りが過ぎるあまりソロでのダンジョン探索をライフワークにしている変わり者。そんな彼女は、ダンジョンの出現に呼応して「プライムアビリティ」に覚醒した希少な特級探索者の1人でもあった。 ある日、亜紀はダンジョンの中層に突如現れたSランクモンスターのサラマンドラに襲われている探索者と遭遇する。 亜紀は人助けと思って、サラマンドラを一撃で撃破し探索者を救出。 ところが、襲われていたのは探索者兼インフルエンサーとして知られる水無瀬しずくで。しかも、救出の様子はすべて生配信されてしまっていた!? そして配信された動画がバズりまくる中、偶然にも同じ学校の生徒だった水無瀬しずくがお礼に現れたことで、亜紀は瞬く間に身バレしてしまう。 さらには、ダンジョン管理局に目をつけられて依頼が舞い込んだり、水無瀬しずくからコラボ配信を持ちかけられたり。 コミュ障を極めてひっそりと生活していた亜紀の日常はガラリと様相を変えて行く! はたして表舞台に立たされてしまった亜紀は安らぎのぼっちライフを守り抜くことができるのか!?

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

僕と精霊〜The last magic〜

一般人
ファンタジー
 ジャン・バーン(17)と相棒の精霊カーバンクルのパンプ。2人の最後の戦いが今始まろうとしている。

処理中です...