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第二部 第二章 闇の咎─淫獄の魔女─
災禍ノ龍 2
しおりを挟むバシュバシュバシュン──
ディザスタードラゴンの背中から、無数の何かが発射される。発射された物体の数は百を超えるだろうか……
空中で散開し、イルネルベリ上空を囲むように飛び回る。
「ちっ! なんか出しやがったぞあいつ!」
「ま、まずいぞノヒン! ビットを利用したホーミングレーザーだ! 避けろっ!!」
キュキュキュン──
ヴァンガルムが叫んだと同時、ディザスタードラゴンの背中から無数の光の筋が放たれる。先程の極大のレーザーとは違ってかなり細い。
「づぅっ! くそっ! ぐあっ!」
レーザーがビットと呼ばれる物体を経由しながら縦横無尽に軌道を変え、ノヒンの体をバスバスと貫く。ディザスタードラゴンがさらに背中からレーザーを発射し……
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
何とか魔石と頭部は守りきるが、ノヒンの体には無数の穴が穿たれて地上へ向けて落下。やはりレーザーと呼ばれる攻撃には狂戦士が発動しない。
「ノヒン! ノヒン!! くそっ! [ノヒン! ねぇ! ノヒン!!] ぐぅっ! うざいなっ!」
ジェシカにも無数のレーザーが襲い来るが、死の女神による速度強化によって何とか躱す。
「ノヒン! 私が囮になる! あれを破壊するにはお前の力でなければ無理だ!! 行くぞ姉さん! [う、うん!!]」
キュキュキュン──
ジェシカがディザスタードラゴンの周囲をレーザーを避けながら飛び回り……
「そこぉ……だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ガズンッ! とディザスタードラゴンの頭部を大戦斧で打ち下ろす。
「はあっ! 『アクセプト!』 そこっ! 『アクセプト!』 まだまだっ! 『アクセプト!』 くたばれぇっ! 『アクセプト!』」
大戦斧と導術による巨大な鉄塊を打ちつけての、息もつかせぬ凄まじい連撃。
「ル゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛」
ディザスタードラゴンがたまらず前腕でジェシカを殴り付けるが、これをギリギリで回避。ジェシカはそのまま腹部の方へと流れるように移動し、そこでも大戦斧と鉄塊の乱舞を見舞う。極大レーザー発射まで残り『5:34』
「ちっ! 時間がねぇ! どけっ! ジェシカァァァァァァッ! ぬぅあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! ……くらいぃぃぃぃぃぃぃぃ! やがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
ノヒンがギチギチと弓の弦を引き絞り、キャドンッ! と神速剛力の矢を放つ。
「ク゛ル゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ゛」
放たれた矢がディザスタードラゴンの腹部に命中。被弾した腹部がクレーターのように抉れるが……
抉れた腹部を瞬時に再生。
「くそっ! この弓でも無理なのかよ!!」
「単発の攻撃では無理そうだな。こうなればあれをやるしかないだろう……。我がサポートして負担を軽減すれば……ノヒン!」
「なんだ!?」
「いくぞ! 『アクセプト!』」
ヴァンガルムが導術によってデータ共有をし、ノヒンが血燃の記憶を取り戻す。
「ちっ! 記憶を消してやがったのかよ! だがありがてぇ!」
ノヒンが全身にギチギチと力を漲らせ、血燃の詠唱──熱い想いを魔石にぶつける。
「マヤだぁ? ドラゴンだぁ? 結局昔からよぉ……この世界には糞しかいねぇ!! ……ぐぅ……う……魔石が熱ぃ……熱ぃが……もっとだ……もっと燃えやがれっ!! 例え俺がここで死のうが燃え尽きようが……俺は……俺の周りの奴らは! これ以上傷付けさせねぇ!!!! っくぞぉっ! 血燃ォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!」
叫ぶと同時、ノヒンから魔素が爆発するように溢れ出す。溢れ出した魔素は燃えるようにゆらゆらと揺らめき、熱くはないはずなのだが周囲の景色を歪める。
「ぐ……ぎぃ……相……変わらずとんでもねぇ……負荷だが……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ドパンッ、と凄まじい轟音がしてノヒンが消える。
と、同時──
凄まじい音を轟かせ、ディザスタードラゴンが吹き飛ぶ。見ればディザスタードラゴンの腹部は弓での攻撃時よりも抉れ……
「くたばれやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
血燃状態での黒錆の長剣による凄まじい連撃。ガゴガゴンとディザスタードラゴンが上下左右に吹き飛ばされ、体が次々と崩壊していく。
果たして今この場でノヒンを目視出来ている者はいるのだろうか。
轟くはディザスタードラゴンが崩壊していく音と──
ノヒンの咆哮のみ。
「見えたぞノヒン! 魔石だ!」
崩壊するディザスタードラゴンの腹部、少し首寄りの場所に赤黒く輝く巨大な魔石が姿を現す。
「はん! でけぇだけで大したこたぁねぇな! 行くぞ!!」
弓はそのままに、腕を振って黒錆の長剣から短剣に変える。
「ぶっ飛べやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ガギンッ! と黒錆の短剣による殴り付けるような魔石への一撃。魔石にはビキビキとヒビが入り……
そのままキャドンッ! と剛力の矢を放つ。放たれた矢は魔石を粉々に粉砕してディザスタードラゴンを貫通、遥か彼方の雲に穴を穿った。魔石を破壊されたディザスタードラゴンは黒い霧となって霧散。だが体の一部は黒い霧とならずに地面へと落下する。凄まじい音を響かせて、落下した地面からは土煙が上がった。
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