覚悟ガンギマリ系主人公がハーレムフラグをへし折りつつ、クールな褐色女戦士をデレさせて異世界を救うパワー系ダークファンタジー/ヴァンズブラッド

鋏池穏美

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第一部 第一章 プロローグ─夢の残火編─

殲滅鬼 2

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(方針は決まったが三人まとめてじゃあ隙をついて降魔を殺される……。ちっ、あいつに頼むしかねぇってのか……)

 ガキンッと鞘の中に手を入れ、黒錆の長剣を装着する。

「つーことで取り敢えずよぉ……これで死んでくれりゃあいいんだがなぁ!!」

 ギチギチと足の筋肉に力を漲らせ、大砲のようにノヒンが駆け出す。その勢いのまま、右手の黒錆の剣による横薙ぎの一閃。

「……応!!」

 グルガが白刃取りのように黒錆の剣を防ぐ。そのままの勢いで左手の黒錆の剣も放つが、「応!!」と、バザンに白刃取りで防がれる。

「ちぃっ!! なんつぅ怪力だってんだ! だがいったん……飛んどけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 ノヒンが叫び、ギチギチと全身に力を漲らせる。補強された肩がメシメシと痛むが──

「るぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 ズガンッとグルガとバザンが闘技場の端まで吹き飛び、壁に叩きつけられた。先程自分が壁に叩きつけられた時も思ったが、凄まじい衝撃のはずだが壁が壊れない。逃げ出すことは出来ないということだろうか。

「ま、まずいよまずいよマリル! なんだか筋肉ダルマみたいな化け物がノヒンに襲いかかってる! どんどん体も大きくなってるし! しかもノヒンの剣を防いだよ! いくらノヒンでもあんな筋肉ダルマ……って……あれ? マリル……?」
「うぅ……ご、ごめんヴァンちゃん……わ、私から離れて……」
「どうしたんだよマリル! 凄く苦しそうじゃないか!」
「お、お願いだから……離れ……て……」
「檻の中で離れられるわけないじゃないか! それにそんな苦しそうなのに放っておけないよ!!」
「ご、ごめ……もう我慢……うぅ……うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「う、うわぁ! な、何するんだよマリル!! やめて! 食べようとしないで!! ぼ、僕は美味しくなんてないぞ! ち、小さいし可食部なんてほんの少しだ!!」

 マリルが涎を垂らしながら、ヴァンガルムに噛み付こうとする。

「ちっ、あいつまさか……我慢してやがったのか?」

 言いながらノヒンがマリルとヴァンガルムの元まで行き、黒錆の剣で檻の上部を破壊した。

「ああああ! ありがとうノヒン! そ、それよりマリルが変なんだ! このラブリーな僕を食べようと……」
「黙れよわん公。せいぜい後悔すんなって言っただろうが。ほらよマリル。いいぜ?」

 ノヒンが首を傾け、マリルに首筋を差し出す。

「い、頂きます……んん……ん……んく……んく……」

 マリルが差し出されたノヒンの首筋に噛み付き、血を吸っているようだ。

「どうだ? 少しは落ち着いたか?」
「んん……ぷは……はぁ……はぁ……。あ、ありがとうございますノヒンさん……。それと……本当にごめんなさい! あれだけついてくるなって言われたのに私……私……」
「ちっ、謝るくれぇなら初めから言うこと聞いとけ。それよりなんで酒場で抵抗せずに捕まってた? お前なら……」
「ま、まだ力をちゃんと制御出来てないから……殺しちゃうかもって思って……。こ、殺すなんて嫌です……」
「ちっ、相変わらず甘ちゃんだな。俺が教えたことぉてんで分かっちゃいねぇ」
「ご、ごめんなさい……」
「な、なになに? どういうこと? なんで? え? え? マリルとノヒンって知り合い? ん? ええ?」
「うるせーよわん公。あとでマリルにでも聞いとけ。それよりお前らに頼みがある。どうやらここにいる降魔を殺せば殺すほどあいつらに魔素が集まってるようだ。魔神がどうたら言ってたが……半魔にでもなるんだろうさ。なんにしても良くねぇ流れだ。とりあえずグルガとバザンの気を引いてくれねぇか? ……できるだろマリル?」
「はい! その間にノヒンさんがパランを倒すんだね」
「ええ? なに言ってるんだよマリル! 無理だよそんなの! 僕達だけであの筋肉ダルマの相手が出来るわけないじゃないか!」
「ちっ、だからキャンキャン喚くな! マリルなら大丈夫だ。できればこれ以上降魔が殺されねぇように誘導してくれると助かる」
「うん! 気を引けばいいんだよね? なんとかやってみるよ!」

 そう言うと共に、マリルの頭に黒い巻いた角が生え、背中にも漆黒の翼が現れた。口には牙が生え、爪も鋭く伸びる。身長も伸び、体型も少女というよりは大人の女性のようになる。

「ええ!? マリルがえっちなお姉さんになった! 服なんてピチピチじゃないか! ダメだダメだダメだ! お父さんは認めないぞ! マリルはそんなピチピチの服なんて着ない! そんなふしだらな女の子に育てた覚えはない! 断固として拒否する!!」
「もう! ヴァンちゃんちょっと静かにして! 服は体が大きくなるんだから仕方ないでしょ? それより……危ないから暴れないでね!」

 ヴァンガルムがマリルの服の中にねじ込まれ、胸の谷間からちょこんと顔を覗かせた。

「行くよ!」
「ちょ、ちょっとマリル! って……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 黒い弾丸のようにマリルが飛び、一瞬でグルガとバザンの前まで辿り着く。そのままマリルが黒い霧を体から滲ませ、くるくると二人の周りを飛ぶ。

「お……お……お……お……応っ!!」

 マリルの体から発生した黒い霧をグルガとバザンが浴び、様子が変わる。まるでマリルにしか意識が向いていないようで──

「ふふっ、こっちよおじさん達」

 マリルが二人を引き付け、降魔の少ない場所を縫うように飛ぶ。

「な、何がどうなってるんだよマリル! あ、あの筋肉ダルマがマリルだけ見てる!! う、うわぁ! ほ、ほら! 凄い形相でこっちに来てるって!!」
「ヴァンちゃんにも後でちゃんと説明するから! ノヒンさん! こっちは大丈夫です! 行ってください!!」
「はっ! 覚悟が足りねぇ甘ちゃんだが……頼りになる! すぐに終わらせてやるからそっちは任せたぞ!!」

 ノヒンがガチンッと歯を食いしばり、ギチギチと全身に力を漲らせる。ビキビキと筋肉が隆起し、まるで爆弾が爆発したように地面を蹴りつけ、パランがいる観客席の上部へと飛び上がった。

「高みの見物決め込んでんじゃあねぇぞ豚野郎! そのきったねぇ脂肪削ぎ落としてやるよ!!」
「ぐふふぅ! 私ならば殺せると思ったんですかぁ! 甘い甘い甘ぁーい! まだ完全ではないですがぁ! 私も魔神の力を得ていると言ったじゃないですかぁ! ぐふ、ぐふふふふぅ!!」
「所詮半魔だろうが! こっちゃあてめぇらより強ぇ半魔やバケモンと何度も戦ってんだ!!」
 
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