覚悟ガンギマリ系主人公がハーレムフラグをへし折りつつ、クールな褐色女戦士をデレさせて異世界を救うパワー系ダークファンタジー/ヴァンズブラッド

鋏池穏美

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第一部 第四章 夢の灯火─揺らぐ灯火、残るは残火編─

崩壊 1

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 ──再び場面は戻り、エインヘリャルの儀当日

「ぐぐ……がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! 死んどけやロキィィィィィィィィィィィッ!!」

 バギンッと凄まじい音を響かせ、次元の壁が砕け散る。そのままノヒンが血を撒き散らしながらロキへと飛びかかる。

 怒りが限界突破したノヒンは今まさに、神話大戦の英雄ヴァンに並び立つ。ヴァンのみが行使することが出来たと云われる特異な力、無詠唱特殊魔術のほぼ全てを無意識で使いこなし──


---


※無詠唱特殊魔術(現段階)
【常時展開(今までも万全ではないが発動していた)】

・超速再生/身体の損傷部を魔素NACMOを使用し、凄まじい速度で再生する。造血や解毒なども可能で、脳の記憶領域にある損傷前データを使用して再生する。

・損傷強化/身体が損傷することで、身体能力超強化。

・敵対強化/敵意、悪意、憎悪、嫌悪、敵対行動(敵意の有無に関わらず)を向けられることで、身体能力超強化。

・超強化/魔素NACMOがある限り、身体能力超強化。

・絶対領域/敵対強化の対象者の位置情報を補足。

・先導者/戦闘中、ノヒンの声を聞いた味方の戦意高揚、身体能力強化。


【任意展開(怒りによって偶発的に発動)】

事象崩壊魔術コラプス/発動者が攻撃行動時、触れたと認識したもの全てを崩壊させることが出来る。


---


「がはっ!!」

 ノヒンの拳がロキを捉え、殴りつけた腕や脇腹が消し飛ぶ。事象崩壊魔術の威力は甚大で、今や一対一の近接戦闘でノヒンに勝てる者などいはしない。だがやはり傷付いた痣では事象崩壊魔術の発動が万全ではなく、殴ったノヒンの体も皮膚が破れ、肉が裂けて血が吹き出す。このまま戦えば魔素による再生が間に合わなくなり、ノヒンが先に動けなくなる可能性の方が高い。

「ぐぅ……これで兵装なしとは恐ろしい男だ。だが! 私には黄金の力グルヴェイグがある! これがある限り私は何度でも再生する! その上この場ではラグナスが魔素を供給してくれている! 万全の神器であれば貴様に勝てる道理はない!!」

 ロキの消し飛んだ腕や脇腹が再生する。グルヴェイグは使用者に不死の肉体を与える神器。これはヴァンの超速再生という力を元に作られている。グルヴェイグ自体を砕かない限り、ロキは何度でも再生する。

「さらに私にはミョルニルがある! 貴様の事象崩壊魔術とどちらが上だろうな! 距離を取らせて貰うぞ!!」

 ロキが翼の生えた龍人ドラゴニュートのような姿に変わり、天高く飛び上がった。そのままミョルニルを投げつけてノヒンを牽制する。

 ミョルニルはヴァンの事象崩壊魔術を元に作られた神器。襲い来るミョルニルをノヒンが殴りつける。が──

 事象崩壊の力場同士がぶつかって打ち消し合い、パァンという炸裂音を響かせた。むしろ万全な発動ではないノヒンの方にダメージが蓄積されていく。
 
「くくっ! こちらの方が有利なようだが……全力で行かせて貰う!『……猛る雷鳴の化身にして彼の地を平定せし天武の者よ──天之尾羽張アメノオハバリに代わりて天の意向を示せし雷剛の者よ──我が望むは眼前の愚者共に降り注ぐ幾万の裁き──神たる天雷の慟哭を空に轟かせ祈り捧げる愚かなる者共への答えとせん──その慟哭を聞きし者は己の生を省みる暇もなし──剣神たる雷鳴の覇王にして彼の地を統べる絶対の武神たる者よ──我が望みし永遠たる静寂の世界が見えるだろうか──慟哭により蹂躙されし不毛の大地が見えるだろうか──我が巡るは雷獄の回廊──天に代わりて裁きを下さんとする者──腐れた者共を蹂躙せんとする者──終焉の雷を以って天雷の覇者の威厳を示さん』……消え去れ! 『轟く平定の雷閃! 建御雷神タケミカヅチ!!』」

 ロキの詠唱と共に上空には無数の魔法陣が展開。ノヒンの周囲は雷の檻で閉ざされ、終わることのない雷撃の嵐が吹き荒れる。

「ぐがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 絶命の雷がノヒンを襲い、ブスブスと体が焼け爛れていく。再生が追いつかずに意識が遠のき、確実な死へとノヒンは向かっていた。

 このままでは誰も救えず、愛する者もまた失う。

 だが絶命の寸前──

(ノヒンは殺させない……ハッピーエンドを迎えて貰うんだから!!)

 ヨーコの声がノヒンの脳内に響いた。それと同時、ヨーコの魔石が熱くなり、大量の魔素が発生。ノヒンの体がビキビキと再生していく。

「……くそっ……いっつも助けてくれるよなぁヨーコは……。こんなんで諦めんなってことだよな……。ハッピーエンド目指すん……だもんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! こんなんで俺を止められると思うんじゃぁぁぁぁぁぁぁぁねぇぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ! ロキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!!」

 ズガンッと地面を全力で蹴りつけ、ロキに向かってノヒンが飛び上がる。ノヒンの周囲にはヨーコの魔石から発生した黒い霧がまとわりつき、まるで黒い翼が生えたような状態に。

(私に出来るのはこれくらい……この力はノヒンに合わないみたいだから……早く決めてね……。愛してるよノヒン……)
「ヨーコの力が俺に合わねぇだぁ? ざっけんな!! 俺とヨーコの絆ぁぁぁぁぁっ!! 見せてやるよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 凄まじい速度に達したノヒンが、グルヴェイグごとロキを殴りつけて体を粉砕する。

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 殴りつけられたロキが地面へと激突し、グルヴェイグが砕けて黒い霧となる。グルヴェイグが砕けたことにより、粉砕されたロキの体の再生が通常の半魔程度まで落ちた。これによって現状での再起は不可能となる。

「……かはっ……。貴様……まさかその霧は……」
「俺が知るわけねぇだろ。ってもまぁ……この霧はヨーコと俺の絆だ」
「くくっ……こんなところにあったとはな……。ラグナスに伝えねば……」
「何を訳わかんねぇこと言ってやがんだ? 取り敢えず死んど……」

 ノヒンがロキにとどめを刺そうとしたところで、ロキの体が黒い霧となって霧散する。黒い霧はラグナスの元まで行くとしばらく騒めき、そのまま上空へと消え去った。

 その後、驚いた顔のラグナスがノヒンを見ている。

「ちっ! 何を見てやがんだラグナス!! ジェシカを返して貰うぞっ!!」

 ノヒンが黒い霧の翼を広げ、ラグナスへ向けて飛ぶ。

(ノヒン……急いで……)
「任せろヨーコ! なんで会話出来てるかは知らねぇが……めちゃくちゃ嬉しいぜっ!!」
(私も……でも本当に急いで……たぶん長くはもたないから……)
「了解だヨーコ! ……っくぞラグナァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァスッ!!」

 凄まじい速度に到達したノヒンがラグナスを殴りつける。が、ラグナスの手前で見えない壁に遮られ、殴りつけたノヒンの拳が千切れ飛ぶ。

「無駄だよノヒン。ユグドラシルが起動してしまえば君の拳はもう届かない。魔素がある限り、何度でも次元の壁が君を阻む」
「っるせぇ!! すました! 顔ぉっ! してんじゃぁ! ねぇっ!!」

 千切れ飛んだ腕を再生し、何度も次元の壁を叩き割る。だが叩き割った先から壁が発生し、ラグナスまで拳が届かない。

「まさかこんな近くにニヴルヘイムがあったとは。だがすまないなノヒン。もう私にも止められないんだ。私は……どちらなのだろうな。君といた時はラグナスである自覚はあった」
「何をっ! 言って! やがんだっ! 止めらん! ねぇならっ!! 俺がっ! 止めて! やらぁっ!!」

 崩壊と再生を繰り返しながらのノヒンの猛攻。だがあと少しのところでラグナスに拳が届かない。そんなノヒンを見て、ラグナスが苦しそうに語りかける。

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