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第二部 第二章 闇の咎─淫獄の魔女─

災禍ノ龍 1

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 ノヒン視点──

「ル゛ル゛ル゛……ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛」
「ちっ! まじかよ! なんでぇあのバケモンは!」

 空中庭園へと向かおうとしたノヒンが、魔法陣から現れた巨大なドラゴンを見て動きを止める。城をも超える圧倒的な巨大さ。

災禍ノ龍ディザスタードラゴンだと……? くそ! マヤめ! とんでもないものを起動しおった!」
「あれがなんだか知ってんのか!?」
「ああ! あれはNACMOナクモ typeタイプ.W.M.D.ダブリューエムディー……Weaponウェポン ofオブ massマス destディストructionラクション。つまり大規模破壊兵器だ。アースガルズが作り出した負の遺産だが、データによれば破棄したことになってい……ま、まずい! 避けろノヒン!!」


 ヒィィィィィィィィィィィィィィィィィィン──


「ぐぅぅ……なん……だぁ……? 頭が割れ……」

 頭が割れるかのような不快な音。見ればディザスタードラゴンが大きく口を開け、口腔内がまばゆい光りを放っている。

 直後──

 ディザスタードラゴンの口から極大の光の筋が放たれ……

 ドゥパァンッ! と凄まじい炸裂音。

「……あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ゛!!」

 何が起きたのかの認識さえ出来ず、ノヒンの右半身が消し飛んでいた。ギリギリ魔石は無事だったが……

 ディザスタードラゴンの口から放たれた光の筋の射線上──建物、地面、山、全ての物質が抉れたように消滅。ノヒンもあまりの激痛に意識が遠のき、地面へと落下。

「くっ……しっかりしろノヒン! ノヒン!!」
「ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……」

 ノヒンが何とか意識を失わずに、損傷部位を再生。消し飛んだ鎧の半分もヴァンガルムが再生させる。

「あ、危ないところだった……。もう少しズレていたら我らは消滅していたところだ。あれは狂戦士でも防げん」
「ちっ! とんでもねぇバケモンだが……教えろやわん公! ありゃどうやったら倒せんだ!?」
「ディザスタードラゴンにもコアの魔石はある。それを砕けばいいのだが……今の貴様は事象崩壊魔術が使えん。お手上げだ」
「はんっ! 事象崩壊なんちゃらが使えねぇからお手上げだぁ? ……んなこと言ってたらよぉぉぉぉぉぉぉ……」

 ノヒンがギチギチと全身に力を漲らせ、ビキビキと筋肉が隆起する。

「……誰も救えねぇじゃねぇかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 ズガンッと地面を蹴りつけ、ディザスタードラゴンの元へと砲弾のように飛び上がる。

「無策で突っ込むな馬鹿物が!!」
「るせぇっ!! やるしかぁぁぁ……ねぇだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 ガズンッ!! とディザスタードラゴンの巨大な顎を下から殴り付ける。

 信じられないことに、殴り付けられたディザスタードラゴンが仰け反る。

「し、信じられん! 城よりも巨大なドラゴンだぞ!?」

 ヴァンガルムが驚きの声を上げたと同時、ノヒンがガチンッと黒錆の長剣──斬鉄を装着し……

「うるあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
 
 黒錆の長剣による凄まじい連撃を叩き込み、ディザスタードラゴンの体がガズンガズンと削られる。

 だがやはり大きい。

 ディザスタードラゴンの体が余りにも巨大過ぎ、ノヒンの常軌を逸した剣戟によっても体表が僅かに削れるだけ。

「私も助太刀するぞノヒン! はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 そこへジェシカも合流し、二刀のシャムシールによる神速の連撃。

 だがシャムシール如きでは体表に傷すら付けることが叶わず……

「ちっ! 大戦斧だ姉さん!! [任せて!]」

 ジェシカが大戦斧へと武器を持ち替え、ガズンッ! とディザスタードラゴンの腹部を打ち上げる。が、やはり体表が僅かに削れるだけだ。

「ル゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛」

 邪魔な虫を払うかのような、ディザスタードラゴンの巨大な前腕による攻撃。それによって爆風が生じ、ノヒンとジェシカが吹き飛ばされた。そのままディザスタードラゴンは耳をつんざくような叫びを上げ……


 ヒィィィィィィィィィィィィィィィィィィン──


「ちっ……デカすぎんだろ! しかもこの音……」
「これは先程の凄まじい威力の光の筋を放つつもりか……? [ど、どうしようノヒン……]」
「おいわん公! またあれが来んのか!? さすがにあれを連発されちゃあ……」

 ノヒンが先程消し飛ばされ、再生させた半身に触れながら問いかける。あんな高威力の攻撃を連続で放たれでもしたらひとたまりもない。

「あれはdirectedディレクティド-energyエナジー weaponウェポン。魔石から発生するエネルギーを収束させて放つ指向性エネルギー兵器だ。所謂いわゆるレーザーというものだな。初撃はエネルギーが溜まっていたのだろうが、二発目はチャージが必要なはず。どれ……『アクセプト分析』 『アクセプト投射』」

 ヴァンガルムが導術を発動し、黒い霧がディザスタードラゴンに絡み付く。するとブンッという音がし、ディザスタードラゴンの上方に『7:48』という白く輝く文字が現れた。数字は『7:47』『7:46』と、減っていく。

「やつの状態を分析してチャージ時間を可視化した。残り七分程で二発目のレーザー発射が可能ということだな」
「あのバケモンを残り七分で倒せだと!? ちっ! だがやるしかねぇ! 行くぞジェシカ! ヨーコ!」
了解した!任せて!!

 二人が災禍へと向けて突撃。

 レーザー発射まで残り『7:35』──
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