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第二章
約束
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淀んだ水と草の匂いが満ちている。水の流れる音がする。黄色かったタンポポの花はすっかり綿毛に姿を変えていた。そしてその傍ら、土手に座る女の子がスケッチブックに向かい無心に手を動かしている。三つ編みが小刻みに揺れる。
そして向かい立つのは――まるで挑むように足裏でむんずと草をつかむ黒猫一匹。
来てはみたものの、まさか本当にいるなんて。
その考えこそがまさにひるんでいる証拠な気がして、黒猫は首を振るった。大型犬だってちっとも怖くないこの僕に、なにか恐れるものがあるなんてアイデンティティの崩壊だ。気が乗らないから行かない、はアリ。ひるんで行かない、は絶対にナシ。
(ほら、僕はひるんでなんかない!)
突然彩が顔を上げてこちらを見たものだから、黒猫はあやうく心臓ごと飛び跳ねそうになった。目がぱちりと合うと、大きな黒の瞳が細められる。
「やっぱり」
黒猫もまた、やっぱり、と思う。
彩は立ち尽くしたままの黒猫を手招きした。「ねえ見て、もうすぐ完成なの」
吸い寄せられるように一歩を踏み出してから、はっとした。なんでこんなやつの言いなりにならなきゃいけない。でも足は止まらなかった。しちうるさい内心の声も、スケッチブックを覗き込んだ瞬間、霧散した。
わん、と頭の中で音がするような絵だった。幾重にも塗り重ねられた色は、彩の手にもすっかり移りこんでいる。極彩色の手のひら。情報の多さに眩暈がするような。きっとこの絵は色を詰め込みすぎている。それなのに、それだから。痛いぐらいに胸を掴まれる絵だ、と思った。
「鈴の音がしたから、黒猫くんだってすぐわかったよ」
なんでもない言葉のはずなのに、すっと体温が下がった気がした。
――なんだ、自分を見分けていたわけじゃなかったのか。
「また来てくれるって気がしてたの、なんでかな」
黒猫の心とは裏腹に彩は明るい声で続けた。
「黒猫くんはさ、わたしのこと好きじゃないでしょう」
ぎょっとして思わず顔を見る。
「……でも、わたしの絵は好き。ちがう?」
にこっと逆に顔を覗き込まれる。
「わたしもなんだ。だから、描いてるときはわたしを好きになれる」
スケッチブックに向き直ると、またクレヨンを一つ手に取った。群青。
「いっつも間違えちゃうんだ、わたし。バカだから。大事なところで……ママにも、パパにも、杏ちゃんにも。何言ったらいいか全然わからない、何も言えない。でも、それって一番間違いなの。みんな、わたしが嫌いになる」
今度は黄色を手に取り、光を水面に描きこんでいく。
「でも、絵は……わかる。クレヨンごしにしゃべれたらよかったのかも」
反射光が目に刺さる。この絵には彩の感情が色ごと溶け込んでいる、そんな気がした。
「――ほら、やっぱ木原さんじゃん」
耳をきんとさせる高い声がうしろから聞こえた。彩の肩がびくりと跳ねる。
振り返れば、女の子が四人ほど。声に聞き覚えがあった。細かく砕けたクレヨンをちらりと見る。
「絶対あのだっさい服は木原さんだって言ってたんだよー」
「ひとりぼっちでお絵かきしてるの邪魔しちゃってごめんねー」
仲良さげな声音で話しかけながらも、織り交ぜた毒への反応を楽しげにうかがっている。
ああ遊んでるんだな、と黒猫は理解する。猫の世界でも同じだ。強者は時折たわむれに弱者をいたぶる。狩りの練習だ。どうやらそのターゲットに選ばれているらしい彩は、小さな体をいっそう小さくしていた。手元のスケッチブックを隠すように胸元に寄せ、意を決してというように振り返った。
中でもひときわ顔立ちが整った、おそらく中心的な役割だろう少女がにこっと笑った。小ぶりなリボンをつけたカチューシャが子どもらしく可愛い。だけど、肩までの髪をさらりと耳にかける、その目はすこしも笑っていなかった。
「ねえ、どんな絵描いてるの。見たいな。見せてよ。友だちでしょ?」
「杏ちゃん……」
彩の眉毛がみるみる垂れ下がる。さっきその名をどこかで聞いたな、と黒猫が考えているうちに、伸びてきた手がスケッチブックを捕まえた。
「だ、だめ……!」
悲鳴のようなその声は――本物の悲鳴によって上から塗りつぶされることになる。
何が起こったのかわからずにきょとんとする彩を置き去りに、しゃがみこんだ杏は今にも泣き出しそうに声を震わせた。
「――ひどい、その猫、今、杏の足ひっかいたぁ……!」
「杏ちゃん、大丈夫!? 血出てるよ!」
何をそのぐらいで大げさな。ちょっとした挨拶のようなものだろう。
黒猫は彩を後ろにして女の子たちの間に立つと、毛を逆立てて威嚇した。敵意に満ちた視線が黒猫から彩に移る。
「何そいつ、木原さんの猫!? 杏ちゃん何もしてないのにひっかくとかなくない!?」
「えっ、あの、わたしの猫ではないけど……ご、ごめんなさ……」
すっかり涙目になった杏の目が、怒りの赤色に染め上げられる。
「もう超むかつく! なんなのこのバカ猫、ゆるせない!」
近寄るのは怖かったのだろう、足元にあった石をつかむと黒猫に向かって投げつけた。周りの女の子も顔を見合わせて、加勢するように石を探し出す。
ぎょっとした彩が必死に止めにかかるも、しょせん多勢に無勢。だけど、黒猫はすこしも怖くなかった。力ない子どもの小石が猫に当たる可能性は、さてどれほど? 目の前で問いに答えていくかのごとく、てんで違う方向に落ちていく石を横目に、黒猫はあざ笑うかのように女の子たちへと距離を詰めていく。おっと石のお礼をしなくちゃね。黒猫は躊躇なく鈴を鳴らすと、願い事をひとつつぶやいた。
ちりん、ちりりん。『全員今すぐ下痢になれ』、と。
一瞬の後、杏たちは持っていた石を次々落として、急にお腹を押さえはじめた。
「ちょっと待ってごめん、なんかお腹、痛……」「あたしも……」「えっ、皆も!?」「うそ……なんで……?」
ひとりが怯えた眼差しで目の前の黒猫を見る。当の黒猫はすっかり退屈そうに頭をかくなどしていたが。
「ねえ……もしかしてこいつのせい? 黒猫って不吉って聞いたことあるけど、もしかして石投げたからバチが……」
「やだ! 変なこと言わないでよ!」「わたし当ててないもん!!」「とにかく、それより、トイレに……」
この場から逃げ出したいのとトイレに行きたいのは方向性が合致したらしい。杏たちは恨みがましい目でこちらを一瞥しながらも、それどころじゃないといった様相で去って行った。時折立ち止まりながら、変な歩き方で。
「一番近いトイレは……そっちじゃないけど……」
ひとり取り残された彩は、呆然としてつぶやく。
「それ傑作」
にゃあとしか聞こえないだろうが、黒猫はその一言にけたけた笑った。だが言葉がわかるはずもないのに、鳴き声を聞いて、耐えきれないといったように彩も吹き出した。
「笑っちゃ、だめだよね……わたし、ひどい……でもなんか歩き方が……おかしくて……ふふふふ。変なものでも食べちゃったのかなあ……ふふ。ああ、でも、びっくりした……」
ひとしきり笑うと、彩は地面にへたりと座り込んでしまった。
「黒猫くん……守ってくれたんだよね、ありがとう」
彩は黒猫を見ずに突然そうつぶやく。
「でも、もういいからね。わたしはもういいんだ。黒猫くんにケガがあったら……わたし、もっと自分が嫌になるから」
そのまま小さく消えてしまいそうな体に近寄ると、黒猫はスケッチブックにぐりぐり頭をこすりつけた。
「――そっか……絵を、一緒に守ってくれたんだね……」
意図は通じたらしい。はじめてくしゃっと泣きそうな顔をみせた彩は、それでも泣かなかった。唇を噛みしめて目をつむり、何事もなかったかのように立ち上がる。
「……帰るね。おばあちゃんに卵買ってきてって頼まれてるし」
スケッチブックとクレヨンをバッグにしまって肩にかけると、黒猫を振り返り微笑んだ。
「黒猫くん、わたし、この絵描き上げるね。約束。もうすぐだから……見てて」
(そんなの、僕に宣言してどうする。知らないし。勝手にやってろよ)
そう思うのに、なんでなんだろう。遠ざかる後ろ姿がやがて曲がり角で消えてしまうまで、黒猫はずっと目で追っていた。
そして向かい立つのは――まるで挑むように足裏でむんずと草をつかむ黒猫一匹。
来てはみたものの、まさか本当にいるなんて。
その考えこそがまさにひるんでいる証拠な気がして、黒猫は首を振るった。大型犬だってちっとも怖くないこの僕に、なにか恐れるものがあるなんてアイデンティティの崩壊だ。気が乗らないから行かない、はアリ。ひるんで行かない、は絶対にナシ。
(ほら、僕はひるんでなんかない!)
突然彩が顔を上げてこちらを見たものだから、黒猫はあやうく心臓ごと飛び跳ねそうになった。目がぱちりと合うと、大きな黒の瞳が細められる。
「やっぱり」
黒猫もまた、やっぱり、と思う。
彩は立ち尽くしたままの黒猫を手招きした。「ねえ見て、もうすぐ完成なの」
吸い寄せられるように一歩を踏み出してから、はっとした。なんでこんなやつの言いなりにならなきゃいけない。でも足は止まらなかった。しちうるさい内心の声も、スケッチブックを覗き込んだ瞬間、霧散した。
わん、と頭の中で音がするような絵だった。幾重にも塗り重ねられた色は、彩の手にもすっかり移りこんでいる。極彩色の手のひら。情報の多さに眩暈がするような。きっとこの絵は色を詰め込みすぎている。それなのに、それだから。痛いぐらいに胸を掴まれる絵だ、と思った。
「鈴の音がしたから、黒猫くんだってすぐわかったよ」
なんでもない言葉のはずなのに、すっと体温が下がった気がした。
――なんだ、自分を見分けていたわけじゃなかったのか。
「また来てくれるって気がしてたの、なんでかな」
黒猫の心とは裏腹に彩は明るい声で続けた。
「黒猫くんはさ、わたしのこと好きじゃないでしょう」
ぎょっとして思わず顔を見る。
「……でも、わたしの絵は好き。ちがう?」
にこっと逆に顔を覗き込まれる。
「わたしもなんだ。だから、描いてるときはわたしを好きになれる」
スケッチブックに向き直ると、またクレヨンを一つ手に取った。群青。
「いっつも間違えちゃうんだ、わたし。バカだから。大事なところで……ママにも、パパにも、杏ちゃんにも。何言ったらいいか全然わからない、何も言えない。でも、それって一番間違いなの。みんな、わたしが嫌いになる」
今度は黄色を手に取り、光を水面に描きこんでいく。
「でも、絵は……わかる。クレヨンごしにしゃべれたらよかったのかも」
反射光が目に刺さる。この絵には彩の感情が色ごと溶け込んでいる、そんな気がした。
「――ほら、やっぱ木原さんじゃん」
耳をきんとさせる高い声がうしろから聞こえた。彩の肩がびくりと跳ねる。
振り返れば、女の子が四人ほど。声に聞き覚えがあった。細かく砕けたクレヨンをちらりと見る。
「絶対あのだっさい服は木原さんだって言ってたんだよー」
「ひとりぼっちでお絵かきしてるの邪魔しちゃってごめんねー」
仲良さげな声音で話しかけながらも、織り交ぜた毒への反応を楽しげにうかがっている。
ああ遊んでるんだな、と黒猫は理解する。猫の世界でも同じだ。強者は時折たわむれに弱者をいたぶる。狩りの練習だ。どうやらそのターゲットに選ばれているらしい彩は、小さな体をいっそう小さくしていた。手元のスケッチブックを隠すように胸元に寄せ、意を決してというように振り返った。
中でもひときわ顔立ちが整った、おそらく中心的な役割だろう少女がにこっと笑った。小ぶりなリボンをつけたカチューシャが子どもらしく可愛い。だけど、肩までの髪をさらりと耳にかける、その目はすこしも笑っていなかった。
「ねえ、どんな絵描いてるの。見たいな。見せてよ。友だちでしょ?」
「杏ちゃん……」
彩の眉毛がみるみる垂れ下がる。さっきその名をどこかで聞いたな、と黒猫が考えているうちに、伸びてきた手がスケッチブックを捕まえた。
「だ、だめ……!」
悲鳴のようなその声は――本物の悲鳴によって上から塗りつぶされることになる。
何が起こったのかわからずにきょとんとする彩を置き去りに、しゃがみこんだ杏は今にも泣き出しそうに声を震わせた。
「――ひどい、その猫、今、杏の足ひっかいたぁ……!」
「杏ちゃん、大丈夫!? 血出てるよ!」
何をそのぐらいで大げさな。ちょっとした挨拶のようなものだろう。
黒猫は彩を後ろにして女の子たちの間に立つと、毛を逆立てて威嚇した。敵意に満ちた視線が黒猫から彩に移る。
「何そいつ、木原さんの猫!? 杏ちゃん何もしてないのにひっかくとかなくない!?」
「えっ、あの、わたしの猫ではないけど……ご、ごめんなさ……」
すっかり涙目になった杏の目が、怒りの赤色に染め上げられる。
「もう超むかつく! なんなのこのバカ猫、ゆるせない!」
近寄るのは怖かったのだろう、足元にあった石をつかむと黒猫に向かって投げつけた。周りの女の子も顔を見合わせて、加勢するように石を探し出す。
ぎょっとした彩が必死に止めにかかるも、しょせん多勢に無勢。だけど、黒猫はすこしも怖くなかった。力ない子どもの小石が猫に当たる可能性は、さてどれほど? 目の前で問いに答えていくかのごとく、てんで違う方向に落ちていく石を横目に、黒猫はあざ笑うかのように女の子たちへと距離を詰めていく。おっと石のお礼をしなくちゃね。黒猫は躊躇なく鈴を鳴らすと、願い事をひとつつぶやいた。
ちりん、ちりりん。『全員今すぐ下痢になれ』、と。
一瞬の後、杏たちは持っていた石を次々落として、急にお腹を押さえはじめた。
「ちょっと待ってごめん、なんかお腹、痛……」「あたしも……」「えっ、皆も!?」「うそ……なんで……?」
ひとりが怯えた眼差しで目の前の黒猫を見る。当の黒猫はすっかり退屈そうに頭をかくなどしていたが。
「ねえ……もしかしてこいつのせい? 黒猫って不吉って聞いたことあるけど、もしかして石投げたからバチが……」
「やだ! 変なこと言わないでよ!」「わたし当ててないもん!!」「とにかく、それより、トイレに……」
この場から逃げ出したいのとトイレに行きたいのは方向性が合致したらしい。杏たちは恨みがましい目でこちらを一瞥しながらも、それどころじゃないといった様相で去って行った。時折立ち止まりながら、変な歩き方で。
「一番近いトイレは……そっちじゃないけど……」
ひとり取り残された彩は、呆然としてつぶやく。
「それ傑作」
にゃあとしか聞こえないだろうが、黒猫はその一言にけたけた笑った。だが言葉がわかるはずもないのに、鳴き声を聞いて、耐えきれないといったように彩も吹き出した。
「笑っちゃ、だめだよね……わたし、ひどい……でもなんか歩き方が……おかしくて……ふふふふ。変なものでも食べちゃったのかなあ……ふふ。ああ、でも、びっくりした……」
ひとしきり笑うと、彩は地面にへたりと座り込んでしまった。
「黒猫くん……守ってくれたんだよね、ありがとう」
彩は黒猫を見ずに突然そうつぶやく。
「でも、もういいからね。わたしはもういいんだ。黒猫くんにケガがあったら……わたし、もっと自分が嫌になるから」
そのまま小さく消えてしまいそうな体に近寄ると、黒猫はスケッチブックにぐりぐり頭をこすりつけた。
「――そっか……絵を、一緒に守ってくれたんだね……」
意図は通じたらしい。はじめてくしゃっと泣きそうな顔をみせた彩は、それでも泣かなかった。唇を噛みしめて目をつむり、何事もなかったかのように立ち上がる。
「……帰るね。おばあちゃんに卵買ってきてって頼まれてるし」
スケッチブックとクレヨンをバッグにしまって肩にかけると、黒猫を振り返り微笑んだ。
「黒猫くん、わたし、この絵描き上げるね。約束。もうすぐだから……見てて」
(そんなの、僕に宣言してどうする。知らないし。勝手にやってろよ)
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